リーガルリリーが作り出す、轟音と浮遊感が交差する独特な音空間 『the World Tour』EX THEATER ROPPONGI公演レポ

リーガルリリー『the World Tour』東京公演レポ

ゆきやま

 「改めましてこんばんは、リーガルリリーです」。10曲目「まわるよ」を終えたたかはしが話し始める。「いろんな場所を回ってきたんですけど、やっぱり東京っていいな。人が多くて嫌になるときもあるんですけど、いいですね」。海が「思う存分楽しんで。楽しんだもん勝ちなので」と言うとたかはしが「じゃあ、負けは何ですか?」と切り返したり、独特の間合いとテンションで進んだMC(まとまったMCとしてはこれがこの日唯一だった)を経て、いよいよライブも後半。「ぶらんこ」「スターノイズ」とちょっと懐かしい曲が続き、再びEPからの「地獄」へ。〈僕が本当に欲しいのは この世界と生きること〉と歌うこの曲のドシャメシャなアレンジもギターリフみたいな歌メロも僕は大好きなのだが、ライブで聴くとその音像の鋭さがいっそう際立っていた。

 そこから披露されたのが、EPにも収録されていたSEKAI NO OWARI「天使と悪魔」のカバーである。音源同様の「地獄」からの流れも素晴らしかったが、とにかくこの曲のエモーショナルな響きに泣きそうになってしまった。オリジナルもいいが、シンプルなバンドアンサンブルとたかはしの独特な歌声によって、この曲に込められた勇気のようなものがますますはっきりと見えてくるようだ。カバーをしたのはメンバーが大好きな曲だからということだが、歌詞のテーマも曲調も、こうしてカバーされるのを待っていたのではないかと思うほどにハマっている。そして「ハナヒカリ」。この曲もまた異なる正義の衝突を描いた曲で、こうして並んでいると、ますますたかはしが曲を通して描きたい世界がビビッドに伝わってくる。

 最後は「高速道路」と「蛍狩り」。ゆったりとしたテンポの2曲で優しく客席すべてを包み込むようにして本編を終わらせると、アンコールでは「はしるこども」を披露。ほとんどパンクと言っていい激しさとエモーションをもったこの曲をまっすぐに届け、久しぶりの東京ワンマンは幕を下ろした。

■小川智宏
元『ROCKIN’ON JAPAN』副編集長。現在はキュレーションアプリ「antenna*」編集長を務めるかたわら、音楽ライターとして雑誌・webメディアなどで幅広く執筆。

■ライブ情報
“東京” リーガルリリー『the World Tour』追加公演&『海の日』3rd Anniversary
2021年7月5日(月)恵比寿LIQUIDROOM
開場18:00/開演19:00
Ticket:前売 ¥4,500(D別)
各種プレイガイドにて販売中
イープラス(e+)、チケットぴあ、ローソン

リーガルリリー公式サイト

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる