乃木坂46が4年前の東京ドームで起こした奇跡 桜井玲香の決断、過去と未来を繋ぐ「きっかけ」を巡るドラマ
11月20日、21日に『真夏の全国ツアー2021 FINAL!東京ドーム公演』が開催される。乃木坂46にとって4年ぶりとなる東京ドームでのライブだ。高山一実にとって最後のステージということもあり、ファンの心を響かせるドラマが待っていることだろう。
では、4年前の2017年11月7日、8日に行われた『真夏の全国ツアー2017 FINAL! IN TOKYO DOME』では何が起きたのか。Wアンコールの“奇跡”を中心に振り返りたい。
オープニングではメンバーが460人の女子高生姿(2日目は警備員)のダンサーと「制服のマネキン」をパフォーマンス。生駒里奈からセンターのバトンが白石麻衣、西野七瀬、齋藤飛鳥、堀未央奈へと渡される。そのバトンは前年にお披露目された3期生が受け取り、「三番目の風」を瑞々しく歌った。
フルメンバーで最後となった「他の星から」などのユニット曲を挟んで、乃木坂46のパフォーマンスを進化させたアンダーメンバーの名前が呼ばれる。中元日芽香がセンターの「君は僕と会わない方がよかったのかな」では、東京ドームがピンクのペンライトで染まった。「生まれたままで」では、センターの伊藤万理華が「みんな、乃木坂が好きかー!」「私も大好きだー!!」と叫んだ。中元と万理華にとって、この日が乃木坂46としてのラストライブだった。このパートの最中、ステージ裏では白石や松村沙友理がボロ泣きしていたという。
生田絵梨花のピアノ演奏に合わせて、メンバーたちが「君の名は希望」を生声で届けると、生駒をはじめとしたメンバーがそれぞれの想いを語り、「いつかできるから今日できる」でライブ本編を締めた。
そして、ファンの感情をもっとも揺さぶったのが、2日目のWアンコールで歌われた「きっかけ」だ。筆者が過去に書いたライブレポートを引用したい。
「センターで登場した万理華に飛鳥や桜井が駆け寄る。3期生が作るアーチをくぐった中元は、中3組(生田、ちはる)と花道を歩く。今やミュージカル女優となった生田が子供のように泣きじゃくる。
気づくと手をつないでいた中元と万理華が2人で花道を駆けると、その後をメンバーたちが追いかける。卒業する2人が乃木坂を明るい未来へ導くようなシーンだ。中元と万理華の近くにいた生駒が全員を呼びこむ。泣きたくなかった万理華の瞳から涙が溢れ出す。
最後は清々しい笑顔でファンに感謝を告げた中元と万理華。自分の弱さを知っているから、誰かに優しくなれる。この数分間に、僕たちが好きな乃木坂46がすべて詰まっていた」(『Top Yell』2018年1月号)
2016年6月の『乃木坂46時間TV』で、卒業を控える深川麻衣の企画として、その歌詞をイメージした黒板アートを制作し、その過程と完成品がMVになったことで、乃木坂46のアンセムとなったのが「きっかけ」だ。同年7月には、ライブイベント『Golden Circle Vol.20』で桜井和寿がカバーしたことも話題になった。
しかし、当初は2017年の東京ドーム公演で「きっかけ」を歌う予定はなかったという。
「Wアンコールの話になった時に『ロマンティックいか焼き』という案が出て。『ロマいか』だと盛り上がるのは間違いないけど、Wアンコールは卒業する2人にスポットを当てたいという想いがあったし、いろんな意味を持たせることができる『きっかけ』を歌いたいと思ったんです。それに、しっとりした曲で締めたほうが乃木坂46というグループを印象づけることができるんじゃないかと思って、スタッフの方と相談しました」(桜井玲香/『Top Yell』2018年1月号)
「玲香とメンバー数人とスタッフの方が話しているのを聞いてて、私も後ろから「『きっかけ』がいいと思う」と言ったんです(笑)。そのほうがいいと思ったし、単純に歌いたかった。全体のセットリストも改良を重ねたんですよ。自分たちがパフォーマンスする以上、納得した状態で歌いたいと思って。Wアンコールは「こうやって送り出してくれるんだろうな」と想像できたんですよ。でも、実際その通りになると感動しちゃいました(笑)。昨年(16年)9月のアンダーライブ中国シリーズで『きっかけ』を歌ったんですけど、あの歌詞に励まされて、決心することができたんです。あの曲を最後に歌えることがうれしかった」(伊藤万理華/『EX大衆』2018年1月号)
「楽屋で生駒ちゃんとかと話し合ったみたいで。しっとり系の曲でWアンコールをしたことがなかったので不安もあったけど、やってみたら超大正解で(笑)。玲香ちゃんの想いがいい形になったと思います」(中元日芽香/『Top Yell』2018年1月号)
キャプテンの桜井玲香を中心にしたメンバーからの提案、そして、臨機応変に対応したスタッフの尽力によって、グループ史に残るシーンは生まれたのだ。