ゆずは“次の約束”を交わし続ける デビュー25周年突入、2人にしかできない音楽を届けた日本武道館ライブ
2021年10月25日、ゆずのデビュー25周年突入記念ライブ『YUZU TOUR 2021 謳おう×FUTARI in 日本武道館』が開催された。タイトル通り、ステージに立つのは北川悠仁と岩沢厚治の「2人」だけ。2人だからできる音楽を、2人にしか奏でることのできないハーモニーを届けた、笑いあり涙ありの2時間20分だった。
「ありのまま」のゆずを楽しんだ前半
ゆずのライブではおなじみ、開演前の「ラジオ体操第一」で、心も身体も温まっていく。いよいよ暗転すると、メインステージ後ろの客席から2人が登場。階段を降りてステージに到着すると、2人は腕をゴツンとクロスに合わせた。「わだち」「少年」「旅立ちのナンバー」と、冒頭から人気曲が続く。イントロのたび、思わず立ち上がりそうになるのを堪えるファンの姿も。「シャララン」をともに歌うことができないのは、ゆずっこ(ファン)にとってなんともどかしいことだろう。
さまざまな制限や配慮の上で行われたライブ。ファンも着席したまま参加する。しかし、それらを「逆手にとったエンターテインメント」を用意したという2人。ファンもまた、タンバリンや音の鳴るグッズ、なにより拍手を通し、声援の代わりにめいっぱいの思いを届ける。
初期の名曲「くず星」。声だけでストーリーを語る岩沢、声までもまっすぐな北川。客席には、涙をそっと拭う者もいた。年齢を重ねてなお変わらないもの、重ねたからこそより胸に響くものを噛みしめながら、2人の若者が声を重ね、歩み始めた奇跡を思った。
彼らの言う「前半戦」、印象的だったのは会場の明るさだ。登場の際にはひととき暗転したが、その後は客電も付けたまま。ステージライトこそあれど、特殊な照明演出もない。「ありのまま」のゆずと、音楽を楽しんだ時間だった。
だからこそ「虹」で見せた、スクリーンを使った幻想的な演出が強く印象に残る。舞い上がる羽根や花たち、それに負けない美しさを持つ力強いハーモニー。思い思いに身体を揺らしていたファンの動きは、いつの間にか止まっていた。聴き入り、圧倒されているのだと分かった。
エンタメ精神とアイデア溢れた後半
3分間の換気タイムのあと、後半戦は「始発列車」からスタート。「見え辛くてごめんね」と冒頭から配慮していた、見切れ席のすぐ近くまで2人がやってきた。ギリギリまでファンのそばへと手を伸ばす北川だが「安心してください! 2mの距離をとってます」と、寂しい距離も笑顔に変えた。
「2人しかいないので、手を替え品を替えやっております」と明るく宣言したように、音楽を届けることはもちろん、いかにファンを楽しませ、笑顔にするか、工夫が張り巡らされたライブだった。そのエンターテインメント精神とアイデアに、ゆずの原点を感じる。
2人が路上ライブ時代から歌っていた「地下街」では、スクリーンに貴重な映像が映し出された。ゆずと交流のあるお笑い芸人・あべこうじが当時、VHSをダビングして編集・作成したという年季の入ったミュージックビデオだ。
歌いながら時折スクリーンを振り返り、過去の自分たちを見つめる2人。照れくさそうでもあり、嬉しそうにも見える。彼らが言うように画質は荒く、カチッとしたフォントや映像の繋ぎに表れる手作り感、道行く人の服装ーー「当時」の欠片が散りばめられた、味のある映像だった。そしてこの頃から、2人が笑い合う距離感、ギターを抱えて並ぶ姿、遊び心は何一つ変わっていない。
懐かしい日々を愛おしみ、25年間を振り返る。「世の中には、とても素敵な変化もたくさんあったけれど」と慎重に言葉を選びながら、そうではない側面ーーたとえばこの2年間で世界をガラっと変えたコロナ禍について触れた。
「時代が変わっても、この世界が美しく素敵でありますように」。そう願いを込めて届けた「ワンダフルワールド」。歌詞に心を乗せ、丁寧に歌う。スクリーンには、世界中の人々と風景が映し出される。「この時代、この瞬間にしか歌えないワンダフルワールド」ーー北川が語った通りの絶唱だった。
「弾き語りの限界」に挑戦した「イマサラ」、大ヒットナンバー「夏色」を歌い終えると、2人はあらためてライブを開催できたことへの感謝を言葉にした。会場に来てくれたファン、配信で見てくれているファンーーそれぞれへの想いを「伝えきれない」としながらも、その表情を見れば、2人の想いは充分に伝わったことだろう。