スピッツ、椎名林檎、BUMP OF CHICKEN……カップリング曲にも名曲揃い 今、改めて聴きたいアーティストの“B面集”

カップリングは楽曲の可能性を広げる場にも

 BUMP OF CHICKENが2008年にリリースしたカップリング集『present from you』はメンバーの強い意志が反映された作品のように思う。昔からライブでもカップリング曲を披露することの多かった彼らだが、当時はその知名度も今ほどではなく、新曲と間違えられることもあったという。(※1)“いつか日の当たる場所に出してあげたい”という思いから作られた本作にはメジャーデビュー以降から2007年までのシングルのカップリングが全て収録されている。

 ライブでもよく演奏される「真っ赤な空を見ただろうか」や『MUSIC BLOOD』(日本テレビ系)でSHISHAMOがカバーしたことでも話題となった、独自かつユーモアに富んだ物語を綴る「ラフ・メイカー」など、今なおBUMP OF CHICKENを語る上で欠かせない楽曲が多く収録されている。また「Ever lasting lie (Acoustic Version)」、「スノースマイル ~ringing version~」、「ガラスのブルース (28 years round)」といった過去曲のリアレンジもある。このようにカップリングは楽曲の可能性を広げる場所にもなっているのだ。

BUMP OF CHICKEN「真っ赤な空を見ただろうか」

 幻想的な物語の中で孤独を歌う「銀河鉄道」、藤原基央(Vo/Gt)の弾き語りによる祖父へのレクイエム「睡眠時間」など奥底にある想いが露わになった楽曲や、アコースティックギターを基調とした楽曲も多く、心にゆったりと染み入ってくるような静かなエネルギーに満ちたアルバムだ。

BUMP OF CHICKEN『present from you』

 単曲での配信が増え、従来型のシングルCDリリースはされづらい昨今、 “B面曲”という概念ごと失われつつある。これらの楽曲が担っていた実験性やアーティストの意外な側面は今後どのように表現されていくのだろうか。CD全盛期の貴重な遺産として、そしてアーティストの歴史を語るための作品形態として、徐々に変わりゆくシーンの中でもB面集の価値は薄れることはないはずだ。

※1:https://www.tfm.co.jp/lock/bump/present/index.html

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