シングル『One Wish』インタビュー
SCREEN mode、『One Wish』を“1stシングル”と語る真意 「自分たちの意思のもとに作られたという意味ではこれが“1”」
よりシンプルに、よりソウルフルに、より等身大に。11月でデビューから6年が経過し、進化を続けるSCREEN modeから届いたニューシングルは、TVアニメ『警視庁 特務部 特集凶悪犯対策室 第七課-トクナナ-』ED主題歌になった「One Wish」。スクモらしい痛快な疾走感、哀愁を帯びたポップなメロディ、アコースティックギターの多用、勇-YOU-の技巧的ファルセット、雅友がSCREEN modeとしては初めて単独で書いた歌詞など、様々な要素を織り交ぜつつ、あくまで耳に心地よく響くスピードチューン。「これを1stシングルと言ってもいい」という、雅友の言葉に込められた真意とは? 2019年を総括する、二人の本音がほとばしる最新インタビュー。(宮本英夫)
自ら詞を書くことで宿るものがあるんじゃないか
ーー「One Wish」は、久々のタイアップ書き下ろしということで。
雅友:はい。あまり指定もなく、自由にやれましたね。物語が、後半に向けて主人公が背負っているものが明らかになって、けっこう重い話になっていくので、ED主題歌は清らかな感じがいいんじゃないか? と。ダークすぎず、爽やかな感じもあり、浄化されるような曲がいいなと思って、「激しすぎないアップテンポのものを」というところから作り始めました。前のミニアルバム『約束の空』(7月3日リリース)と制作時期が一緒だったので、そのアルバムの中の曲で、「One Wish」より後に録った曲もあります。
ーー勇-YOU-さんの、この曲の第一印象は?
勇-YOU-:『約束の空』で、ファルセットを多用する楽曲は歌っていたんですけど、こういうアップテンポの楽曲は、地声で張り上げることが多かったので。「疾走感ある楽曲の中でファルセットを使うんだ」という、新鮮さはすごく感じました。『約束の空』で試した歌唱を、いい意味でフィードバックできたかな? と実感してます。それが雅友さんの言う「浄化」や「癒し」という狙いと合致しているので、歌いやすかったですね。
ーー雅友さんにとっては、「勇-YOU-のファルセットの魅力をもっと引き出す」というテーマがあった。
雅友:そうですね。せっかく出るようになったんで。最初の頃はどうしても、作家の意識が残っていて、1オクターブぐらいの間で曲を作らなきゃいけないという縛りを自然と自分に課していたというか。勇-YOU-もそこに慣れちゃってた部分があったんですけど、徐々に「それでは良くない」と感じることがあって、少しずつファルセットを増やしていって、『約束の空』ではおよそ2オクターブぐらい出るようになった。その広い音域を使い切る作曲のやり方に、僕もだいぶ慣れてきた部分もあって、徐々に使えるようになってきた。それは、ほかの方への楽曲提供にも影響はありましたね。
ーー『約束の空』の時に話していた、音数を減らしてサウンド全体をクリアに響かせる手法も、さらに継続されていると思います。
雅友:今回はエレキギターを無しにして、アコースティックギター、ピアノ、弦、ドラムと、音を少なくして、ちゃんと奥行きを作ることはかなり意識してやってますね。ドラムを打ち込みにしたのも、奥行きという部分と、浄化されるというイメージ的に、あまりパワフルすぎるのはどうかな? と思ったので。打ち込みのほうが温度感をコントロールしやすいので、この曲はそうしました。
ーー歌詞も雅友さんが書いている。初めてじゃないですか。
雅友:そうですね。元々「太田も書け」と、プロデューサーには言われてたんですよ。でも詞も曲も僕となると、バランス的にどうかな? という思いもあって、勇-YOU-や作詞家さんに書いてもらってきたんですけど。5周年も過ぎて、1曲ぐらいは書いてもいいのかな? というのと、やっぱりそのバンドの主張は、たとえ拙くても、本人が書いた言葉のほうが説得力があるんじゃないか? というふうに思うことがあって。今売れてるバンドを聴くと、本当の等身大から生まれる説得力というものがあるんじゃないか? と感じていて、それで一回書いてみようかなと思ったんですね。これまで共作はあったんですけど、こういう形で出るのは初めてです。過去には、やってたんですけどね。SCREEN modeになる前は。
ーー勇-YOU-さん。雅友リリックはどうですか。
勇-YOU-:時間がない中で、すごい綿密に最初から最後までストーリーが描かれてるなと思って、すごいなと思いました。やっぱり、俺のことも理解してくれてるのが大きいと思います。もちろん、アニメの作品の登場人物の心情に繋がる部分もあるんだろうけど、SCREEN modeも7年目に入って、いろいろ理解してもらってるから、自分自身が歌いたいことも拾ってくれていて、すごくスムーズに歌える。そういう印象は受けましたね。
ーーまさに「Wish=願い、望み」の歌ですよね。「これからも一緒にいたいよ」と歌う、君と僕の希望の物語。
雅友:作品に、仲間との出会いによって、自分の背負っているものを受け入れることができるようになる、というようなテーマもあって。それを自分たちに置き換えるというか、自分たちの目線でそれを言えたらいいなと思ったんですね。でも最初は、僕の人間性なのか、悲劇的な結末になって、受け入れられなくて「もう駄目だ」みたいな、暗い感じになってた。友達にその話をしたら、「夢や希望がない曲は聴きたくないよね」と言われ、まあそうだなと(苦笑)。だから、自分が考えていることとはまた違うんだけど、「こうでありたい」ということを書こうと思って、そういう意味で最初は「Wish」というタイトルにして、「願いとはつまり自分に対するメッセージである」というつもりで書いてたんですけど、できあがってみると、それは勇-YOU-に対するメッセージとも取れるし、ファンに対してのメッセージとも取れるので、タイトルを「One Wish」にしました。元々「Wish」だけだと寂しいから、「ある希望」みたいな意味で「One Wish」にしたんですけど、結果的に「一つの希望」という意味もあるというか、僕の希望でもあり勇-YOU-の希望でもあり、ファンのみんなにとっての「一つの希望」でもあるというふうに、図らずも繋がったんですね。
ーーよく読むと、けっこうネガティブなワードも多いんですよ。〈本当の気持ちに嘘をついた〉とか、〈寂しいなんて素直に言えなかった〉とか。雅友さん、本当はそういう人なんですね。って、決めつけちゃいけないけれど。
雅友:だからそれを、書かないといけないのかな? と思ったんですよ。「そういう人なんですね」って、作家に書いてもらうと、そうはならないじゃないですか。「こいつはこういうことを書くんだ」と周りに思われないと、アーティストは駄目だと思ったので。全曲じゃなくてもいいと思いますけど、アーティストというものは、要所要所で自ら詞を書いて、「この人はこんなふうに思ってるんだな」と思われないと駄目だし、そこに宿るものがあるんじゃないか? と思ってます。だから勇-YOU-にも書いてもらいたいなと、僕は常々しつこく言ってるんですけど。
ーーボールがこっちに来ましたよ。勇-YOU-さん。
勇-YOU-:ね。またあらためて勉強したいです。
ーー前作の「約束の空」という曲は、闘病中のお父様のことを思って書いた歌詞でしたよね。書いたのは松井五郎さんですけど、勇-YOU-さんの原案で。だから、どんどん歌詞が自分に近づいてきてるなという感覚はこちら側にもあって。
勇-YOU-:ああ、そうですね。
雅友:そうそう。だから、その先にあるものが見たいんですね。