あらゆる音楽経験を糧にーー独自の“ピアノ道”を歩む角野隼斗という個性に迫る

独自の“ピアノ道“を歩む角野隼斗という個性

 2021年、音楽界には確実に「ピアノの時代」が到来している。

 パンデミックの余波でライブ活動が制限されたこの2年、ストリートに加えYouTubeという電子空間に発表の場を持っていた新時代のピアニストたちが、爆発的な人気を獲得してきたのである。

 ピアノ系YouTuberといえば、ハラミちゃんやよみぃが象徴するような、ポップスアレンジの達人と思われるかもしれない。しかし、数多のスターの中にはまったく新しいオリジナル曲や、クラシックやジャズの演奏で高い人気を誇る人たちもいるし、そもそも視聴者たちは、従来のジャンル分けなど気にしていないように思える。

 さらに今年は、5年に一度の「ショパン国際ピアノコンクール」の年だ。ショパンの命日である10月17日の前後3週間、ポーランドで開催される世界一有名な音楽コンクールは、今まさに熱戦の最中。日本人5名を含む3次予選のライブ配信をYouTubeで“観戦”するため、連日寝不足というピアノファンも少なくない。

 彼らはただ「ピアノの音、最高」というシンプルな感情でつながっている。好きになったら、武道館にもコンサートホールにもジャズクラブにも足を運ぶ。それはなんて自由で、軽やかで、健全な音楽のあり方だろう。

 角野隼斗は、そんな21世紀の「ピアノの時代」を象徴する人物である。

 別名「かてぃん(Cateen)」。クラシック、ジャズ、ポップス、アニメ・ゲーム音楽などを自在に奏で、YouTube総再生回数9000万回以上、登録者数80万人超(2021年10月現在)を誇る人気ピアニストだ。

 今年7月に放送された『情熱大陸』(TBS系)でも注目されたとおり、彼に出会ってまず驚くのはその異色の経歴と、幅広いジャンルの第一人者が信頼をおく多才さである。

ピアノとピアニカの二重奏 – 情熱大陸

 まず彼は、「音響工学」というバックグラウンドを持つ。幼い頃からピアノと算数を愛し、東京大学大学院情報理工学系研究科に進学しながら、在学中の2018年に「ピティナ・ピアノコンペティション」で優勝。その後、音楽活動を続けながら、フランス国立音響音楽研究所(IRCAM)などでAIによる自動採譜の研究にも従事している。

 また、作曲家・アレンジャーとしての活躍も目覚ましい。6月には、彼の音楽性に早くから注目していた蔦谷好位置のプロデュースで、ゆずの楽曲「NATSUMONOGATARI」(2021年)のピアノ演奏を担当。彼らのバックで『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)にも出演した。ネクストブレイクアーティストとして注目される映秀。との友人関係も有名だ。今年3月にリリースされた1stアルバム『第壱楽章』でピアノを担当したほか、収録曲「笑い話」をともに作曲。今秋開催される『映秀。1st Tour ”This is EISYU”』への帯同も決定している。

 俳優、中村倫也が出演するブルボン「ルマンド」シリーズの新CMで、角野のオリジナル楽曲を聴いたという方もいるだろう。中村の投稿によってTwitter上で話題になったことも記憶に新しい。

 このように幅広い活躍を繰り広げながら、角野隼斗はポーランドでショパンに向き合っていた。冒頭で触れた「ショパン国際ピアノコンクール」に挑んでいる最中だったからだ。

 今やクラシック界に独自の地位を築いた反田恭平や、小林愛実といった俊英たちとともに進出し、三次予選の演奏で驚きを与えた角野。全世界にライブ配信されたその演奏への期待はステージが進むにつれ多くの音楽ファンに広がった。それは賛否両論というような狭義ではない音楽そのものへの期待を動かす波紋となった。



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