Yogee New Waves、現実と向き合って鳴らした新しい一面 コロナ以前に生まれたグルーヴを残した理由とは

Yogee New Wavesのグルーヴ

「今はお客さんの目を見れば何を考えてるのかわかる」

ーーアンサンブルの満足度も高いと思うんですよね。

竹村:プレイヤーとしてかなり楽しめましたね。1年前の自分が弾いたフレーズのハモりを弾くのもなかなかない経験だから。最初は1年前の感情は忘れているんだけど、弾いてると思い出すんですよ。そういう意味でも楽しかったし、全曲いい感じにギターを弾けてるなと思います。ミックスのときにみんないいプレイをしてるなと思ったし。

上野:「You Make Me Smile Again」はサウンド的にも歌詞的にも新しいなと思っていて。「White Lily Light」とかもそうですけど、新しい質感をバンドで鳴らせたのがよかったかな。

ーー上野さん、「Long Dream」ではウッドベースを弾いてますよね?

上野:そうですね。ウッドベースを弾くのは初めてだったので、そういうチャレンジも楽しかった。もちろんエレキベースも好きだけど、ウッドベースのほうが好きかもしれないって思いましたし、すごくいい経験でした。

上野恒星

ーー粕谷さんはどうですか?

粕谷:6~7割の曲ができていた段階で、自分のベーシックなドラム録りは終わっていて。でも日々更新しているから、録った1週間後には「もっとこうできたな」って思うんですよ。だから早くミックスしたいって率先して言ってましたけど、本当はドラムを録り直したくて(笑)。でも、ハッとしたのが、ボンさん(竹村)が言っていた「このときの状態を残しておくのもトゥルーなんじゃない?」ということで、俺の中で響いたんですよね。「Long Dream」をミックスするかしないか話し合っていたときだったんですけど、「もうこの音は出せない」という張り詰め方をしていたからこそ生まれたグルーヴがあって、そのときにしか録れない音だなと改めて思ったんですね。だから、それを世に出したいと思いました。

ーー「Long Dream」はアルバムの中で一番ディープでミニマムな曲ですよね。

粕谷:BPMも遅くて難しい曲だからこそ思い入れも深くて。あとから冷静に聴いてすごくいい曲ができたなと思った。そのモードが最後にできた「JUST」にも繋がっているのかなと。「JUST」はさらに今の自分を表現した感じです。もちろん、そこから自分のモードは日々変わってきてるんですけど。

ーー「JUST」は合唱曲のような情景さえ浮かぶ、魂を治癒するような曲だと思ったし、10代の子たちや学生に聴いてほしいなと思いました。コロナが終息したときに、彼らはコロナ世代云々とか言われて悲観されるかもしれないけど、そんなことよりも今彼らがどんな表現に触れて何を感じているかがとてつもなく重要だと思うんですね。そんなことを思いながらこの曲を聴きましたけど、健悟さんは何を思いながら書いたんですか。

角舘:なんだろうね……自分のマインドの開き方がコントロール利かないところまできてたから。世界が混沌としすぎていて、どこに自分の照準を合わせたらいいかわからなくなってしまって。その照準ってすごく大事で、命綱みたいなものなんです。そこが最終的に作品の核にもなるんだけど、これだけ長い時間混沌としていると意識が分散してしまう。そうなってくると一球入魂みたいに、1曲1曲に思いを込めるしかないんですよね。そんな中で「JUST」ができて。めちゃくちゃ抽象的な話ですけど、自分というレンズに太陽光が入って、レーザーが焼印していくみたいに詞曲ができていく感覚。曲を書きながら、その瞬間を〈今〉という詞を使いながら書きました。

ーーそういう感覚をライブ中にも感じるんじゃないかと想像します。

角舘:やっぱり俺らが感じてることとステージ上の演奏がわかりやすくリンクしますよね。だからこそ今ライブをやれるのはすごくスペシャルな時間だなと思うし。

ーーフロアのお客さんもマスクをしていて声を上げられず、他者と一定の間隔が空いてるからこそ、ライブを体感する感覚が研ぎ澄まされる部分もあると思うんですよね。アーティストとお客さんがアイコンタクトしたりとか。

竹村:確かに、マスクなしでワーッ! とライブをやっていたときよりも、今はお客さんの目を見れば何を考えてるのかがわかる。目は口ほどに物を言うじゃないけど、「今、この人めちゃくちゃ嬉しいんだろうな」とか「この人、救われてるな」とか目を通して感じるから。今のライブはコロナ前とは全然違う方法で深いコミュニケーションが取れてると思う。

竹村郁哉

「いろんな人をハグできるパワーは蓄えられた」

ーーあとは「SISSOU」を先行配信で聴いたときは、次のアルバムで解散する気なんじゃないかと思ったけど(笑)、アルバムの1曲目として聴くと新しい始まりの歌として響いてきます。

角舘:電気グルーヴの(石野)卓球さんが、世界各国のお別れの言葉をバーッと言って「バイバーイ!」って終わるライブがあって、それがめちゃくちゃ切なくて好きなんですよ。“疾走”という言葉に切ないノスタルジーを感じるのは、“喪失”という言葉が隠されているからだろうなと思って。

ーー三部作を通して描いてきた青の季節に別れを告げる1曲目でもあるのかなと。

角舘:それこそ今年で20代が終わるから「30代はどうしよう?」と思ってるところなんだけど、そこに繋がってるような気はしますね。「to the moon」で歌ってる〈グッバイ〉は、今までの自分とは違うと気づくスペシャルなことがあったという感じだから、「SISSOU」とはニュアンスが違うんだけど、確かに今作は別れについて歌ってる曲がいっぱいありますね。

Yogee New Waves - SISSOU (Official MV)

ーーその理由を自己分析できますか?

角舘:自分の人生は別れが多いなとは思う。あまり人に依存するのが好きじゃないから、さよならの瞬間は好きなんですよ。ドキドキしますね。

ーー出会いよりも別れのほうが好き?

角舘:出会いも好きですよ。けど、人は別れを極端に嫌いますよね。本当に繋がってる人とは2年くらい会わなくても繋がっていられる。毎日会っても繋がっている感覚がないなら、それは繋がっていないのと同じというか。目に見えてるのに繋がっていない気がする。

ーーソングライターとして、そのことをどこまでもロマンティックに表現したい人なんだと思いました。

角舘:別れが訪れる瞬間に気づかず、自分の中にずっとあるものだと勘違いすることってあるんですよね。例えば感覚にしてもそうだし、親や自分がいつか死ぬこともそうだし。

ーー別れに気づかないようにしていると言えるかもしれない。

角舘:それもあるかもしれない。ただ、別れがやってくることに気づける人は、素敵になれる気がする。俺はそこを切り取れるのかなって最近思いました。あと、死んでも生き続けられるのは芸術の醍醐味ですよね。

ーーここ数年で、Yogee New Wavesと同世代のバンドやアーティストが活動休止したり、活動形態を変えたり、ターニングポイントを迎えてるという印象があるんですけど、だからこそバンドとして転がり続けている尊さをみんなはすごく感じているんだろうなと思います。

角舘:それは思ってます。バンドって自分たちがイメージしている以上にファンにエネルギーを与えていたりします。だから、たとえ完全に自分が納得していなくてもアルバムが出るというのはすごくポジティブなことなんだってわかってる。それゆえにもっと満足したいし、もっといい作品を作ろうって思い続けられるんだと思う。このアルバムを完成させるためにメンバーに引っ張られてよかったと思ってます。

粕谷:相応の覚悟がないと健悟を説得できなかったし、それぞれが覚悟を決めたタイミングでもあったんですよね。

角舘:だからいろんな人に聴いてもらいたいと思う。自分が思ってる以上にYogee New Wavesの受け皿はデカいし、いろんな人をハグできるパワーはコロナ前にやれたアジアツアーで蓄えられたと思うから。

ーーでは、このアルバムに『WINDORGAN』とつけた理由について聞かせてください。

角舘:『WINDORGAN』というのはオランダにある建築物で、風が吹くと音が鳴るんですよ。都市の動きって風みたいなものだと思っていて、都市が止まるとバンドも止まってしまう。都市の動きを受けて俺たちが新しい音を鳴らすという構造は、『WINDORGAN』だなって。あと、今作はYogee New Wavesの音楽がしっかり街で鳴ってるというイメージもあるんです。今まではもうちょっとエスケーピズムというか、街の嫌なことから逃避する感覚があったけど、今作は一人ひとりが鳴らす音が曲になって、街の中に生きているイメージがあって。

ーー確かにエスケーピズムではなく、現実のロマンに向かってますよね。

角舘:今、非常に現実と向き合ってますね。都市に住みながら感じたことが曲になってるので、Yogee New Wavesのそういう一面を知ってほしいなって思います。

Yogee New Waves『WINDORGAN』

■リリース情報
Yogee New Waves
4th Album『WINDORGAN』
2021年10月13日(水)発売
【ビクターオンラインストア限定盤(CD+DVD+GOODS)】¥8,500+tax
【通常盤CD】¥3,000+tax
【12inch VINYL】¥4,000+tax

<CD>
1.SISSOU
2.to the moon
3.You Make Me Smlie Again
4.Night Sliders
5.JUST
6.Ana no Mujina
7.あしたてんきになれ
8.windorgan
9.Toromi Days feat. Kuo (落日飛車Sunset Rollercoaster)
10.Jungrete
11.Long Dream
12.White Lily Light
<DVD>
2020年7月12日に配信した自身初のストリーミングライブ『Yogee New Waves presents“NAKED』完全収録
<GOODS>
『WINDORGAN』オリジナルデザインTシャツ(Lサイズ)、ステッカーシート、ZINE

■ライブ情報
『WINDORGAN TOUR 2021』
10月16日(土)福岡 DRUM LOGOS OPEN 16:30/START 17:30
10月17日(日)広島 クラブクアトロ OPEN 16:45/START 17:30
10月23日(土)高松 DIME  OPEN 16:45/START 17:30
10月24日(日)京都 磔磔 OPEN 16:45/START 17:30
10月27日(水)札幌 ペニーレーン24 OPEN 18:00/START 18:30
10月30日(土)金沢 EIGHT HALL  OPEN 16:30/START 17:30
10月31日(日)新潟 GOLDEN PIGS RED  OPEN 16:45/START 17:30
11月3日(水・祝)仙台darwin’  OPEN 16:30/START 17:30
11月6日(土)岡山 YEBISU YA PRO  OPEN 16:45/START 17:30
11月7日(日)浜松 窓枠 OPEN 16:30/START 17:30
11月12日(金)心斎橋 BIGCAT  OPEN 17:00/START 18:00
11月13日(土)名古屋 BOTTOM LINE OPEN/START  16:30/17:30
11月16日(火)東京 Zepp Tokyo  OPEN 17:00/START 18:00
12月4日(土)沖縄 Output OPEN 17:00/START 18:00

Yogee New Waves オフィシャルHP

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