Hikaru//が明かす、ソロプロジェクト始動の舞台裏「Kalafinaの10年がなければ、H-el-ical//はなかった」

Hikaru//が明かす、ソロプロジェクト始動の舞台裏「Kalafinaの10年がなければ、H-el-ical//はなかった」

 Hikaru//(ex. Kalafina)のソロプロジェクト・H-el-ical//のメジャーデビューシングル『Altern-ate-』が5月20日にリリースされた。

 Hikaru//は2019年5月からYouTube上でH-el-ical//名義の楽曲を定期的に投稿。瞬く間に「KalafinaのHikaru」のソロプロジェクトとして大きな注目を集め、さらに昨年末には、神奈川・神奈川県民ホールでワンマンライブを開催。満員の聴衆を前にメジャーデビューすることと、そのデビュー曲が現在放送中のテレビアニメ『グレイプニル』のオープニングテーマに採用されることを発表した。

 東京・日本武道館2Days公演を成功裏に収めるなど、Kalafinaはアニメソングシーンにおいてマスターピースと呼ばれる存在だった。そんなグループが2018年春に活動休止したのち、Hikaru//はなにを思い、またどのようにソロプロジェクトを立ち上げたのか? その歴史から、ソロとしてのメジャーデビュー盤に対する思いまで、幅広い話を聞いた。(成松哲)

H-el-ical//は皆さんと一緒にelevationしていくプロジェクト

H-el-ical//「Altern-ate-」MV Short ver.

ーーKalafinaが実質的に活動を停止したのが2018年3月で、Hikaru//さんがH-el-ical//名義でYouTubeに楽曲を発表し始めたのが2019年5月。この1年数カ月の空白期間ってなにをなさっていたんですか?

Hikaru//:ちょっと縁があって保育補助という形で保育園でお仕事をさせていただいていました。

ーー音楽とは距離を置いた生活を送っていた?

Hikaru//:保育園で働くことで癒しや命の尊さなどを改めて感じながら、自分のやりたい音楽を探すことも続けていました。そんな中で「復帰するなら誰かの手を借りないとその音楽は作れないなあ」なんて思っていたら、Kalafinaのときからお世話になっていた関係者の方からご連絡をいただいて、お会いする機会がありまして。そのときに「なんとなく」ではあるんですけど「自分は今こういうことを考えているんです」「こんな音楽をやってみたいんです」というお話をしたのを覚えています。

ーーそのHikaru//さんのやりたい音楽って?

Hikaru//:「Kalafinaで学んだことがたくさんあるから、それをゼロにしたくはない」ということと、「ソロだからこそ出来ることを追究してみたい」「ひとつのジャンルに縛られずにいろんな要素を取り込んだ音楽をやってみたい」「作詞をして見たい」ということですね。

ーーじゃあ、H-el-ical//名義でYouTubeでの活動開始から今に至るまで全楽曲を制作しているグシミヤギヒデユキさんはピッタリの存在だった? むかしばなしやcreature falls umbrellaといったバンドのギタリストとして活躍なさってきた方だし。

Hikaru//:そうですね。グシミヤギさんとお会いしたのは、今でこそH-el-ical//のプロデューサーでもある冨田(明宏)さんの紹介がきっかけだったんですけど、初対面のときに「Hikaru//さんのイメージで2曲書いてきた」と言ってデモを作ってきてくださって。それがのちにYouTubeで最初に発表する「pulsation」と、2曲目の「Avaricia」の原型になる曲だったんです。

ーーまさにグシミヤギサウンドはHikaru//さんの求めているものだった。

Hikaru//:はい。ただすみません。なんでグシミヤギさんの曲が好きなのかは上手に説明できなくて(笑)。

ーーでもH-el-ical//はギターがシグネチャーサウンドにはなっているんだけど、安易なギターロックではない。もっとポストロック的な音楽を指向しています。しかもちゃんとHikaru//さんにフィットしている。

Hikaru//:……うーん、なんでなんでしょう? ちゃんとHikaru//の曲っぽくなっているとおっしゃってもらえるのであれば、それはもしかしたら、自分で歌詞を書かせてもらっているからっていうのと、レコーディングのときも私主導だからなのかもしれないですね。グシミヤギさんからもらったデモを聴いて、Hikaru//が考えた「こういう歌い方をしたいな」というスタイルをそのまま採用してもらっているんです。

ーーあと、なぜH-el-ical//名義なんでしょう? 「KalafinaのHikaru」って大きなブランドだと思うんですけど、その名前を前面に出さなかったのは正直意外でした。

Hikaru//:それはKalafinaのときに学んだことがきっかけになっているのかもしれないですね。確かにもともとはソロの歌手になりたくていろんなオーディションを受けてきたんですけど、Kalafinaに加入するお話をいただいて、それから10年活動しているうちにひとりではできないことがあることをたくさん学んだ……ひとりじゃできないことが多かったんです。メンバーはもちろんだし、スタッフさんももちろんだし、なによりお客さまがいないと音楽って成り立たないんだっていうことを勉強させてもらって。そういう経験を踏まえた上でソロ活動について考えたら、心細くなっちゃったんです(笑)。みんなの力を借りないとできないって。

ーーH-el-ical//はHikaru//さんのソロプロジェクトの名前ではあるけど「H-el-ical//=Hikaru//」ではない。楽曲制作陣やレコーディングスタッフ、プロダクションの人々をも含む名前である、と。

Hikaru//:あとお客さまもですね。そして「Helical」は「らせん状」という意味。「螺旋」という言葉を辞書で引いてみたら「基本的には繰り返しの構造だけど、同じ位置を辿らず無限に上昇する線」と表記されていたんです。歌を歌う、音楽を作り続けるということに関しては同じなんだけど、お客さまも含めたみんなと上昇しながら音楽を作っていきたいという願いを込めて「Helical」というワードを選ばせてもらって、そこに横棒なんかを足してみました(笑)。

ーーその横棒……つまりハイフンの話はぜひ聞きたかったんです(笑)。最初に「H-el-ical//」という名義を見たとき、単語を音節で区切っているのかしら? と思ったんですけど、全然音節とは関係のない位置にハイフンを入れて単語を区切ってますよね。

Hikaru//:まず真ん中の「-el-」を除いて読んでみてほしいんですけど……。

ーー……あっ、「ヒカル」(Hical)って読める!

Hikaru//:そうなんです(笑)。あと真ん中の「el」には「elevation」、これは、「高く上げること・上がること」という意味の言葉なんですが、つまり自分以外の力・要素が加わることで上昇するということ。言いかえれば、自分の力だけではなく関わってくださる人や作品の力も借りることでより上昇していくという意味を込めているんです。

ーーまさにおっしゃっていたとおり、Hikaru//さんが皆さんと一緒に上昇していくプロジェクトだ、と。あと「H-el-ical//」もそうだし、ご自身の名義「Hikaru//」もそうなんですけど、なんで最後にスラッシュを2つ付けようと?

Hikaru//:これには「証明終了」の意味、「これはH-el-ical//の音楽である」「Hikaru//の音楽である」という意味を込めているんです。だからH-el-ical//で活動するときの私の名前は「Hikaru//」なんですけど、この夏、梶浦(由記 / Kalafinaのプロデューサー)さんのライブ(『Yuki Kajiura LIVE vol.#16 ~Sing a Song Tour 2020~』)にゲストボーカルで出るときは「Hikaru」名義になります。

ーーそしてH-el-ical//にまつわるもうひとつにして、最大の疑問なんですけど、2019年5月以来、まずはYouTubeで楽曲を無料で発表しようとしたのはなぜなんでしょう? 正直な話「KalafinaのHikaru」という名前があれば、いろんなメジャーレーベルとの契約のテーブルにつけただろうし、なんとなればインディーズでCDをリリースしたり、ライブを打ったりしても十分なセールスと動員を見込めたと思うんですけど……。

Hikaru//:いやいやいや。世の中そんなに甘くないですよ(笑)。

ーーそんなことないと思うけどなあ……。

Hikaru//:ちょっとリハビリが必要だったというか、Kalafinaという看板のないソロのアーティストとしてどこまで受け入れられるのかはやっぱりわからなかったですから。なので、ドキドキとワクワクを込めてまずはYouTubeに投稿してみました(笑)。

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