三代目 J SOUL BROTHERS、新アルバムの二面性 新しい風を感じて改めて見せる強みとは
三代目 J SOUL BROTHERS(以下、三代目)が、11月13日にニューアルバム『ECHOES of DUALITY』をリリースした。今年3月にリリースしたアルバム『Land of Promise』で、“Land of Promise”というコンセプトに終止符を打った彼らが、次に示したコンセプトは“PETAL & THORN”(花びらと棘)。先行配信したダークなHIP HOPチューン「BLAZE」と、ミディアムラブバラード「Baby don't cry」で見せた三代目の二面性は、アルバムが完成した今、その言葉では収まらない色とりどりの輝きを放っている。それもそのはず、今作にはリード曲「DEVELOP」のリリックをAile The Shotaをはじめ、三代目と初めてタッグを組むプロデューサー陣が参加。メンバー自身も手探りしながら制作に取り組んだという。
リアルサウンドでは、アルバム制作が佳境に入り、ツアーのリハーサルが動き始めた時期の7人にインタビュー。アルバムの制作エピソードや、4大ドームツアー『三代目 J SOUL BROTHERS LIVE TOUR 2024 "ECHOES OF DUALITY”』への意気込みなど、盛りだくさんで語ってもらった。(斉藤碧)
『ECHOES of DUALITY』で表現する二面性
――今年前半は個人活動に注力していたみなさんですが、三代目としてアルバム『ECHOES of DUALITY』を制作し、新たなツアーに臨むにあたって、メンバー内ではどのようなやりとりがあったのでしょうか。
小林直己(以下、小林):昨年の三代目は“Land of Promise”というコンセプトを掲げてツアーを周り、今年3月にその集大成とも言うべきアルバム『Land of Promise』をリリースしたんですが、それは言葉通り、“MATE(三代目ファン)のみなさんと辿り着いた約束の場所”だったんですよね。そういう意図があって動いていたから、アリーナツアー『三代目 J SOUL BROTHERS LIVE TOUR 2023 "STARS" 〜Land of Promise〜』もあえてアットホームな内容にしたし、後に続くドームツアー『三代目 J SOUL BROTHERS PRESENTS "JSB LAND"』も祝祭のような世界観にしたんです。
岩田剛典(以下、岩田):『JSB LAND』はメンバーそれぞれのソロ曲をみんなでやったりしていて、まさにお祭りでしたよね。
小林:そうそう。僕らも楽しみながら周れたツアーでした。と同時に、これまで僕らが培ってきた“三代目のエンターテインメント”をやりきったという感覚もあって。新しい三代目を見つけに行きたい、さらに進化した三代目を見せたいと、メンバー内で話していたんです。で、アートディレクターの方にも僕らの考えを共有していく中で、以前からMATEを象徴する存在として掲げてきた“白い薔薇”に関連して、“花びらと棘”(PETAL & THORN)というワードが浮かんできまして。例えば、「BLAZE」のような攻撃的な一面もあれば、「Baby don't cry」のようなすごく柔らかい一面も持ち合わせているのが人間だよな……という発想から、二面性をコンセプトにしたアルバムを作り始めました。
ØMI:アルバムタイトルの『ECHOES of DUALITY』は、そのPETAL & THORNを昇華した表現です。
――アルバムリリースに先駆けて配信された「BLAZE」と「Baby don't cry」は、初めから、コンセプトを象徴する対照的な楽曲として作り始めたんですか?
ØMI:アルバムに向けていろいろな楽曲を作ってきた結果、わかりやすく二面性を表現していたのが「BLAZE」と「Baby don't cry」だったので、この2曲を先行配信することにして。アルバムの曲順も、いただいた曲が出揃ってから並びを決めていきました。
今市隆二(以下、今市):今回のアルバムでは僕ら自身も見たことのない三代目を表現したかったから、あえて今までご一緒したことのないクリエイターさんにたくさん参加してもらったんです。10曲とも新曲なんですが、ほとんどが一から書き下ろししてもらったもので。だから、アルバムのコンセプトは先に決めていたものの、みなさんからどんな楽曲が上がってくるのか、最終的にどんな仕上がりのアルバムになるのか、自分達も予測ができなかったんです。しかも、ほぼ同時期に続々と新曲が上がってきたので。ØMIと2人で、千本ノック的な感じでレコーディングしていきました(笑)。
――最初に先行配信された「BLAZE」は、ダークなトラップビートや、〈Blaze in and I Blaze out〉という中毒性の高いフレーズが特徴的なダンスチューンですが、この曲をアルバムの1曲目に選んだ理由はなんですか?
ØMI:新章の始まりを告げる曲という意味では、『JSB LAND』ツアーで1曲目を飾った「Awakening Light」も同じ感じですが、「Awakening Light」はどちらかと言うとライブでの盛り上がりに重きを置いていて、『JSB LAND』のコンセプトとは別軸だったなと思うんです。でも今回は、新たなコンセプト“PETAL & THORN”に突入することを知らせる立ち位置であり、フルアルバムの1曲目でもあったので、ここで三代目の王道を見せたくて。もちろん、中には、バラードやポップな楽曲を三代目の王道だと感じている方もいると思いますが。三代目にはHIP HOPがルーツのメンバーが多いし、グループとしてもHIP HOPの楽曲を多数発表してきたので、まずは「BLAZE」でしっかり攻めたいなと思いました。ビジュアルやMVの世界観も、この曲だからこそ挑戦できたことが多くて、自分達が好きなHIP HOPを思う存分表現できた1曲ですね。
――ELLYさんのラップパートはメンバーから提案したのですか?
ELLY:いえ、クリエイターさんから「ELLYさん、このパートをやってください」って歌詞を渡されたので、「わかりました!」って入れました(笑)。そもそも、僕が歌ってるパートは繰り返しなので、何テイクか録ったうちの一番良いラップを使ってもらって。出来上がった音源を聴いて、「ああ、良い感じになったね」っていう関わり方でしたね。
――そうだったんですね。ELLYさんのラップには、ご自身のこだわりが強く反映されているのかと思ったんです。「BLAZE」の作詞者のクレジット(XXXXXXX)を見た時、てっきりメンバー7人で作詞をされたのかなと思って。
一同:あはははは!
NAOTO:なるほどね。これは何かを隠しているわけじゃなくて、作詞をしてくださった方のお名前がXXXXXXXさんなんですよ。
岩田:あえて意味深にしてるわけじゃなかった(笑)。
クリエイター陣のカラーを楽しめる楽曲に
――今回のアルバム制作は、メンバーの色を出すというより、他のクリエイターさんの色を楽しむ制作だったんですね。白い薔薇を染めるように。
今市:そうですね。前作『Land of Promise』とか、これまでのアルバムだったら、僕やØMI、ELLYが作詞作曲に関わることや、メンバー主体で作ってましたけど、今回はクリエイターさん主体で動いてもらって。
ØMI:クリエイターさんによっては、僕らが過去に発表した曲のフレージングを使ってくれたり、「僕達の曲をしっかり聴き込んできてくれたんだな」って思う方もいて、それはそれですごく嬉しかったんですけど。僕らとしては「良い意味で先入観なく作ってほしい」って気持ちがあったんですよね。そういう中で、「BLAZE」を一緒に作ったプロデューサー陣から「ELLYさんのラップを入れたいです。ELLYさんの声が一番ハマる気がするんですよね」って言ってもらえたので、そのフレキシブルさに乗っかったというか。プロデューサーが思い描く「BLAZE」を三代目で仕上げるにあたり、ベストなカッコよさは何かって考えた時に、ここのラップはELLYにお願いしようってことになりました。それこそ、最初は歌い分けも全然決まっていなくて。俺と隆二もとりあえず全パートを歌って、一番ハマる人の歌を入れていったんですよ。
――ああ、それでラップパート=全部ELLYさんにはならなかったんですね。MVを観て、「歌い出しのラップ、今市さんなんだ!」って驚いた方もいそうです。
今市:俺もまさか歌い出しのラップが自分になるとは最初は思ってなかったですね。
山下健二郎(以下、山下):あのラップ、攻めてていいよね。パフォーマー目線で見ても新鮮だった!
ØMI:“三代目ってこうだよね”っていう定説を壊して、新しいことにたくさんトライできましたし、来年15周年を迎える三代目の在り方を考えた時に、理想的な取り組みだったなと思います。とはいえ、僕らも何でもそのまま受け入れるんじゃなくて。自分達が良いと思えるものを取り入れて、良いように作り上げていくことが、今回のアルバム全体のコンセプトでしたね。
――「BLAZE」のMVはサングラス姿の山下さんにも驚きました。『ZIP!』(日本テレビ系)のパーソナリティーをされている時の爽やかな雰囲気とは違ってて。
山下:まあ、朝の顔ではないですよね(笑)。まさに“二面性”! 日常的に、PETAL(花びら/『ZIP!』などで見せる爽やかさ)とTHORN(棘/アーティストとして見せるダークさ)を表現しております。
今市:先取りしてたんだ!? さすが、健ちゃん。
山下:……っていう冗談はさておき真面目な話をすると、今回はMVもYUANNさんっていう新しい映像監督に撮っていただいたので、音楽面でも映像面でもパフォーマンス面でも、いろいろなアプローチの仕方で新たな三代目を表現できたんじゃないかなと思います。他の楽曲にも言えることですが、アルバムのデモを聴いた時は、どの曲も良い意味での違和感があったんですよね。どれも今までにない曲調だなって。だけど、そこに隆二とØMIの声が乗ると三代目の歌になるし、僕らのダンスが加わることで「これが三代目です」って言える楽曲に仕上がるんだなって実感しました。その軸がブレないからこそ、僕らは挑戦できるんでしょうね。三代目は来年15周年を迎えるんですけど、『ECHOES of DUALITY』を通して、自分達にはまだこんなにも新しいことができるんだ! って思えたことが、今、すごく自信になっています。
――「BLAZE」のMV撮影はいかがでしたか?
今市:「BLAZE」の時は、みんな、それぞれ攻めた感じで来たのが面白かったよね。健ちゃんのサングラスも意外だったし、岩ちゃんも髪の毛グネグネしてたじゃん?
岩田:グネグネしてましたね~(笑)。みんながどういうビジュアルにしてくるか、現場に来るまで知らなかったので、「お、そういう攻め方で来ましたか」みたいな感じで。みんなの変化を見て「久しぶりに7人揃ったなぁ」って思ったりもしました。
山下:俺、ELLYが髪の色を緑にしてきたのもビックリした!
――髪型は今年、CB(ELLYのソロ名義)として「CHEDDAR」をリリースした時と同じ感じですけど、色はアップデートされていましたね。
ELLY:緑にしちゃいました(笑顔)。
山下:グリーンバックで撮影したから、合成が大変だったみたいだよ(笑)?
NAOTO:グリーンバックの時、一番しちゃダメな髪色にしてくるっていうのがELLYっぽいけどね(笑)。ELLYだけ髪の毛がなくなる!
一同:あはははは!
今市:そういえば、あれ、結局どうやって処理したんですかね?
NAOTO:それはもう、スタッフさんの努力ですよ(笑)。
ELLY:(食い気味に)みなさん、ありがとうございました!!
――撮影の仕方も今までにないものが多かったと思いますが、特に印象的なシーンというと?
NAOTO:ØMIを中心にして撮影したカットかな。
ØMI:MVだとスローモーションになっているところです。
小林:その撮影風景は、ぜひYouTubeの「[JSBehind]'BLAZE' MV Behind The Scenes」で観ていただきたいですね。
――「BLAZE」のMVは映像ならではの表現が多いので、Dance Performance Videoとのギャップも見どころでしょうか。
山下:そうですね。それに、ツアーに向けてリハーサルをする中でも変わってきた部分があるので、ライブではまた違った「BLAZE」をお見せできると思います。『ECHOES of DUALITY』の楽曲は、どれもコンセプチュアルなので、その世界観をライブでどう表現するかが僕らの腕の見せどころですね。