“新アイドル”誕生の歴史
ももいろクローバーZの歴史を紐解く 第5回:有安杏果卒業、ももクロの決意
大人のももクロを印象づけた作品『MOMOIRO CLOVER Z』
先々までスケジュールが組み込まれていく状況のなか、この時期は、4人があらためて自分の生き方と対峙するタイミングだったかもしれない。現に有安卒業の頃の4人のインタビューは、雑誌、WEBでも「ももクロの決意」という内容が多かった。 2019年1月発売の雑誌『OVERTURE No.017』に掲載された前年末のインタビューでは、玉井が「今年やり残したことがあれば、来年やればいい」と語った。一方、同年4月発売の雑誌『BUBKA ももいろクローバーZ“4人の決断SP”』で百田は、「このままグループを続けていっていいのか」と自問自答したことを明かし、「いままでのような感じで決めちゃダメなんだろうなって。ここは一度、自分と思いっきり向き合って“自分はどうしたいのか”、“なんで迷ってるのか”ってことを真剣に考えなくちゃいけないよなって思って」と話している。
さまざまな考えがうずまくなか、2019年5月17日にリリースされた4人体制初のアルバムは、ズバリ『MOMOIRO CLOVER Z』である。収録曲の「The Diamond Four」はサウンド、ミュージックビデオともに大人の格好良さが漂った。「レディ・メイ」はブルース調の楽曲で、音楽的にこれまでにないカラーリングだ。トータルして聴くと、デビューから11年目を迎えたももクロのあきらかな成長が綴られた作品だった。
その象徴的な曲が「Sweet Wanderer」。ミュージックビデオでは玉井が車を運転し、助手席の百田に「夏菜子、会社忙しいの? あまりひとりで背負いすぎちゃダメだよ」と声をかける。ももクロの4人が大人になったことを表現したシチュエーションだった。2019年7月発刊の雑誌『MUSIC MAGAZINE』で佐々木が、「仕事や恋愛につまづいたりした大人の女の子にぜひ聴いてもらえたらと思いました。こんな寄り添い方をする歌はいままでなかったですね」と言うほど、同曲はももクロの新境地である。少女たちは着実に大人になっていたのだ。
■田辺ユウキ
大阪を拠点に、情報誌&サイト編集者を経て2010年にライターとして独立。映画・映像評論を中心にテレビ、アイドル、書籍、スポーツなど地上から地下まで広く考察。バンタン大阪校の映像論講師も担当。Twitter(@tanabe_yuuki)
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