ぜったくん「Midnight Call feat kojikoji Tomggg remix」で発見 原曲とリミックスがもたらす新たな音楽の楽しみ方
独自のラップセンスが話題の町田のラッパー/プロデューサー、ぜったくん。昨年リリースした「Midnight Call feat.kojikoji」がサブスクシーンで注目されている次世代クリエイターだ。
「Midnight Call」は、浮遊感あるメロウでキュートな歌声が魅力のシンガーソングライターkojikojiをフィーチャリングに迎え、近いようで遠い、“リモート・ラブ”をテーマに描いたゆるふわなラブソング。昨今の情勢ともリンクした緊急事態宣言で外出が憚れるなか、寄り添うように優しくスムース&メロウ&ドリーミンな雰囲気で包み込んでくれる。まさに、誰もが思い当たるリアリティある歌詞に聴き惚れ“好きな人に電話したくなる”、“甘酸っぱい気持ちになる”ナンバーなのだ。それこそ人恋しくなる夜、オンラインゲーム(Nintendo Switch)、LINE電話、Zoom飲み会、ラジオ(Clubhouse)など同じ場所にいなくても密な関係を手軽に楽しめる時代。距離感の近さを感じさせる、親しみやすさが本作の魅力といえるだろう。
そんな中、2月5日に独特なKAWAIIサウンドをクリエイトしてきたTomgggをリミキサーに迎えリリースした「Midnight Call feat.kojikoji Tomggg Remix」がとてもいい。原曲の絶妙にレイドバックしたセンスに、フューチャーベースをミドルテンポにしたかのような絶妙なるキラキラ感。これはリミックスというより、楽曲の新たな側面に光をあてたリプロダクションと言える作品なのかもしれない。
そもそもSpotify、Apple Music、LINE MUSIC、YouTube Musicを軸としたストリーミングサービスで爪痕を残すのは大変だ。なんせ、リリースされる楽曲数が多い。スマッシュヒットを出してもすぐに次なる才能が背後へと迫ってくる。拡散力を持つ公式プレイリストの枠の取り合いだ。そんな中アーティストはいい曲を生み出せたら、その楽曲をいかに長きにわたって聴き続けてもらえるか、覚えてもらえるかが大切だ。そんな際、リミックスやリプロダクションの活用はきわめて有効。楽曲タイトルに新たな命を吹き込み、オリジナルも同時に息を吹き返す。
さらに、リミキサーを迎えることでSpotifyのプロフィールページ上で言えば、アーティストとリミキサー両面から楽曲への入り口が増えることにも注目したい。他ジャンルのクリエイターとコラボレーションすることで、より他ジャンルへの切符が増え、多面的に新規プレイリスト入りを狙うこともできるのだ。
そしてユニークなのが、もともと原曲である「Midnight Call」がフューチャーベースからイメージを膨らませた作品だったという事実。BPMを落とすことで、ぜったくんらしさを表現したナンバーだったのだ。よく聴けば確かにシンセポップな音使いが聴こえてくる。そこに、国立音楽大学大学院出身であるエレクトロセンスに長けたTomgggをリミキサーに迎えたことで、原曲の種であったフューチャーベースを取り入れたシンセポップなトラックにアップデートしている。一種のテーマパーク感、ファンタジックなフックが嫌味のない普遍性あるメジャー感を与えてくれているのも面白い。そもそも、ぜったくんはTomgggと同じDTMソフトを使っているなど、以前から接点もあったようだ。
「Midnight Call feat.kojikoji Tomggg remix」からの再発見といえば、あらためて浮き彫りとなるぜったくんとkojikojiによるリスナーの日常に寄り添い、彩りを与える歌声のエモーショナルさ。ファンタジックなサウンドといい意味で気の抜けたメロディが合わさることで生まれるこの感覚は、共感性が大事とされるTikTok界隈での人気、ティーンカルチャーにおけるヒットの重要ポイントといえるかもしれない。