『Wakana Spring Live ~magic moment~ 2021』インタビュー
Wakanaが語る、歌声と向き合い続けた1年間の成長と確信 「ライブは自分が生きていく中でのライフワーク」
WakanaがライブBlu-ray『Wakana Spring Live ~magic moment~2021』をリリースした。本作品には、2021年4月24日に東京・大手町三井ホールにて行われた、2ndアルバム『magic moment』のリリース記念ワンマンライブ映像に加えて、リハーサルなどに密着したドキュメントも収録されている。コロナ禍の影響による二度の延期を乗り越えて、1年越しの開催を実現させた彼女がライブに込めた想いを語る。(永堀アツオ)
「自分の殻を捨てて、新しい場所を探しにいく気分」
ーーまずは、ライブを終えた時の心境からお伺いできますか。
Wakana:すごく楽しかったし、もっとやりたかったっていう気持ちでしたね。たくさん準備して1年間の想いをぶつけたので、「終わっちゃったな~」という寂しさがありました。
ーー本来は昨年3月に開催予定でした。5月に延期になったものの再延期となって。
Wakana:いつになったらできるんだろうなと思ってましたね。だから今回の日にちが出た時も、「ほんとかな?」ってちょっと思ってました(笑)。みんなそうだと思うんですけど、いろんな場面で半信半疑になってしまって、それでも絶対にいつかできるという気持ちで1年間を過ごしてきました。
ーーステイホームが長かった2020年は、Wakanaさんにとってどんな1年になりましたか。Wakana:自分を再構築する年だったと思いますね。ふわふわして不安な気持ちの時はすごく辛いんですけど、ライブの日にちが決まってからは目指すべき場所がはっきりしたので、すごくよかったなと思っていて。実際にその日を目がけて、自分の気持ちもどんどん盛り上げていけたし、再構築した自分を出すんだっていう意気込みもありましたね。
ーー再構築というのは?
Wakana:歌い方や曲へのアプローチの仕方を、もう一度考え直そうと思ったんです。ステイホームで時間がたくさんあったので、声に対して、曲に対して、めちゃくちゃ向き合っていたら楽しくなってきて。毎日のように練習しているなかで2020年が過ぎていった。気づくと曲に対する思いも、自分の歌に関する技術も変わっていって、それが義務感でも焦りでもなく、楽しさでやっていけたんですね。声を研究することは私にとってすごく重要なことなので、そのことに本腰を入れてできた1年はすごく良かったし、楽しかったです。
ーー楽しかったんですね。
Wakana:そうなんですよ。自分の中で「この声を出したい」という目標があって、毎日のように練習していると、ある日「できてる。超えてる!」っていう経験をするんです。それが達成感や嬉しさになるので、やっぱり楽しくて。なんというか、ヤドカリが引っ越しするような感じ。今までの自分の殻を捨てて、新しい場所を探しにいく旅に出てた気分でしたね。これからもずっと続けていこうと思っているし、自分に合うやり方を根付かせる時間をたっぷり取れたのはすごく良かったです。普通であれば、忙しい合間に時間をとって、途切れ途切れに経験して、また戻って……というのを繰り返しながら進んでいくと思うんですけど、2020年の間にすごく集中して向き合うことができたと思います。
ーー有意義に時間を使ったんですね。セトリも、2020年3月に予定していたものから変えたそうですね。
Wakana:そうです。当初は入れていたけど省いた曲もあります。このセットリストじゃないと思って。最初の段階だと、自分の気持ちがごちゃごちゃだったんですよ。自分が見せたいこと、やりたいこと、伝えたいことを盛り込み過ぎて、あっちゃこっちゃ行ってて。その時の自分の気持ちも大事にしたいんですけど、まだまとまっていなかったし弱腰でもあった。けど、もっと攻めた方がいいなと思って変えました。今年の1月の終わりに、武部さん(武部聡志/音楽監督・キーボード)と改めて打ち合わせした時に、まず、カバーをやりたいっていう話をしたんですね。
「積み上げてきたものは間違ってなかった」
ーーもともとカバーをやる予定はなかったんですね。
Wakana:Kalafinaのセルフカバーがあったんですけど、もともと2曲だったところを1曲だけにしていて、それ以外は入れてなかったんです。でも、今回もっとカバーを入れたいですって言ったら、武部さんが何曲か提案してくれて。
ーーセットリストにカバーを入れたいと思ったのはどうしてですか。
Wakana:そもそも『magic moment』は色彩が豊かなアルバムだったんですよね。いろんなジャンルの曲を歌わせてもらってるし、私はずっと「いろんな自分を見てもらう」っていう挑戦をしているんです。『Wakana Covers 〜Anime Classics〜』もその1つだし、バンドサウンドでアニメソングではない曲のカバーを歌ってきたこともその1つ。私が初めてソロツアーをさせてもらったとき、武部さんの提案でカバーを歌ったんですけど、それまでは人の曲を歌う経験があまりなかったので、もっと突き詰めるべきだと思ったし、バンドサウンドで、J-POPとかいろんな曲もやってみたいと思って、そういうWakanaが見れる場所としてライブを確立させたいなと思ったんです。『Wakana Covers』では、クラシックでアニメソングのカバーを歌うWakanaを見てもらい、ライブのバンドサウンドではJ-POPのカバーを歌うWakanaを見てもらう、という差別化をちゃんとしたいと思ったんですね。
ーー今回は玉置浩二さんの「メロディー」と竹内まりやさんの「元気を出して」という2曲でした。
Wakana:武部さんがいくつか候補曲を出してくれて。「元気を出して」はちゃんと歌ったことなかったんですけど誰もが知ってる名曲だし、歌ってみたいと思って私が選びました。「メロディー」は知らなかったんですよね。
ーーいい曲、いい歌声、いい演奏があれば、他に何もいらないな! と思わず膝を打つくらいに感動しましたよ。
Wakana:そう言ってもらえて嬉しいです。でも、「メロディー」は探れば探るほど、別の「メロディー」もあると思っているんですよ。玉置さんの歌い方には、技術云々では語れないものがあって。言ってみれば、神みたいな。神の歌を聴きすぎると、モノマネのようになってしまうので、あえてオリジナルを聴くことをやめてメロディラインだけをきちんと取り込んで、自分なりに「ここだな」っていうところに落ち着くまで何回も歌ってみました。あの日の「メロディー」は、ちゃんといいって思えるところに根を下ろせていたんですけど、カバーはやればやるだけ楽しさがあるので、いつかまた違う「メロディー」を歌えたらいいなとも思いますね。
ーーKalafinaのカバーでは「春を待つ」を選曲しましたね。
Wakana:Kalafinaの中でもハモりがなくて、一人ひとりが歌って繋いでいく曲だから、当時珍しいと思ったんですよ。ソワソワするっていうか、やっぱり「ハモりたい!」ってなるんですよ。今回はそれを一人で歌うことで払拭したかったんですね。あとは春にやることが決まっていたこともあって、絶対に歌いたかった1曲です。
ーーセトリを決めた後のリハーサルはどうでしたか。ドキュメント映像に残っていますが、「楽しい。わーい!」って言ってましたね。
Wakana:あははは。本当に楽し過ぎて泣いていたし、ずっと震えてました。家では去年のリハーサルの音源をずっとヘッドフォンで聴いてたんですけど、実際に生でバンドの音を聴くと音圧がたまらない感じになっていて。楽しくて仕方なかったし、自分が積み上げてきたものが、生の音に耐えられるのかっていうのを早く確かめたかったんですね。それが間違ってなかったんだって思えたときに、すごく嬉しかったです。やってきたことを、ちゃんとみんなと一緒に奏でられているって思えたから。
ーー最初に「1年間の想いをぶつける」とおっしゃっていましたが、具体的にはどんな想いですか。
Wakana:「しっかりと1曲1曲を届ける。この時間を余すことなく楽しめる音楽を届けるからね!」っていう気持ちでした。
ーーそれは『magic moment』というタイトルとも繋がってますよね。
Wakana:本当にそうですね。ライブの瞬間はあの場あの時にしかないから。それを映像に残せるのはとっても有難いです。観に来てくれた人はその時に戻れると思うし、来れなかった人は追体験してもらえると思うし。私自身この映像を見て、ちゃんと過去を振り返れることも嬉しかったから。