ISSEI×神田勘太朗『D.LEAGUE』対談 世界的にダンスが広がる今、Dリーガーが目指す未来とは?

ISSEI×神田勘太朗対談

 ラウンドを重ねる度に注目を集めている日本発のプロダンスリーグ『D.LEAGUE』。6月21日にはファイナルラウンドが開催され、レギュラーシーズン上位4チームが確定。セミファイナル、ファイナルを経て、7月1日開催のチャンピオンシップでいよいよ初のチャンピオンチームが決定する。

 2024年、パリ五輪にてダンススポーツ競技のブレイキン(ブレイクダンス)追加のニュースも追い風となり、日本のダンスレベルを引き上げる『D.LEAGUE』への期待が高まる今、運営を手掛ける株式会社Dリーグ代表取締役COOの神田勘太朗氏、そしてKOSÉ 8ROCKSディレクター兼選手のISSEIによる対談が実現。『D.LEAGUE』の現在と、そこから見える“これから”について語り合った。(佐藤結衣)

『D.LEAGUE』はブレイキンチームでは世界初といえる挑戦

ーー『D.LEAGUE』が開幕してから約半年、ISSEIさんの生活に変化はありましたか?

ISSEI:ダンスを考える時間がめちゃくちゃ増えましたね。チームのみんなもブレイキンのバトルメインでやっていたメンバーが多かったので、僕らの感覚でいうと1年に1つのショーを作れば十分なスピード感だったんですけど、それが『D.LEAGUE』では2週間に1つ仕上げていかなければならなくて(笑)。

神田勘太朗(以下、神田):そりゃあ大変だよね。ブレイキンのチームで2週間に1ネタって、本当に世界でも初めてっていうくらいの取り組みじゃないかな。ハウスもヒップホップもポップも、どんなジャンルのダンスも大変なんですけど、とりわけ一番体力を使うのがブレイキン。2週間で1ネタだと、たぶん筋肉痛が戻る暇もないんじゃない?

ISSEI:はい、マジで筋肉痛が日常になりました(笑)。毎日どこかしら痛いんですよね。ただ「慣れた」って言葉が適切かはわからないですけど、最初に比べてチームメンバーからもどんどんアイデアが出るようになったし、着実に経験値が高まっているのを感じます。

ISSEI

ーー神田さんから見て、ISSEIさん率いるKOSÉ 8ROCKSチームの様子はいかがですか。

神田:毎ラウンド、KOSÉ 8ROCKSがダントツでハアハアしてるんですよね。実際かなり体力的にキツいと思うんです。ブレイキンだと力を抜いているように見える場面も、実際は逆立ちで止まるという高度な動きをしているわけで。全然抜けてないんですよ。毎度とんでもないことをしているのに、それが普通に見えるから、さらにすごいことをしなければならなくて……。そうやって毎回、「すごい」を塗り変えてきているので、他のチームよりはるかに強くなっていると思います。もうスーパーサイヤ人チームですよ(笑)。

ーー実際にダンスをされている方からみると「これはキツい!」と思う技も、一般視聴者としてはどのくらい力が必要なのか伝わらないこともありそうですね。

ISSEI:そうですね。見せ方って大事だなって思います。でも、やっているほうとしては、余裕な表情でサラッとやってやりたいってところもあるんですよね。そっちのほうがカッコいいじゃないですか。そこが難しいところで……。

神田:ブレイキンは、僕も挑戦したことがあるのでわかるんですけど、新しい技を習得するたびに筋肉痛やアザが耐えないんですよね。華奢だなって思う子も握手をしたらびっくりするくらいゴツゴツで、「ああ、名誉の勲章だな」って思います。ISSEIさ、今度「キツい~」って言って倒れる演出とか、そういうの1回やってみたら?(笑)

ISSEI:あはは。でも実際本当にキツいですからね。やってみるのもいいかもしれないです。

神田勘太朗

ーーどれくらい大変かは実感できない素人の私でも、やっぱりブレイキンは迫力がありますし見ていてワクワクします。

神田:『D.LEAGUE』最大の目的は、どれだけファンを獲得していくかってところなんですよね。これはKOSÉ 8ROCKSだけじゃなく全チームに言えるんですけど、「よくわからないけどなんか好き」という人たちが、後々すごく大切で。すごい技を楽しみにしている人がいる中で、例えば顔がカッコいい人を応援したい人もいるんですよ。そうした人たちの心をいかに掴んでいくかっていう視点が勝敗に影響してくる。これまでダンサー同士のバトルでは、いかにダンサーに向けてカマすかが大事だった。でも、そこに一般の方に見てもらうための戦略が必要なんですよね。例えばISSEIの弟もKOSÉ 8ROCKSにいるんですけど、めっちゃイケメンなんですよ。なのに帽子を深々と被っているから「もったいないな〜」って(笑)。ショー中は動いているので難しいけど、オープニングの時間をうまく使ってファンのタッチポイントを作ってほしいなと思いますね。きっと、2年目、3年目とさらにブラッシュアップされていく中で、よりいろんなポイントでファンを増やしていくことができるように思うんです。そうした進化にも期待しています。

【D.LEAGUE】ROUND.12 KOSÉ 8ROCKS / Dai-chi Life D.LEAGUE 20-21 ROUND.12

ノーミスで魅せるKOSÉ 8ROCKSが抱える“課題”とは?

ーーISSEIさんはディレクターでもありますが、Dリーガーとしてステージにも立っています。その心境はいかがですか?

ISSEI:あのショーが始まる直前のカウントダウンのときには頭が真っ白になりそうですね。さすがに体で覚えているからか、振りが飛んだことはないですけど、頭で考えようとすると出てこなくなる感じです。そんな緊張感も、いい経験だなって思っています。

神田:やっぱりそうなんだ。他のチームからも「あの瞬間がヤバい」「振りが飛びそうになる」って聞いていたから。でも見ている感じ、KOSÉ 8ROCKSはそもそもミスがないんですよね。あれだけハードなことをやっていて、ミスがないっていうのは驚異的だなって。

ISSEI:ブレイキンはアクロバットで姿勢が崩れたり、投げた後グジャってなっちゃったり、ミスったことがわかりやすいジャンルなんですよ。だから、もうミスをしないようにすることは大前提というか。練習の段階から、集中しないとできないルーティーンを入れて、信頼関係を高めています。ただ、大きなミスはないものの、小さいミスがまったくないわけではないんですよ(笑)。

神田:そうなんだ。それがわからないレベルで整っているのもすごいよ。

ーーISSEIさんが大切にしている戦略の軸はありますか?

ISSEI:毎回「ブレイキンで何ができるんだろう」っていうのは考えていますね。新しいことをとりあえずやってみたいなと。「こういう攻め方もできるぜ」とか「こういった踊り方もできるんだぜ」とか、そういう新しい見せ方・可能性というものを見せていきたいという思いが、今シーズンのモチベーションになっている感じです。

神田:KOSÉ 8ROCKSの戦略で圧倒的に足りないのは、クジ運だよね(笑)。もうクジ引くのを違う人がやったほうがいいんじゃない? 1~3番になる確率高すぎて、もはや呪いとしか!

ISSEI:いや〜(笑)。順番ってやっぱり結果に影響ありますかね? リアルに、もし順番がもっと後だったら今より順位上がっていたと思いますか? 

神田:そこは大きいと思うよ。やっぱり1番手って、そのラウンドの基準になりがちで。相当カマさないと、それ以降で盛り上がっても「1番手がよかったね」って記憶に残るのは難しい。「勝負は時の運」って言うけど、それにしてもKOSÉ 8ROCKSはクジ運に翻弄されているところがあるなって。そのときどきの審査員の並び、時間、タイミング、そしてショーの内容、それらの歯車がなかなか合致しないなってもどかしく思ってる。

ISSEI:クジ運はなんとかなるものなんですかね。実は、昔からクジ運悪くて……。

神田:日ごろの行いでは?(笑)

ISSEI:えー! 俺、無意識に何か悪いことしてるのかな~。

神田:最近ではもう逆に楽しみになっちゃってるからね。「KOSÉ 8ROCKS、今回は何番目?」って、まず聞くんですよ。「え、また最初のほうかよ!」って(笑)。EXILE HIROさんもKOSÉ 8ROCKSのことは、「なんだ、このチームはとんでもねぇな!」って注目しているんですけど、「なんでいつもこの番手なんだよ!」とツッコミを入れているくらい。もはやダンスと同じくらいクジ引きの練習もしたら? (笑)

ISSEI:あはは。そうですね。これは早急にやらないと! 

1年目ならではの手探り感と2年目への期待

ーーISSEIさんがディレクターとして注目している他チームはありますか? 

神田:ISSEIの場合は出ているから、ほとんど本番では見れていないでしょ? 後で見ているの?

ISSEI:はい。リアルタイムで見るのは難しいので、映像でチェックしています。どのチームもヤバいですけど、やっぱりブレイキンをしているチームは気になってしまいますね。負けたくないというか。

神田:じゃぁ、CyberAgent LegitとFULLCAST RAISERZは特にチェックしたくなるんだ?

ISSEI:そうですね。やっぱり意識しちゃいます。「ここでこういうスキルうらやましい」って刺激を受けたり、「もっとここをこう見せてほしい」なんて期待したり。チームメンバーとも「あのチームのカメラの使い方すごいよね」とか「ここのチームを見てこれを思った」みたいなことを言い合って、自分たちの学びにしています。僕はKOSÉ 8ROCKSのディレクターと選手を兼務しているせいか、チームに学校みたいな雰囲気を感じているんですよ。みんなで喋っている感じは休み時間っぽいし、体はキツくても行けば楽しいみたいな。

神田:マッスルを使ってるからかな(笑)。今シーズンが始まる前、12個のショーをある程度「こういう感じ」って作ってはいたの?

ISSEI:いえ、なんとなくのテーマだけでしたね。

神田:なるほどね。そこもみんな今シーズンは手探りっていう感じだったよね。最初から12個作って挑んだチームもいれば、その都度作り上げていくチームもいて。来シーズンはきっとまた各チームの雰囲気や戦い方も変わってくるんだろうな。

ISSEI:そうですね。個人的に、このシーズンでいろんなことを意識するようになりました。先ほども言いましたが、以前のダンスバトルでは1回でカマすことをメインに考えていましたし、ダンサーにしかわからない見せ方しかしていなかったんですが、『D.LEAGUE』はもっと多くの人が継続して見てくれる。しかも生ではなく映像でも見られているので、今までの見せ方や演出の感覚をより工夫する必要があったと思っていて。今でもそこは難しく感じていますし、来シーズンに向けてさらに頑張っていきたいところです。

神田:今まで作ってきたショーの中で「これは高得点いっただろ!」っていう手応えと、実際の審査点数にギャップが大きかったものはある?

ISSEI:いや、それを言ったら全部そうですよ(笑)。「もっと高い点数行くはずだったのに」と思ってやっています。でも、サーカスがテーマのショーケースは、もっと行くんじゃないかって思っていたので「キーッ!」ってなりました。

神田:俺は、オレンジとブルーの衣装のときのやつ。あれが一番好きで「これは!」って思ったんだけどな(笑)。

ISSEI:自分も思いましたよ。あと、和装の時も好きだったんですけど。これも……うーん。

神田:和装のときは、EXILE HIROさんが「これは行ったでしょ!」ってなってたな(笑)。でも、順番が2番手か3番手で、結局早かったからな。

ISSEI:「行った!」と思ったら、行ってなかった(笑)。

神田:きっと全チームそう思っているんだろうな。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる