流線形/一十三十一が堀込泰行やシンリズム、KASHIFとライブで表現したもっとも良質なシティポップ

流線形/一十三十一、ビルボードライブ東京レポ

 “流線形/一十三十一”が4月15日、ビルボードライブ東京でワンマンライブを開催した。

 クニモンド瀧口が主宰するユニット・流線形、そして、アルバム『CITY DIVE』(2012年)によってシティポップのムーブメントを加速させた一十三十一は昨年11月、“流線形/一十三十一”名義でアルバム『Talio』(NHK総合ドラマ10『タリオ 復讐代行の2人』のオリジナルサウンドトラック)を発表。「俺たちは天使だ!」「探偵物語」など70年代ドラマの音楽にも通じるジャズファンク系の楽曲を流線形、現代的なトラックメイクを施したナンバーを一十三十一が担当した。

 今回のライブには、流線形、一十三十一のほか、アルバム『Talio』に参加した堀込泰行、シンリズム、KASHIFが参加。2021年における、もっとも良質なシティポップを表現してみせた。

 開演前のSEは岡沢章「朝の都会には乾いた花がよく似合う」。叙情的なソウルナンバーが流れるなか、クニモンド瀧口をはじめとする流線形のメンバーが登場し、まずはアルバム『Talio』から「予告編」「モンキービジネス」「哀愁のタリオ」を続けて演奏。洒脱でいぶし銀のジャズファンクが会場を包み込む。クニモンド瀧口のMCによれば、流線形のステージはじつに8年ぶりということだが、ホーンを加えて披露された「復讐と冷静の間で」「シボレー67」などのインストナンバーにおける豊かなインタープレイを含んだ演奏は、まさに絶品だ。

 ここでもう一人の主役、一十三十一が呼び込まれ、やはりアルバム『Talio』から「恋愛小説」。軽快なスキャットとともに心地よいグルーヴが広がっていく。ライブ前半のハイライトは、「DIVE」。一十三十一の名盤『CITY DIVE』に収められたこの曲は、一十三十一、クニモンド瀧口の共作。洗練されたコード構成、ソウル、ファンクが混ざり合うアンサンブル、切なさと可憐さをたたえたボーカルがひとつになったこの曲は、2010年代のシティポップを象徴する楽曲と言っていい。

 アルバム『Talio』にも参加したKASHIFが(一十三十一いわく「AORな出で立ちで」)登場し、「蜃・気・楼」と新たに歌詞が付けられた「真実のテーマ〜City Light〜」を披露。さらに堀込泰行、シンリズムが呼び込まれ、「金曜日のヴィーナス feat.堀込泰行」へ。日本の良質ポップスを担い続ける堀込(新作『FRUITFUL』も素晴らしい!)、2015年の1stアルバム『NEW RHYTHM』によってシュアな耳を持つ音楽ファンを掴んだシンリズムのコラボレーションが実現した、きわめて貴重なシーンだったと思う。この楽曲のストリングス、ホーンのアレンジはシンリズムが担当。堀込がアレンジの良さに言及、シンリズムが「流線形、堀込さん、一十三十一さんは昔から聴いてた方々なので、(アルバムに参加できて)テンション上がりました」というやり取りも印象的だった。

 心地よい高揚感をたたえたインスト曲「タリオのテーマ」によってライブは終盤へ。「この季節にピッタリじゃないかなと」(クニモンド瀧口)と紹介されたのは、流線形の2ndアルバム『TOKYO SNIPER』(2006年)の収録曲「スプリング・レイン」。ブラックミュージックのエッセンスを抽出し、淡く、美しいメロディとともに春の終わりの情景を映し出す楽曲だ。官能性と危うさが溶け合うボーカル、しなやかで奥深いバンドグルーヴは、優れたポップスだけが持ち得る陶酔感に溢れていた。

 本編ラストはドラマ『タリオ復讐代行の2人』のエンディング主題歌「悲しいくらいダイヤモンド」。クラシカルな弦の響き、〈青い渚の カブリオレで 飛び去る二人は〉というフレーズでドライヴしはじめるサウンド、伸びやかでフェミニンな歌声、切なさを誘うサックス。豊かな解放感が会場に広がり、会場に足を運んだ観客からも大きな拍手が巻き起こった。

 アンコールは、ローズピアノのソロ演奏による「魚座の最後の日」から。流線形、一十三十一、堀込、シンリズムがステージに揃い、披露されたのは「エイリアンズ」。ボーカル3人が声を合わせるサビのパートは、今回のライブのもっとも大きなハイライトだった。

 一十三十一と堀込のデュエット曲「嘘つき手品」でライブはエンディング。シティポップをテーマに制作された『Talio』を中心に、ポップミュージックの豊かさ、奥深さ、軽やかさをたっぷりと実感できるステージだった。

 また5月1日に予定されていたビルボードライブ東京での追加公演は、延期となってしまったが、7月11日の公演でぜひ生で体感してほしい。

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一十三十一 オフィシャルサイト
クニモンド瀧口 Twitter

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