Wakana、1年越しのライブに溢れた“歌う喜び” バンマス 武部聡志とのセッションについても明かす

Wakana、1年越しライブの“歌う喜び”

 元Kalafinaのメンバーであるボーカリスト Wakanaが、4月24日に東京・大手町三井ホールで『Wakana Spring Live 2020 ~magic moment〜』を開催した。本公演は本来、2ndフルアルバム『magic moment』リリースを記念し、昨年の3月に行われる予定だったが、コロナ禍で2度延期になり、1年ぶりに実現に至ったライブである。Wakanaの「昨年来ようと思ってチケットを取ってくださった方にとっては2020年のライブなんだろうと思っていて。だから私も“2020の想い”を届けたいと思った」と、タイトルは昨年のままで、さらに自治体のガイドラインに沿って、昼公演・夜公演の二部制に変更されて行われた。

 Wakanaとしてソロ活動がスタートしてから、音楽監督としてライブに携わってきた武部聡志をバンドマスター&キーボードに迎え、鶴谷智生(Dr)、浜崎賢太(Ba)、植田浩二(Gt)というバンド編成で行われた今回のライブは、前述したアルバム『magic moment』収録曲であるメランコリックなアップチューン「揺れる春」からスタート。『magic moment』収録曲をほぼ全曲網羅したセットリストには、他に、玉置浩二、竹内まりや、Kalafinaのカバー曲や、デビュー曲である「時を越える夜に」も加えられ、現在進行形のWakanaの歌声を存分に堪能できる内容となった。Kalafinaでは主に高音のパートを担っていた印象のあるWakanaだが、ソロではそのレンジの広さを生かした低音や中低音のロングトーンなど、歌声の魅力も多彩だ。特にビブラートのかけ方には驚いた。一音のロングトーンの中で、最初は口の手前にあった母音を喉の奥に持っていき、喉を開いて鳴らすというスキルは、なかなか真似できる人がいないだろう。少なくとも筆者にとっては初めてで、「その瞬間=moment」を目の当たりにして、背中がゾクゾクした。12歳の頃から声楽を学んでいたというから、喉を操るスキルがあって当然だが、彼女の素晴らしさはその歌声にしっかり感情や想いを乗せて表現できることだ。アンコールも含めて全17曲。アップチューンは伸びやかで力強く、バラードは時に大地のように壮大に、時に囁くように儚く。存在感のある歌声で、コロナ禍の曇天が続く観客の心の雲を一掃するような、晴れやかでエネルギッシュなステージだった。

 昼の部が終わってからの会見取材では、Wakanaと音楽監督の武部聡志が登壇。Wakanaは1年越しのライブを「やっと開催できてすごく嬉しい」と語った後、こう続けた。

「やっぱり生音って最高ですね。この1年間、オンラインライブもいろいろ経験させてもらいましたし、そこで得られたこともたくさんありました。それが音楽ってどんな形でも楽しいんだなっていう想いだったんですけど、やっぱりバンドの音で歌って、それを皆さんにも生で聴いていただける……。このライブという空間が、自分は本当に好きだなと思いました」

 そんなWakanaを見て武部は「今日のライブは、Wakanaも“歌を伝えたい”という想いが、いつにも増してしっかり歌に乗っていたと思います。その波動がお客さんに伝わって、お客さんといいキャッチボールができた感じがしました」と述べた。武部にWakanaの歌声の魅力について聞くと、「ものすごく歌い上げるR&B系歌姫とも違うし、すごくシャウトするロックボーカルとも違う。やっぱり声にヒーリング要素があると思うんです。癒しの波動というか。そういうバイブレーションを持っている声だと思っているし、僕もその声に惹かれたんだと思うんです。そして(ライブを)観に来てくださっているお客さんも、その声の波動を感じに来てくださっているのかなと思います」と答えた。それに対して「嬉しい。ありがとうございます」と素に戻って、隣にいた武部にお辞儀をするWakanaの微笑ましい姿も印象的だった。

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