ぜったくん、edhiii boiコラボで得た新視点 NEWSへの楽曲提供の真髄も「“かわいい”には普遍性がある」
ぜったくんが「僕だけノンフィクション feat. edhiii boi」をリリースした。edhiii boiをフィーチャリングに迎えて完成した同曲は、同窓会の連絡をきっかけに「自分以外のみんなはうまく生きている」という気づきから発展してリリックが作られていった。入浴、皿洗い、歯医者の予約……“みんな”の当たり前と“自分”の当たり前のコントラストをはっきり浮かび上がらせる言葉と、気持ちのいいスピード感がクセになるトラックの相性も抜群だ。
今年はNEWSへの3曲目の提供曲「あっちむいてほい」を表題に据えたシングルが「オリコン週間シングルランキング」で1位を獲得した。来年1月には、この12月より『みんなのうた』(NHK総合)で流れている「コアラになれたら」もリリースする(『みんなのうた』史上で見てもなかなかの発明曲だと思う)。ラッパー・ぜったくんとして、作家・ぜったくんとして、楽しく話をしてくれた。(編集部)
「自分以外のみんなはうまく生きているなあ」――ノンフィクションを描いた理由
――新曲「僕だけノンフィクション feat. edhiii boi」は、BMSG所属の現役高校生ラッパー・edhiii boiさんとのコラボ曲になります。edhiiiさんとの出会いのきっかけは?
ぜったくん:レーベルのスタッフの方に薦められて聴いたらヤバかったので、オファーさせてもらったのがスタートでした。edhiiiは、ラップがめちゃくちゃ上手いしリリックもよくて。特に「Uiteru」という曲は、トラック(☆Taku Takahashiが制作)もサンプルのチョップがすごすぎたから、一緒にやってみたいと思ったんですよね。歌も歌えるし、がなり声も感情的で、年齢とかは関係なくオールマイティーですごいなって。
――オファーしてから楽曲制作に取り掛かるまでに、どんなやり取りがあったんですか?
ぜったくん:最初にスタッフの人たちも含めてみんなで打ち合わせの場を設けて、どんな楽曲にするかを話し合いました。そこで出たいろんなアイデアを僕がまとめて、デモを作るところから始めたんですけど……結局、全然違う楽曲が誕生しちゃって(笑)。それが「僕だけノンフィクション」になりました。
――もともとはどんな楽曲を作る予定だったのでしょうか。
ぜったくん:先にリリースしたコラボ曲(「どうにかなっちゃう feat. クボタカイ」「Pizza Planet feat. ゆいにしお」)がそれぞれ春と夏をイメージした曲だったので、今回も季節感を出そうと思って冬関連のアイデアをたくさん出していて。静電気のビリビリがトリガーになっていろんなことが起きる曲とか、おでんの曲とかを考えていたんですけど、あまりうまくいかなかったんですよね。実際に静電気のピリッとなった音をサンプリングしてみたりしても、インパクトはあっても楽曲としては微妙だなあと思って。そんな時に小学校の同窓会の連絡がきたんですよ。
――この曲のぜったくんのヴァースにある〈同窓会の連絡/小学校のメンバー/あれこんなにノリ違ったんだったっけな〉の部分ですね。
ぜったくん:そうそう。それで同窓会のやり取りをLINEでしていたんですけど、みんな自分の子供の写真をアイコンにしていて、「俺だけアニメアイコンだなあ……」って思ったんですよね(笑)。
――〈みんな、LINE アイコン子供の写真/おれだけアニメアイコンで棒立ち〉というリリックそのままの体験があった、と。
ぜったくん:その時に、「自分以外のみんなはうまく生きているなあ」と思って。たぶん、それはみんなも身に覚えのあることだと思ったんですよね。「ほかの人はうまく生きているのに、自分だけなんでなんだろう……?」と感じる瞬間は誰にもあるだろうなって。そこから着想を得て、サビのリリックが生まれました。
――楽曲タイトルにも引用されている〈僕だけノンフィクション/みたいにみえるけれど/みんなもノンフィクション/生きるのうますぎんだろ〉ですね。そのテーマをedhiiiさんとのコラボ曲に採用した理由は?
ぜったくん:曲調がドラムンベースっぽいので、それが合うと思ったんですよね。edhiiiも、僕がSNSにデモをアップしている「エアコン壊れた」というドラムンの曲を好きだと言ってくれていたので。あと、僕は今31歳、edhiiiは17歳で、年齢もタイプも全然違う両者のノンフィクションを一曲のなかで出したら面白くなるだろうなって。
edhiii boiの印象「年齢詐称してるんじゃないか?って思った(笑)」
――ちなみにedhiiiさんと直接お会いした印象はいかがでしたか?
ぜったくん:17歳にしてはやたら落ち着いているなと思いました。年齢詐称してるんじゃないか? って思ったくらいで(笑)。ただ、ファッションや趣味は全然違うんだけど、音楽の話はすごく通じたんですよね。edhiiiがよく聴いている曲を教えてもらったら、僕の知らない曲が多々あったんですけど、それがことごとくヤバくて。だから、音楽のかっこいいと思う部分は共通している感覚があったんです。逆に言うと、そこしか一致しなかったとも言えるかも(笑)。
――edhiiiさんも、普段はパジャマで部屋にこもって制作しているとコメントされていましたね。
ぜったくん:リリックが届いた時も「edhiiiもこういうことを感じるんだ」って思ったんですよね。〈「あと20分で動きだす」/決めたのに スマホ依存症に/ハマっちゃって もう無理〉とか。そんなにダラダラするようなタイプではないと思っていたので、なんか嬉しかったですね(笑)。〈ライブは歌詞を飛ばし 頭ん中で/「次の曲はなんだっけな」〉とか〈治らないよ 昼夜逆転〉もめっちゃわかる! と思って。
――先ほどお話しされていたように、ドラムンベースのトラックもおふたりの途中で倍速になるラップにばっちりハマっています。
ぜったくん:最近はドラムンが僕のなかでの流行りなんですよね。これまでもそういう楽曲は好きで耳にしていたんですけど、2年くらい前に、いろんな楽器のサンプル音源をサブスクでダウンロードできる「splice」というサイトでドラムンベースのサンプルを聴いて、初めてそれがドラムンベースというジャンルだと認識したんです。そこからドラムンをいろいろ掘り始めて。ああいうチャキチャキした感じが好きだし、曲調的にedhiiiにも合いそうと思いました。
――ドラムンベースは近年リバイバルしていますしね。それとハイパーポップっぽい要素も感じました。
ぜったくん:たしかに。(ハイパーポップは)前からよく聴いていたんですけど、自分の曲ではあまりやってなかったなと思っていて。ジャンル的にもっと細分化できると思うんですけど、この曲はキックの音がかなり歪んでるし、裏で鳴っているピアノの音もめっちゃ歪ませているので、それがハイパーポップみたいになったな、と。この歪んだ感じは、僕のなかでは初めてかもしれないです。