RIEHATA×神田勘太朗『D.LEAGUE』対談 プロリーグとして提示する、新たなダンスの楽しみ方

RIEHATA×神田勘太朗対談

RIEHATAの仕掛ける伏線が効いてくる後半戦に期待

神田:そういう意味でも、RIEHATAがシーズン開幕前に12作品を作っていたのは、明らかに違う動きだったと感心したところですね。12個先に作ってくるチームが出るなんて、予想もしていなかったから。

RIEHATA:そんなバカはたぶんいないだろうなと思ったので、あえてやりました(笑)。普通だったら「後半戦でこういうサプライズをしよう」とか「この隠し玉を仕込んで」みたいな感じで戦っていくんだと思うんですけど、私はあえて「全12試合こうやって戦いますよ」と先に出してしまうことで、余裕を見せたかったんですよね。それに、先に見せられたら否が応でも「RIEHATAは次これをやるから」って他のチームは意識せずにはいられないんじゃないかと思って。

ーーそれは心理戦ですね。

RIEHATA:ふふふ。開幕前は今よりも他の仕事で忙しい時期でしたけど、滝のようにアイデアが溢れ出るっていうのがRIEHATAの武器なので。そこでレベルの差を見せつけたいなと思って。最初に作ったのは、私と主役になるDリーガーと2人で踊るバージョンなので、そこから8人バージョンを作るという意味では、実質24作品を作ることになっているんですけど(笑)、いきなり8人が12試合出ても、一人ひとりにスポットライトが当たるのって限られている。だから、まずは2人バージョンで「RIEHATAと踊ってるあの人」という名前の覚え方をしてもらいたいなという願いもあったんですよ。振りを作って、自分でも踊って、カメラディレクションもして、衣装も、実は歌もやっていて(笑)。開幕は本当に大変でしたけど、その分いまはめちゃくちゃ楽しんでます!

神田:ROYALBRATSがチームとして長けているなと思うのが「目的」に対する考え方なんですよね。当然、どのチームも「優勝したい」というのはありますが、その前に「一人ひとりの人気を高めたい」という点にフォーカスしている点がROYALBRATSはブレない。Dリーガーの認知度、毎回のファボ率を見てもROYALBRATSのメンバーの誰かしらがいるんですよ。

RIEHATA:審査員の票が最下位だったとしても、ファボが1位っていう面白い結果になってますよね。普通に闘うのはつまらないし、私もエンターテイナーとして面白いことをしたいなと思っていたので、これは作戦通りです(笑)。

神田:毎ラウンドで着実にファンは増えてきているので、今後これがボディブローのように効いてくると思うんですよ。毎回の勝ち負けに一喜一憂するだけではない、伏線ができている。それがいつ爆発するのか。エンタテインメントとして、最高に面白いところですよね。

「本能」×「技術」の両側面から沸くダンスを!

ーー「ダンスを見るのは好きだけど、どうジャッジしていいのかわからない」という視聴者も少なくないと思いますが、オーディエンスポイントは好みで入れていいものなのでしょうか?

神田:ダンスの採点は「いい」と思う本能の中でつけていいと思っています。例えば、フィギュアスケートにはトリプルアクセルが何ポイントみたいな点数制度がありますよね。でも僕は、逆にあれが納得できなくて。というのも、同じトリプルアクセルでも人によって全然違うものじゃないですか。「じゃあ、好き嫌いで投票したら人気のあるチームの組織票が……」みたいな声もありますが、そうともならないと思っているんですよ。例えばRIEHATAのファンで、どんなパフォーマンスだとしても絶対に「RIEHATAに入れる!」と決めている人がいたとしても、やっぱり本当に心を動かされるダンスを見たときに、そのジャッジに嘘はつけない。そんな本能の部分をオーディエンスポイントに期待しているんです。それはアートを見たり、音楽を聴くのとなんら変わりはない。

RIEHATA:もちろん、センスや感性みたいなアートの部分に加えて、アスリート並みに技術をつける努力が求められるのもダンスの魅力。なので、審査員には難易度の高い回転の美しさや、足の上がり具合、全員の動きが揃っているのか……プロが見てわかるところを厳しくジャッジしてもらうのも大切ですけどね。

神田:うん。でもときどき、プロから見たら「ヤバい!」となっていても、オーディエンスには全く伝わらないということもあるし、逆にオーディエンスにめちゃくちゃ人気で「なんでこんなに心を掴むんだ?」とプロが必死に分析するパターンもあるじゃないですか。本当は「みんなそれぞれ好き」でいいんですけど、こうしてプロリーグをするために、あえてルールを決めているという点ではやっぱり議論がつきものですよね。でも、そこも含めてダンス業界が盛り上がったら嬉しいなと。

RIEHATA:だからROYALBRATSでは、ダンスを全く知らない人が見ても「すごい!」と思えて、プロの審査員の方も「技術が高い!」と認めたくなる、両視点から沸くような作品を目指しているんですよ。私、9歳と7歳の息子がいるんですけど、ダンスの振りを彼らに見せるんですね。もちろん本番も観ているんですけど、その視点が面白くて。優勝できなかった4試合目のときに、「マミー、モノを使わないからだよ!」と言われたんです。振り返ってみれば2試合目はイス、3試合目は鏡と小道具を使っていて、それが見ていて楽しかったと。その時は「ふーん、そういうものかな」なんて思っていたんですが、その後に優勝したチームがみんな小道具を使っているのに気づいて! 体を動かしながらモノを操作しているすごさは、本能に訴えかけるものがあるんだなって。これ話しちゃうと戦略バレしちゃいますけど(笑)。でもこういう発見はどんどん発信していったほうがいいと思っていて。「みんながモノを使うなら」ってまた新しい発見につながっていくかもしれませんし。

神田:EXILE HIROさんも「子どもがハマるものって必ず本能に訴える何かがあるんだ」って言ってましたよ。だから「アンパンマンはやっぱりやべぇ!」って(笑)。誰がアンパンマンの魅力を説明するわけでもなく、みんなハマっていくと。技術面については見れば見るほどリテラシーは上がっていくので、やっぱり根本にある「なんか気になる」「とにかくヤバい」からで全然OKだと思うんですよ。それがダンスの楽しみ方。今だってディレクター同士も「うちもヤバいけど、そっちもヤバいね」って言い合ってると思うんですよ。

RIEHATA:ずっと言ってます(笑)。勝敗を競い合うライバルではありますけど、みんなダンスが大好きで、この『D.LEAGUE』を通じて、日本のダンスがすごいことを発信していきたいという想いは共通していますから。私は10年以上あまり日本にいなかったのもあって、今こうして日本のダンスと向き合うチャンスに恵まれたことを、すごく幸せに思っているんです。このスピード感で開催している『D.LEAGUE』は、本当に日本人の生真面目さがあってこそ。みんな1つのコンセプトに対して説明できるじゃないですか。適当に作っているんじゃなくて。そんなふうにストイックに作られたものを「たった2週間で覚えてきて本当にすごいよ」って、他のチームに対しても感動して毎回泣きそうになっちゃう(笑)。本当はもっと歓声を上げて応援したいんですけど、今はそれができないのも悔しいですね。

神田:この無歓声の中で踊り抜いているDリーガーって、実はめちゃくちゃメンタル鍛えられてると思うんですけど。

RIEHATA:本当にそうですよね。絶対キツいと思うんですよ。「これ、伝わってる?」って不安になると思う。

神田:僕がダンサーの時もそうでしたけど、振りを作るときって「“ダンダンダンダン!”ってやって、まずここで1回フロアが沸く!」っていう感じで作りますからね。

RIEHATA:そうそう、沸く前提で作るんですよ。でも、今は沸かないんです。全力疾走でマラソンするみたいな体力の削ぎ方をする中で、あの歓声があるからテンション上げて後半のダンスを踊りきれるところもあるのに。今はひらすら自分との戦いみたいなダンスをしている。

神田:これはダンサーたちにとっても、初めて経験する世界ですよね。

RIEHATA:そこを「沸いている」って信じてやっているんですよ、彼らは! 今はもう沸いたかのような表情で踊っていますからね。これが歓声OKになった日には、泣いちゃうんじゃないかな。

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