Suchmos、立ち位置を更新し続ける野心に満ちた歩み 活動休止発表に寄せて
2021年2月3日、Suchmosが活動休止を発表。ファンへの感謝と共に「修行の時期を迎えるため、バンド活動を一時休止します」というメッセージが届けられた。2020年7月には新曲のみを演奏する配信ライブを開催するなど、次のアクションが注目されている中での活動休止だった。彼らの歩みは常に立ち位置を更新していく野心に満ちたものであったと思う。本稿ではその歴史を振り返っていく。
2013年にYONCE(Vo)、HSU(Ba)、OK(Dr)を中心に結成されたSuchmos。小さなライブハウスで経験を積みながら2014年には『FUJI ROCK FESTIVAL』に公募出演するなど活動初期から注目度は高かった。2015年にTAIKING(Gt)、KCEE(DJ)、TAIHEI(Key)が加入して現在のメンバー6人となり、同年7月リリースの1stアルバム『THE BAY』で本格的に世に出ていくことになる。
『THE BAY』ではロック、ソウル、ジャズ、ヒップホップを混ぜ合わせたダンサンブルで心地よい音楽を志向し、すでに独自のカラーを獲得している。2012年にceroが『My Lost City』で提示した楽団的な音のリッチさや、2014年のYogee New Waves『PARAISO』に溢れるエキゾチックなメロウネスとも異なる、6人の音だけが溶け合った都会的でクールな音楽性は当時のインディーシーンにおいても孤高の存在感を放っていた。
代表曲「STAY TUNE」が収録された2016年のEP『LOVE&VICE』が快進撃の幕開けだ。『THE BAY』で確立した基礎をより華やかなフォームに進化させた曲であり、リリース時より静かな話題となっていたが同年9月にHonda「VEZEL」のCMソングに起用されお茶の間へと急速に浸透。“心地よくてオシャレな音楽”、“大人には懐かしく、若者には新鮮に聴こえる“といった要素が広く受け入れられた結果、2017年1月リリースの2ndアルバム『THE KIDS』はオリコン週間チャート2位を記録。決定的なブレイクとなった。
『THE KIDS』は「STAY TUNE」や「MINT」のようなオープンな楽曲もありながら、注目を浴びる中で感じたストレスに反抗するようなエッジーな楽曲も多い。スケールは大きく、しかし攻撃的なロックサウンドを展開したことで、当時Suchmosが中心にいた“心地よくてオシャレな音楽”からは一線を画すポジションへと登り始めた。自らの立ち位置を開拓し続ける姿勢はこの頃から顕著だ。