リーガルリリーが作り出す、轟音と浮遊感が交差する独特な音空間 『the World Tour』EX THEATER ROPPONGI公演レポ

リーガルリリー『the World Tour』東京公演レポ

 4月7日にリリースしたEP『the World』を携えて全国を回ってきたリーガルリリーの全国ツアー、その名も『the World Tour』。緊急事態宣言を受けて大阪・梅田CLUB QUATTROでの公演は延期となってしまったが、6月9日に行われた東京・EX THEATER ROPPONGI公演が実質上のツアーファイナルである。全国ツアーはコロナ禍の影響もあって約2年ぶり、久しぶりに観るリーガルリリーのライブは、EXシアターの特徴的な空間とも相まって惹き込まれるような魅力を放っていた。

たかはしほのか

 「ベッドタウン」での夢の世界へ誘うようなオープニングから、アッパーな8ビートに乗せて3ピースサウンドがダイナミックに解き放たれる「GOLD TRAIN」、そして力強く気持ちのいいグルーヴが生み出された「the tokyo tower」。さらに「トランジスタラジオ」ではジャキジャキと刻まれるコードと大振りのリズム、そしてたかはしほのか(Vo/Gt)のハイトーンが空気を震わせる。この序盤は昨年12月のライブ『「1997の日」〜私は私の世界の実験台〜』と同様の構成だが、EX THEATERならではの天井の高い空間を埋め尽くすように鳴らされる轟音と、その轟音を中和するように響くたかはしの歌は、格別の広がりをもって響く。他のバンドとはまったく違うリーガルリリーのメカニズムがとても解像度高く伝わってくるのだ。ゆきやま(Dr)が叩くずっしりとボディのあるビート、海(Ba)が全身を躍動させながら弾くベースライン、そしてたかはしの浮遊するようなボーカルと、行き来する感情を捕まえて表現するようなエモーショナルで大胆なギタープレイ。リーガルリリーのライブのフロアはどちらかといえばいつも静かだが、今日は特に、息を呑むような雰囲気が漂っているように感じる。

リーガルリリー

 そんな感じで始まったライブ、前半のハイライトはMCを挟んでの「1997」から『the World』収録の「東京」への流れだった。ゆきやまが体全部を使って生み出すリズムにたかはしのギターが乱反射するような「1997」から、そのままノイジーな音をつないで突入した「東京」。3人がそれぞれバラバラな音をさまざまな方向に放射しながら、それがぎゅーっと集まってひとつの方向を向いていくようなドラマティックな展開に、改めてリーガルリリーというバンドの自由奔放さと、絶妙にシンクロする3人の関係性が見える。そして、そこにさらに重ねられるのが、リーガルリリーの原点にして代表曲「リッケンバッカー」なのだ。初期衝動そのものみたいなこの曲のピュアなポップさがいっそう眩しく伝わってくる。

 EPから1曲やります、というたかはしの一言から「天国」。僕はこのライブを2階席のバルコニーから観ていたのだが、大きなステージにポツンポツンと立っている3人の姿がとてもよかった。速いテンポで疾走するこの曲を演奏する中でも、3人の距離感は付かず離れず、一定のスタンスを保っているような感じがしたのだ。半身を客席側に向けて相対しているギターボーカルとドラムス、その真ん中で両方を見ながら音と戯れるように躍動するベース。3ピースではよくある配置といえばそうだが、その、背中を向けるわけでも真正面で向き合うでもないその感じが、とてもリーガルリリーだなと思ったのである。たかはしの書く歌詞もそう。決して100%はリスナーに伝えず、かといって煙に巻いているわけでもない。すべてがどこか淡々としていて、でもそこには確かな熱がある。

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