REBECCAは僕にとって常に先を行くバンドだ 元『Player』編集長が綴る最新ツアー&新曲への感動
2015年の再始動以後、断続的ながらライブ活動を展開しているREBECCA。デビュー40周年を迎えた2024年では7年ぶりの全国ツアー『NOSTALGIC NEW WORLD TOUR 2024』を展開。僕も仙台サンプラザと追加公演の東京ガーデンシアター公演を観たが、キャリアを重ねて個々が楽しそうに演奏していたその内容はもちろん抜群だったし、NOKKOのソウルフルな歌声の素晴らしさも健在だった。七夕には『Daisy Chain / アシデケトバセ』を配信リリースし、さらにはこの2曲とともに「New World」をフィーチャーした、新曲やライブ音源などで構成された『NOSTALGIC NEW WORLD』をソニー·ミュージックレーベルズのレガシープラスよりリリース。USチャートなどを眺めていると、80’sテイストと昨今のビートによるクロスオーバーが主流となったヒットナンバーが多いが、まさに世の中が“NOSTALGIC NEW WORLD”真っ只中なわけで、NOKKOが打ち出したというこのキーワードは非常に的を得ている。
REBECCAは僕らにとって常に最先端の存在だ。40年前、シングル「ウェラム・ボートクラブ」、初期FITZBEATレーベルならではのミニアルバム路線で『VOICE PRINT』でデビュー。正直この頃の音源こそ僕は後聴きだったが、地元埼玉県南のバンドということで早くから周囲で噂になっていたし、ニューウェーヴィなバンドサウンドと、日本人離れしたNOKKOのボーカル、そして圧倒的なフォトジェニックさに、僕も心奪われたローティーンの一人であった。シンコーミュージックから刊行されたNOKKOの写真集、彼女のピンナップ欲しさに雑誌をどれだけ買い求めたことか!
REBECCAの驚異的なところは、まだグルーヴという言葉が一般的に使われていなかった頃からグルーヴィだったし、他では聴けないようなノリやビート感覚が刺激的だった。会場スケールが大きくなっていくとともにそのステージングもどんどんエンターテインメント性を帯びていき、NOKKOがフィジカルの限界まで歌い、踊り、座り込んだり寝っ転がったりするパフォーマンスに僕らは狂喜したのである。
その境地と言える『Dreams on 19900119 Reborn Edition-Return of Blond Saurus-』も2024年にUltra HD Blu-rayのほか、Blu-ray、DVDでそれぞれリリース。岸聖展監督が改めて撮影素材から再編集、最新技術によりアップコンバートされた本作は、以前リリースされたときより、映像が格段とレベルアップを遂げており驚かされた。音源はGOH HOTODA氏が、マルチテープからリミックス、5.1chサラウンドも収録、ライブ会場さながらの体験ができる。その前年1989年に当時の到達点となったアルバム『BLOND SAURUS』をリリースしており、これまた凄まじかった東京ドーム公演を経て、『BLOND SAURUSの逆襲』ツアーの千秋楽である1990年1月の日本武道館公演が解散前のラストライブとなった。この模様が『Dreams on 19900119 Reborn Edition-Return of Blond Saurus-』なわけだが、不思議とこの生々しさが、 『NOSTALGIC NEW WORLD TOUR 2024』に直結したかのようにも感じたのが個人的には興味深いところである。
様々な実験を繰り返して、最終的にはよりシンプルなバンドアンサンブルに帰結していく試行錯誤が見えたのが『BLOND SAURUS』だった。そこに至るまでには今聴いても衝撃的と言うしかない「One More Kiss」のグルーヴ体験などもあったし、土橋安騎夫によるスペースを意識したシンセサイザープレイ、そしてリズミカルなギタープレイとの融合、それまでの日本のロックにはなかったリズムパターンをどんどん開発していった高橋教之と小田原豊のリズム隊は一時代を築いた感がある。そして当時、ダンサーも率いてのダンスパフォーマンスをする女性シンガーがいるバンドは存在しなかった。その点でもNOKKOは先駆者だったし、ソウルディーヴァと称されるシンガーが国内でも登場する時代が来るなんて全く想像できなかった時代……まさにNOKKOはその後の道筋を作ったパイオニアであり、ソロ初期を彷彿させたソバージュヘアで歌いあげる『NOSTALGIC NEW WORLD TOUR 2024』における勇姿においても、その印象が変わることはなかった。