流線形/一十三十一が語る、劇伴制作で改めて触れたシティポップの魅力 「“ここじゃないどこか”に連れていってくれる」

流線形/一十三十一が語る、劇伴制作で改めて触れたシティポップの魅力 「“ここじゃないどこか”に連れていってくれる」

 流線形/一十三十一による新作『Talio』は、NHK総合ドラマ10『タリオ 復讐代行の2人』のオリジナルサウンドトラック。『探偵物語』『俺たちは天使だ!』『プロハンター』などの劇伴を想起させるフュージョン、ジャズファンク系の楽曲は流線形(クニモンド瀧口のソロプロジェクト)によるもの。さらに一十三十一とKASHIFが手がけたトラックメイク的な楽曲が加わり、“2020年型のシティポップ”を体現している。

 10年代のシティポップのムーブメントを牽引した一十三十一の名盤『CITY DIVE』(2012年)でも共作した一十三十一、クニモンド瀧口の二人に『Talio』の制作、シティポップに対する捉え方などについて聞いた。(森朋之)

今の時代にバンドサウンドで劇伴を作る(クニモンド瀧口) 

ーー“流線形/一十三十一”名義による新作『Talio』は、NHK総合ドラマ10『タリオ 復讐代行の2人』のオリジナルサウンドトラック。どういう経緯で、お二人が制作することになったんですか?

一十三十一:ドラマの音楽プロデューサーの岩崎太整くんは以前から友人で、「劇伴とか興味ある?」ってある日、連絡をもらって。『タリオ』は元弁護士(浜辺美波が演じる白沢真実)と詐欺師(岡田将生が演じる黒岩賢介)の復讐劇で、『トリック』のチームが制作しているドラマなんですが、太整くんから「シリアスな内容もスタイリッシュに描くドラマだから、劇伴はシティポップにしたい」という話があって。私としては「お茶の間のど真ん中にシティポをぶっこむんだったら、クニモンド瀧口さんが解りやすいのでは」と思って、すぐに連絡したんです。この日、ドラマのメインビジュアルを永井博さんにお願いすることも決め、そこから音楽の制作が始まって。

クニモンド瀧口:“クニモンド瀧口”としてではなく、流線形にお願いしたいという話だったんですよ。一十三ちゃんが普段やっているトラックメイカーのKASHIFやDORIANとは違って、流線形でやるとバンドサウンドになる。「大野雄二さん風になると思うけど、大丈夫かな?」と確認して、その方向でやらせてもらいました。結果、“まんま”になっちゃいましたけど(笑)。

ーー大野雄二さん的なアプローチを含め、70年代後半から80年代あたりの刑事モノ、探偵モノの雰囲気があるサウンドですよね。

クニモンド瀧口:そうですね。ジャズファンク、フュージョンに近いサウンドというか。最近のドラマや映画の劇伴は、管弦や打ち込みがメインだったり、作曲家が一人でやっている作品が多い印象があって。僕らの世代の井上堯之さん、クリエイション、SHOGUNなどが音楽を作っていたドラマを見て育っているし、今の時代にバンドサウンドで劇伴を作らせてもらえたのは、ありがたかったですね。

一十三十一:制作の進行もすごく早くて。私が他の作品の制作で立て込んでいる間に、クニモンドさんが15曲くらいすでに作り始めていて。あとは劇伴のメニュー表に当てはめて、足りないものを私が作って。「黒岩のテーマ」をクニモンドさんがムーディーに作ってくれたので、私は「真実のテーマ」をポップ目に作ったり。

クニモンド瀧口:僕も楽しかったですね、自由にやらせてもらって。『探偵物語』も『俺たちは天使だ!』も観ていたし、「こんな感じだよね」ってどんどん曲が出来て、メンバーとセッションしながら録って。だからたくさん作っちゃったんですよね(笑)。

ーーもちろん、ドラマの世界観やストーリーに沿いながらの制作だったんですよね?

一十三十一:そうですね。脚本を読み込んで、それに合った曲をイメージして。もっとシリアスな内容かと思ってたんですが、割とコミカルだったのが意外で、安心しました(笑)。

クニモンド瀧口:僕が作った曲は渋めのものが多かったんですけど、コミカルやハートフルな部分は一十三ちゃんが担ってくれて。上手く中和できたし、結果オーライだったのかな(笑)。

一十三十一:私とKASHIFくんが作った曲は打ち込みのサウンドが中心で。『CITY DIVE』もそういう(バンドサウンドと打ち込みの)バランスで成り立ってたんですよね。

ーーなるほど。一十三十一さんが歌うエンディング主題歌「悲しいくらいダイヤモンド」も、まさにシティポップ直系のナンバーです。

クニモンド瀧口:これは一十三ちゃんのアイデアですね。僕は最初、チャカ・カーンの「Papillon」みたいなイメージで曲を作ってたんですよ。でも、一十三ちゃんから「「恋のブギ・ウギ・トレイン」(山下達郎)みたいなアッパーな曲がいいです」と連絡が来て。

一十三十一:最初にクニモンドさんが作ってくれた曲はどちらかというとクールでチルな感じで。それも渋めでカッコ良かったんですけど、エンディングは敢えて熱量のある、エモい曲がいいなと思い直し、「もう一度トライしてほしい!」とお願いして。歌詞はドラマに合わせつつ、堀込さんに描いたオープニングと対照的なイメージになることを意識しつつ、かつ、余白も大切にしながら書きました。

クニモンド瀧口:永井さんのビジュアルのイメージも反映されてるよね。

ーー海外のリゾート的なイメージもあって。「悲しいくらいダイヤモンド」もそうですが、シンリズムさんのホーン、ストリングスのアレンジも素晴らしいですね。

クニモンド瀧口:シンくんはもともと友人で。夏前にリリースした新作(3曲入りデジタルシングル『NOVO RITMO』)のホーンとストリングのアレンジが良かったんです。CTIレコードのクラウス・オガーマンとか、加藤和彦さんの「Today」における坂本龍一さんの演奏のような印象があって、すごくソフィスティケイトされてたんですよ。「これを自分でやったのはすごいな」と思ったし、何かあったらお願いしたいと伝えていて。今回の劇伴の話をもらって、すぐにシンくんに頼もうと思いました。

ーーオープニングテーマ「金曜日のヴィーナス feat.堀込泰行」については?

一十三十一:エンディングを私が歌うなら、オープニングは男性に歌ってもらいたくて。最初から泰行さんがぴったりなんじゃないかと思ってました。

クニモンド瀧口:楽曲のイメージは“運が悪けりゃ死ぬだけさ”(ドラマ『俺たちは天使だ!』主題歌「男達のメロディー」SHOGUN)ですね。この曲もシン君にホーンとストリングスのアレンジをやってもらったんですけど、提示されたアレンジを聴いて「わかってるな」って(笑)。

ーーさらに一十三さんが歌う挿入歌「蜃・気・楼」、一十三さん、堀込さんのデュエット曲「嘘つき手品 feat.堀込泰行」も収録。

一十三十一:「蜃・気・楼」はダンスミュージック、やっぱり踊れる曲も作りたくて。私のメロディを、KASHIF君にアレンジしてもらって。ミステリアスな雰囲気も盛り込みつつ。デュエット曲は、せっかくだから泰行さんと歌いたくて(笑)。

クニモンド瀧口:「黒岩のテーマ」のメロディを活かして、歌モノにした曲ですね。一十三ちゃんはスモーキー、堀込さんは中性的な声質なので、「ユニゾンで歌うAメロはどうなるんだろう?」と思ってたんですけど、結果、二人の個性がしっかり出た曲になりましたね。

一十三十一:正反対の声質と思ってたんですけど、クニモンドさんから「意外と近いところもあるよ」と思いのほか言われて。ミックスは大変でしたけど(笑)、絶妙なバランスになったと思います。

ーー初めて劇伴を制作したことで、アーティストとして新たな気づきもあったのでは?

一十三十一

一十三十一:本物の劇伴は初めてだったんですけど、自分のアルバムも映画のサントラを作るような感覚でやってたんですよね。『CITY DIVE』の後の2作(『Surfbank Social Club』『Snowbank Social Club』)はホイチョイ三部作をモチーフにしてたし、『THE MEMORY HOTEL』も実際に脚本を用意して、シーンに合わせて曲を作って。思えば、自分のアルバムで(劇伴制作の)練習をしていたというか。どういう感じで映像と混ざるのか楽しみです。最初に観るのはオンエアの時なんですけどね(笑)。

クニモンド瀧口:僕はさっきも言ったように楽しくやらせてもらったんですが、ずっと音楽プロデューサーの岩崎さんに「大丈夫ですか?」って聞いてました。サウンドが古いので、今のドラマに合うのか心配で。

ーー古いというか、オーソドックスな劇伴ですよね。

一十三十一:そういう音楽が劇伴になってるドラマで、今をときめく浜辺さんと岡田さんが演じられているのがいいですよね。

クニモンド瀧口:話題性はあると思います。流線形はあまり活動してないですけど(笑)、一十三ちゃんがさらに知られるようになったらいいな、と。

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