BUMP OF CHICKEN、連続テレビ小説『おかえりモネ』と主題歌「なないろ」の深い相性を読む

『おかえりモネ』とバンプ主題歌の相性を読む

 連続テレビ小説『おかえりモネ』(NHK総合)が、5月17日よりスタートした。その主題歌を務めるのはBUMP OF CHICKEN(以下、バンプ)。50年以上にわたり受け継がれてきた朝ドラという104作目のバトンを、主題歌「なないろ」でバンプもまた担っている。

 一聴した率直な印象は、心地よいリズムと爽やかなサウンドが朝にぴったりの楽曲ということ。近年の朝ドラ主題歌を振り返ってみると、スピッツ「優しいあの子」やSuperfly「フレア」、GReeeeN「星影のエール」、秦 基博「泣き笑いのエピソード」と多様なアーティストが描いてきたが、一本の芯として通底しているのが至極シンプルなサウンドイメージだ。バンプにとって名刺代わりとも言える「天体観測」はグループ初期に代表されるロックサウンドが特徴的であるが、2007年リリースの『orbital period』や2010年の『COSMONAUT』といったアルバム時期からはシンセサイザーやストリングスが多くの楽曲に使用され始め、いわゆる爽やかなバンプのイメージが定着していった。「なないろ」はそんな期待にしっかりと応えてくれるような楽曲だ。

 また、歌詞に至っても藤原基央(Vo/Gt)のエッセンス全開に思える。それは『おかえりモネ』という題材との相性の良さにあるだろう。本作は、誰かの役に立ちたいと願うヒロイン・永浦百音(清原果耶)が気象予報を通して人々に未来と希望を届けていく物語。藤原はこれまで気象現象やそれにまつわる情景を映し鏡のようにして人の心模様を描いてきた。例えば、「天体観測」の出だしには〈午前二時 フミキリに 望遠鏡を担いでった/ベルトに結んだラジオ 雨は降らないらしい〉とあり後に〈予報外れの雨に打たれて 泣きだしそうな〉と結ばれる。その次のシングル表題曲となった「ハルジオン」では歌い出しを〈虹を作ってた 手を伸ばしたら 消えてった〉と始めている。ほかにも、『COSMONAUT』収録の「ウェザーリポート」や2013年リリースの「虹を待つ人」、2019年の「Aurora」とタイトル自体にも多くの気象や天気にまつわる言葉が使われてきた。

 「なないろ」と付けられた今回の主題歌でも、1分半ほどのオンエア(月曜日は1分半、火曜日から金曜日は1分ほど)の中で「雨」「お日様」「水たまり」「空」「傘」といった多くの単語が耳に残る。中でも強く心に残ったのが、ラストの〈手探りで今日を歩く今日の僕が/あの日見た虹を探すこの道を/疑ってしまう時は 教えるよ/あの時の心の色〉という歌詞。これまでのメッセージ性と一貫しつつも、第1話の物語の中で彩雲を見上げる百音の姿と早くもリンクしている。前期朝ドラ『おちょやん』の主題歌である秦 基博の「泣き笑いのエピソード」が、約半年のオンエアを通して、秦自身も想定していなかった意味を持つ楽曲へと昇華されていったように、「なないろ」もまた『おかえりモネ』を通じて多くの視聴者の心に根付いていくことだろう。

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