雨のパレードが示す『BORDERLESS』以降の新たなバンドの姿 止まらぬクリエイティビティ感じた配信ライブレポート
8月25日、雨のパレードが配信ライブ『ame_no_parade DIGITAL LIVE 2020 “BORDERLESS ver.2.0”』を開催した。新型コロナウイルスの感染拡大はライブを重視するほぼすべてのアーティストにダメージを与えたと言っていいと思うが、雨のパレードにとっては特に影響が大きかったと言える。なぜなら今年1月に発表した『BORDERLESS』というアルバムは、何よりライブという場で鳴らされ、オーディエンスと共有されることを念頭に置いた作品だったからだ。
3人体制の初作となった「Ahead Ahead」、サブスクヒットも記録したサマーアンセム「Summer Time Magic」に続き、蔦谷好位置が参加したアルバムのタイトルトラック「BORDERLESS」は、ビッグなコーラスをフィーチャーした仕上がりで、会場中のオーディエンスの合唱があってこそ完成する一曲。しかし、配信ライブでは残念ながらそれは叶わない。だからこそ、アルバムのリリースツアーである『ame_no_parade TOUR 2020 “BORDERLESS”』が途中で中止になってしまったのは、非常に痛手だった。
しかし、「BORDERLESS」で繰り返される〈We go〉という歌詞の通り、彼らは決して立ち止まってはいなかった。新体制となり、同期を用いることによって、ある種楽器から解放された3人のクリエイティビティは、アルバムの制作以降も加速し続け、「BORDERLESS ver.2.0」というライブのタイトル通り、更新された姿をこの日確かに届けてくれた。
「調子はどう?」と呼びかける「Tokyo」から、2曲目に早くも「Summer Time Magic」という前のめりな形でライブがスタートすると、〈月日はすぐに過ぎて/色んなことに慣れてしまい/何かを失ってる/僕の心〉という歌詞が現状に響く「Walk on」に続いて、「Hallelujah!!」では奇妙なシンセフレーズを山﨑康介が手弾きしていることに驚かされる。
山﨑がギター以外の様々な楽器を演奏することも増えた今、手元まで見える配信ライブという形は、「どうやってこれを3人で鳴らしてるの?」という疑問を解消してくれるという意味で、現在の雨のパレードには似合っているかもしれない。また、メンバーの表情までしっかり見えるのも配信ならではで、「Shoes」では福永浩平と一緒に歌いながらシンセを弾く山﨑に対し、大澤実音穂が終始クールな表情でビートを刻むという対比も面白い。
クワイア風のコーラスが印象的な「Story」に続いては、福永のボコーダーと山﨑のE-bowによるライブアレンジが施された「Gullfoss」。さらに、途中から大澤がグロッケン、山﨑が今回のツアーから導入したオムニコードを奏で始めると、画面はやがてモノクロの世界へ。そこから徐々に明かりが灯って行くと「morning」が始まり、福永の動きには残像の残るエフェクトがかけられるという演出も、やはり配信ならではだ。