SCREEN modeが語る、『With You』で示した活動の指針 「ポジティブな哲学のあるクリエイティブでなければいけない」

SCREEN modeが語る、活動の指針

 昨年11月にデビュー7周年を迎えたSCREEN modeから、新しい季節の始まりを告げるニューアルバムが届いた。3rdフルアルバム『With You』は、KISHOW(GRANRODEO)、声優・畠中 祐、シンガーソングライター・TRUEを迎えた豪華コラボ曲、雅友の作曲による田村ゆかり「W:Wonder tale」と芹澤優「今夜も月がきれい」のセルフカバー、さらに「One Wish」(『警視庁 特務部 特殊凶悪犯対策室 第七課 -トクナナ-』ED主題歌)、「GIFTED」(『ムヒョとロージーの魔法律相談事務所』第1期OP主題歌)などアニメタイアップ4曲を含む10曲を収録。過去最高にバラエティに富む楽曲の中に、コロナの時代をいかに生きるか? のヒントを詰め込んだ自信作について、雅友と勇-YOU-にリモートで話を聞いてみた。(宮本英夫)

クリエイターとしての哲学があるのかどうかが試された

ーー本題に入る前に。「コロナの時代をアーティストはどう生きるか?」ということについて、今思っていることを聞かせてください。

勇-YOU-:何もかもが変わってきていて、音楽活動の分野もそうですし、声優の仕事の面でも確実に影響が出ている中で、「みんなで録れないなら分割で収録しよう」とか、みなさんで工夫して歩んでいけてるかな? という感じはしますね。僕自身も状況に順応して、YouTubeチャンネルを立ち上げたりとか、いろいろ挑戦できるタイミングなのかな? と思っていて、なるべくポジティブに、地道ではあるけれど歩みを止めない意識は持ててきているかな? というのが率直な感覚です。

ーー変にブルーになったり、そういう時期はなかった?

勇-YOU-:やっぱり家にいる時間がすごく長くなって、ストレスを抱えているというのは否定できないですけど、みんながそうですし、僕だけではないので。自分が発信するもので誰かが楽になったらいいなと思う部分で、YouTubeもやり始めましたし、声優の仲間と力を合わせて「セイユーチューブ」というチャンネルにも参加させていただいたり、みんなが楽しんでもらえる場所を増やしていきたいという方向に、気持ちを持っていけているので。エンタメでやらせていただいてる人間なので、こういう時だからこそ何かやらなきゃいけないと思うし、めげずにいろいろトライしていきたいなと思って、この1年間過ごしてきましたね。

ーー雅友さんは音楽家として、どんな思いでこの1年を過ごしてきましたか。

雅友:去年の1月、2月に「コロナウイルスというものが危ないらしい」ということになって、3月のファンクラブイベントができなくなって、「これは本当にヤバイぞ」ということになって……4月、5月は、配信番組やリモートレコーディングのシステムを整えることにかかりっきりでしたね。一言で「整える」といってもすごく大変で、お金も時間もかかりましたし、スタッフを呼ぶのもはばかられるので、全部一人でやっていたんですよ。毎日スタジオに来て、機材の接続テストをして……そういうことが忙しすぎてほとんど記憶がないです(笑)。でもおかげさまでレコーディングも再開して、配信番組も5月の終わりから再開して今日に至るので、そういう点で僕たちはラッキーだったのかなとは思いますね。

ーー勇-YOU-さんが言われたように、エンタメに携わる人間として、発信することの意識が高まった、という感覚はありますか。

雅友:そうですね。ただ、「コロナウイルスで緊急事態宣言が出ました。じゃあ配信やりましょう」とか、「緩和されました。じゃあライブやりましょう」とか、そういう発想になってしまうとブレやすいんじゃないか? とは思いました。音楽家に限らずすべてのクリエイターが、ウイルスの蔓延状況や政府の政策によって、「次は何をやろう」というふうになってしまうのは違うなと思うし、「これからは配信だ」という意見も散見されましたけど、それはあくまで方法論であって、手段と目的が入れ替わってしまっているなということをすごく感じましたね。だからこそ、クリエイターとしての哲学があるのかどうかが、2020年は試された年だったのかなと僕は感じています。

ーーはい。僕もそう思います。

雅友:この話は前にも別のメディアにしましたけど、少なくとも現状は、以前のように祝祭感のあるリアルライブはできないですよね。たとえば椅子を出さなきゃいけないとか、キャパシティの半分以下とか、そうなった時に……たとえば僕たちは、目黒のBLUES ALLEYというジャズクラブで過去にライブをやりましたけど、そういう場所であればビフォーコロナと同じ祝祭感で、椅子があってもライブができるじゃないですか。そういう、ポジティブな哲学のあるクリエイティブの形でなければいけないと思うんですよね。「国のルールだから、しょうがないから椅子を出します」じゃなくて、やりたいことの延長線上になければ意味がない。その軸がブレたらダメだなと思いますし、何かを無理してやってクオリティを下げることはしたくないので。今はステイホームやソーシャルディスタンスを保つという中で、SCREEN modeの音楽をビフォーコロナに近い形で楽しんでもらえることを、2021年はやりたいと思っています。ちょっと抽象的ですけど。

ーーいえ、すごく伝わります。という前提を踏まえて、3枚目のフルアルバム『With You』について聞かせてください。これはいつ頃から制作を始めていたんですか。

雅友:「アルバムを出そう」という企画を練っている段階でコロナが蔓延してしまったので、「じゃあどうする?」ということを考えた時に……今までのSCREEN modeは「みんなの背中を押す」という曲が多かったんですけど、今はそういう感じではないのかなと。僕らが「頑張れ」と言うだけじゃなく、「みんなで一緒に頑張ろう。この時代を乗り切ろう」みたいな内容にしたいなという気持ちがあったのと、どうしてもこういう時期は「癒し」「優しさ」とか、もしくは「戦う」とか、そういう感じになりがちなんですけど、そうじゃなくて「あったかいもの」をやりたかったんですよ。もちろん「激しさ」もあるんですけど、新曲に関しては「あったかさ」を入れたいなということは意識しました。

ーーまさに、アルバム後半の7、8、9曲目に入っている書き下ろしの新曲は、「あったかさ」がポイントになっていると思います。

雅友:最初に勇-YOU-が出してきたテーマは「俺はコロナと戦う」という熱い内容だったんですけどね。それは谷山紀章さんと歌う1曲目の新曲「ALIVE」に持っていきました。

勇-YOU-:「どのような形になっても負けたくない」という気持ちは自分の中に存在しているので、そういうエッセンスを入れたいと思ったんですよね。でもまさに「みんなで一緒に乗り越えよう」というのが今回のアルバムのテーマなので、それを象徴する曲が1曲目の「ALIVE」なのかな? と感じてます。

ーーこのアルバムの聴きどころポイントその1は「フィーチャリング曲が3曲ある」ことで、特に1曲目「ALIVE」に谷山紀章さん、9曲目「陽だまり」に畠中 祐さんと、勇さんにとっては声優の先輩と後輩を迎えているんですよね。

勇-YOU-:賢プロ三兄弟と呼ばれてます(笑)。それぞれ約10歳違いで、プライべートからめちゃくちゃ仲良くさせてもらっている兄貴と弟みたいな二人なので、「コラボやってくれませんか」と言った時にも快諾してくれました。「ALIVE」は僕と紀章先輩が旗を掲げて先導していくような楽曲で、「陽だまり」は肩を組んで一緒に行こうという楽曲で、「一緒に乗り越えよう」というテーマにもいろんなパターンが作れたので、すごく満足してます。

ーー実際、レコーディングの現場はどんな感じでした?

勇-YOU-:紀章さんとは、ディスカッションはほとんどなかったです。ずっと同じ事務所で、プライベートでも仲良くさせてもらっているし、よくカラオケにも行ったりしているので。でもあらためて歌の収録に立ち会わせていただくと、GRANRODEOのKISHOWとしてその場にいるわけじゃないですか。男性の音楽ユニットとして、アニソン界の第一線で活躍されている憧れの先輩でもあったから、KISHOWさんというボーカリストと一緒に歌えるという喜びや興奮は、その場ですごくありました。だけど歌では負けたくない気持ちがすごくあるので、心に火が付いたというか、その気持ちが歌に乗っかってるから非常に厚みが出たというか、いい楽曲に仕上がったと思いますね。

ーーバトルに聴こえますね。

勇-YOU-:バトルですね(笑)。パートごとにどんどん乗っかっていく、みたいなアプローチなので。一つのセンテンスごとにKISHOW先輩に負けないように、歌を紡いでバトンを渡していくという感じの、すごく面白い感じの楽曲になったなと思います。畠中祐と歌った「陽だまり」は僕が歌詞を書かせてもらっているんですけど、彼は一緒にいるといつの間にか明るくなれるという不思議な魅力を持っていて、僕自身も周りから「陽キャラ」と呼ばれているので、その二人で聴いてあったかくなれるような楽曲を一緒に歌いたいと思ったのが、作詞をするきっかけになったので。まさに「陽だまり」にいるような曲になりましたね。

ーー祐さんとの歌は、バトルではなくて会話のように聴こえました。

勇-YOU-:もともと僕はR&Bやソウルがすごく好きで音楽をやり始めて、祐もR&Bが好きで、ルーツが似てるんですよ。「陽だまり」はJ-POP寄りですけど、R&B要素のある楽曲なので、収録の間にフェイクのやり方の話をしたりして、楽しかったですね。メロディを崩したり、フェイクを入れたり、彼自身が楽しんでくれたことが一番良かったと思います。彼なりに緊張はしていたんでしょうけど、伸び伸び歌ってくれて、それが歌に宿ったんじゃないかなと思います。

――雅友さん。こうして歌でコラボすることで、ボーカリスト・勇-YOU-の価値を再発見する、そういう感覚もあったんじゃないですか。

雅友:アーティスト同士がコラボすることによって、勇-YOU-の中から引き出されるものがあるんじゃないかな? というのは、やる前から予想していましたね。最初にプリプロしたのが「今夜も月がきれい」のTRUEさんで、スタジオに来てもらって、キー設定と歌い分けの打ち合わせをしたんですけど、二人が同じフレーズを合唱するか、もしくかどっちかがコーラスに回るか、それは絶対に避けたかったんですね。僕は世代的にBARBEE BOYSが好きなんですけど、KONTAさんと杏子さんのように「どっちもメイン」というものにしたくて、TRUEさんにはサビの大半はハモリのパートを歌ってもらうことにしたんですけど、第一声を出した瞬間に「うわ、すげえ!」って感じだったんですよ。すごく説得力のある歌で、めちゃ練習してきてくれたんだろうなといううれしさと、本物感すげぇなというシンプルな驚きがあったので、勇-YOU-もそれを聴いて活(かつ)が入ったんじゃないかと思いますね。

勇-YOU-:活、入りましたよ(笑)。最初がTRUEさんで良かったと思います。歌に真摯で、常に向上心を忘れない方なので、一緒に歌っていて熱が入る部分はあったので。最初にエンジンをかけてくれのがTRUEさんで良かったなと思いますね。

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