BOBBY×神田勘太朗『D.LEAGUE』対談 世界へ向けたプロリーグとして、ダンスを広げる面白さと課題

BOBBY×神田勘太朗対談

 日本発のプロダンスリーグ『第一生命 D.LEAGUE』が先日、1月10日から全12ラウンドのレギュラーシーズンとチャンピオンシップを経て、リーグとしての初年度を終えた。9チームによる半年間の戦いは、多くのダンサー/非ダンサーの目に焼き付けられたことだろう。

 そのなかでも「スター軍団を作る」というコンセプトで結成されたのが、SEGA SAMMY LUXだ。ディレクターは、伝説のダンスグループ・J.S.B.の初代リーダー・BOBBY。自身が生み出した「JSB basic」を基にしたヒップホップを武器に、レギュラーシーズンでは初戦と最終戦で優勝を収め、チャンピオンシップでも健闘している。彼が道なき道を突き進むなかで見えてきたものとは何だったのか。

 今回はそのBOBBYと、株式会社Dリーグ代表取締役COO・神田勘太朗の対談を行った。1stシーズンを振り返りながら感じたことや、ルール、ディレクターの役割など、話題は多岐に渡った。(小池直也)

分からなくても楽しいことが大事

ーー改めてシーズンを振り返ってみて、いかがですか。

BOBBY:今までは、1つか2つのSHOWを作ったら1年は持ちました。でも『D.LEAGUE』は半年間に12個、決勝戦を入れて14個の演目を作らなければいけません。オリジナルの音楽や衣装にも、世の中にないハイレベルなアイデアが必要です。分かりやすく言えば「2週間ごとに新曲を出して、MVは一発撮り」ですからね。とんでもないことですよ(笑)。勉強になっています。

ーー以前、神田さんが担当していたテレビ番組『DANCE@TV』(テレビ東京系)の「DANCE@HERO JAPAN」という企画はBOBBYさんからのアイデアだったそうですね。

神田勘太朗(以下、神田):アメリカでMTVがやっているストリートダンスバトル番組『America's Best Dance Crew』を日本でやったら、日本人もダンスはレベル高いし、盛り上がるのではないかということで。チームの映像をYouTubeやSNSに上げて、再生数やリツイートも点数になるようにしたら、アジア圏で人気になったチームが現れたんです。

BOBBY:あれは早すぎたね。Instagramが出てすぐの時(2011年)ですから。

神田:大体いつも早すぎてしまうのですが、『D.LEAGUE』は早すぎないようにしないといけないと思ってます。ダンスの良し悪しをダンサーだけでなく一般の人に広げていくこと、それはDリーガーに課せられている使命のひとつです。

BOBBY

ーー半年の戦いのなかで、実際に広がっているなと実感した出来事はあります?

BOBBY:今まで川崎 CLUB CITTA'で30年くらいダンスイベントをやってきましたが、親が観に来たことはなかったんです。でも『D.LEAGUE』は親が「面白い!」って喜ぶので毎回観ていて、今では親戚一同の楽しみになっているんですよ(笑)。こんなことは今までのダンス人生ではあり得ませんでした。お年寄りが見て、分からなくても楽しいというのが大事なのかも。僕の家族だけではなく、確実にダンスを見る人の層は広がっているはずです。今までは年齢的に下へと向かって広がっていたけど、今は全世代に広がっているなと。

ーーお茶の間への浸透といえば、SEGA SAMMY LUXを結成された時から「スター軍団を作る」と公言されていましたね。

BOBBY:それを前提でやらせていただいています。開幕前から追っかけがいるくらいメンバーたちはモテてますよ。今も練習スタジオに出待ちの人がいたり、ファンレターが来ない日がないです。プレゼントもすごい。『D.LEAGUE』からスーパースターが出ることが1番の目標なので、それが自分のチームから出たら嬉しいですね。

神田:SEGA SAMMY LUXの魅力は、主力のメンバーが現役の高校生だったりするので「フレッシュなエナジー感」です。ティーンや女性ファンが付きやすいチームだと感じますし、Instagramの反応も良い。それから彼らのダンスが流行というよりも、BOBBYさん仕込みによる90年代スタイルが基盤なので新しいんですよ。巷やTikTokで見るダンスではないので、それが若い層に刺さって新しい流れになったら面白いと思っています。

CHAMPIONSHIP SEMI FINAL 1st Match・SEGA SAMMY LUX/Dai-ichi Life D.LEAGUE 20-21 CHAMPIONSHIP

ーー20歳以上の年齢差のあるメンバー構成も特徴ですが、それについては?

BOBBY:やっぱり若い子だけではダメなので、僕とは違う現役のベテランがいるのが大事かなと思って、CANDOOをリーダーに選びました。集まった時は初対面のメンバーもいましたが、みんな同じスタイルのダンスが好きなので、打ち解けるのは早かったですね。だからROUND.1で優勝できたのだと思います。

神田:「最初からチームだった子たちのチーム」と「『D.LEAGUE』でチームになったチーム」のどちらが良いかは、正直まだ答えが出ていません。2年、3年とやっていくなかで、チームがどう変わっていくのかに注目です。ディレクターに紐づいたチームが良いのか、ディレクターが変わってもチームの色がキープされるのか。今のLUXはBOBBYさんが自身のイズムでチームを作っていますが、戦略的にもっと多様性を求めたり、ブレイキンやガールズの要素を投入することで面白くなる可能性もありますよね。

BOBBY:どうだろうね。ファンは変わってほしくないんじゃないかな。

アートやカルチャーを点数化することの難しさ

ーーディレクターをシャッフルするのも面白そうです。

BOBBY:難しいと思いますよ。そういうルールでやらなければいけなかったら、やると思いますが......。

神田:例えばエキシビションマッチとして、BOBBYさんが1SHOWだけKOSÉ 8ROCKSを担当するとか見てみたいですね。

BOBBY:試合にしなければアリだね。

神田:得意分野もセンスも、何を上手いとするかもディレクターごとでバラバラなので、そこで何が変わるのかが気になります。サッカーも監督が変われば全て変わりますし、『D.LEAGUE』が成長していく過程では、そういうエキシビションは大いにあり得えます。BOBBYさんがずっとLUXの監督であり続けるとは限らないですし、来シーズンのメンバーも変わるかもしれない。そういう部分も楽しんで見てほしいです。

BOBBY:僕もやったことがないので分からないですね。ルールが変わったり、審査員が変わったりするじゃないですか。いきなりいろいろな話が来るので怖い(笑)。

神田勘太朗

ーールールといえば、ROUND.7からジャッジが4人から8人に増員されましたが、その時はどう思われましたか?

BOBBY:さすがに事前に聞いてましたが、よく出るか悪く出るかはやってみないと分かりませんでしたね。でも、いろいろな人で審査する方がやはり良いし、イベント的には面白くなったと感じます。ただ、審査が人によって違うのは納得いかない面もありますね。2点(0.5点刻み)の5項目(スキル/クリエイション/コレオグラフ/ファッション/完成度)の観点で見ているはずのに、ファッションが良くないショウケースに高い点数が付いたりする。あれは技術などの点をファッションにプラスしているようにも感じるので、本当にあの5項目通りに審査しているかなと。

神田:ファッション点については本当に難しいですよね。SHOWの世界観との調和性という意味でのファッションということもあり、見る人によって差が生まれるのは致し方ないのかな、とも。

BOBBY:そこなんですよ。

神田:審査項目と点数はシーズンごとにアップデートしていくと思います。フィギュアスケートも毎年のようにルールを改正していますし、やはり主観が入ってしまう採点競技、つまりアートやカルチャーを点数化するってレギュレーションが難しいんですよ。例えば、ミシュランの格付けも似ています。味覚はそれぞれ違うじゃないですか。僕とBOBBYさんでも違うし、評論家の人と一般人でも違う。ダンサーと一般の人が言う「上手い」は意味が変わるので、あくまでも『D.LEAGUE』では幅広い視点の平均点を答えとしています。審査員増員はそれが狙いでしたが、結果は大きく変わらなかったですね。ただ多様性によって落としどころが何となく見えたかなと。今後はより細分化して項目ごとの審査にしたり、点数を0.1点刻みにしていくのは考えられますが「その0.1点の差はどこになるのか」という話にもなるでしょうね。

ーー逆に評価をオーディエンスに委ねる、ということも考えられますか?

神田:そうすると結局は人気に左右されると思います。バロメーターのひとつとしては良いですが、ダンスの場合はルックスだけだとプロよりもTikTokerやYouTuberが勝つ可能性もゼロではなく、評価軸が難しいんですよ。だから一般の方のリテラシーが上がるまでは、ダンスを評価する審査員が絶対に必要です。今後リーグが10年、20年続いてダンスを見る目が熟せば、オーディエンス投票だけで決められる可能性もありますね。オーディエンスポイントの投票権を有料会員のみにしたのは「推しチーム以外に入れちゃいました」という声もあり、1票の重みを感じてもらう上でよく作用したと思います。 ディレクター全員が自チーム以外の審査をする、というのも良いかもしれません。

BOBBY:それは面白そう。

神田:いずれにせよ、評価は永遠の課題です。その点についてはディレクターもダンサーも共闘していくしかないですね。

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