Eve×loundraw×タムラコータロー監督『ジョゼと虎と魚たち』鼎談 アニメーションと音楽がもたらすクリエイティブの相乗効果

Eve×loundraw×タムラコータロー監督『ジョゼと虎と魚たち』鼎談 アニメーションと音楽がもたらすクリエイティブの相乗効果

 2020年12月25日に公開となるアニメーション映画『ジョゼと虎と魚たち』の主題歌「蒼のワルツ」と挿入歌「心海」を手がけたEve、コンセプトデザインを担当したイラストレーターのloundraw(FLAT STUDIO)、そしてタムラコータロー監督の鼎談が実現した。

アニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』ロングPV

 これまでのMVでもクリエイターとの共同作業により音楽とアニメーションが深く結びついた作品を発表してきたEve。イラストレーターとしての活躍に加え、ユニット・CHRONICLEを率いて物語と音楽とアートがシンクロした表現を開拓しているloundraw。以下の鼎談でも明かされているが、両者にとって、リモートによって行われたこの取材が初の顔合わせの機会だったという。

 『ジョゼと虎と魚たち』にそれぞれがどう関わり、どんなイメージが共有されていったのか。映画の制作の裏側、12月23日にリリースされたEveの新作『廻廻奇譚 / 蒼のワルツ』について、さらにはアニメーションと音楽がクリエイティブの相乗効果をもたらす原理について、語ってもらった。(柴那典)

タムラ監督が引き合わせたかったEveとloundraw、同世代二人の才能

——今回の『ジョゼと虎と魚たち』の主題歌の話はいつ頃から始まったんでしょうか?

タムラコータロー(以下、タムラ): Eveくんにお願いすることが決まったのは2019年の4月くらいのことで、1年半以上前になりますね。loundrawくんと顔合わせしたのはもっと前で2017年の6月くらい。だいぶ経ちましたね。

——loundrawさんは映画のコンセプトデザインということですが、これはどういった形の携わり方なんでしょうか。

loundraw:イメージボードという、映画全体のキーシーンや、各場面の印象を作る仕事をさせていただきました。たとえば、昼の風景だとしても、二人の感情から少し寂しそうに描いたり、もしくは楽しそうに描くなど、伝えるべきことを色合いなどのビジュアルから設計しています。大事な場面だからライティングを強めにする、ということもしますね。映像そのものの演出に携わる部分をタムラ監督と一緒に作らせていただいた感じです。

——タムラ監督とloundrawさんはEveさんのこれまでの曲への印象は、どんなふうに感じていましたか?

loundraw:僕は昔からEveさんの曲を聴かせていただいていて。印象として、誰しもにすごく真っ直ぐに届く曲を作られるなと思っていたんです。しかも、そこに自分の色がある。それはすごく難しいことなので、リスペクトがあります。

タムラ:さっき言った2019年4月より前に、Eveくんの名前が一度挙がったことがあって。その時に聴いた曲はかなりアップテンポだったんですね。曲としてはすごく良かったんですけど、そのときは『ジョゼ』の世界観とハマるかどうかわからなかったんです。でも、その後にもう一度Eveくんの「迷い子」を聴いた時に「いけるんじゃないかな」って思ったんですよね。可能性の引き出しをすごく感じた曲だったんです。それまでのEveくんの曲とまたちょっと違うバランスを探ってる感じがあった。それを聴かせてもらった時に、『ジョゼ』と組み合わせることでEveくんの新しい可能性を引き出せるんじゃないかと思ったのを覚えています。

——Eveさんは『ジョゼと虎と魚たち』の物語は以前からご存知でしたか?

Eve:実写映画を以前に観たことがあったので、タイトルはもちろん知っていました。ただ、これがアニメーション映画になるというお話を聞いて、最初はどういう形になるのかあまりイメージが湧いてなかったんです。けれど、タムラ監督からお話を聞かせていただいて、新しい『ジョゼと虎と魚たち』を感じることができました。そこから音楽を作っていきました。

——制作にあたっては、タムラ監督とloundrawさんとEveさんで集まって打ち合わせをしたり、意図を共有する話し合いがあったりしたと思うんですが、それはどんな感じでしたか?

タムラ:いや、個別にいろんなことを話し合いながら作っていったので、実はloundrawくんとEveくんが一堂にいるという状態は、これが初めてなんですよ。今まで接点がなかったのが不思議なくらいで。

——そうなんですか?

タムラ:なので、正直、今回のような鼎談の機会をずっと待っていたんです。僕としては、この座組がすごく大事だと思っていて。主人公の恒夫くんが22歳で、ジョゼが24歳で、そのあたりの世代に刺さる作品を作りたいと思っていたんです。だから、イラストレーターとして輝いているloundrawくん、音楽界で輝いているEveくん、この二人が一緒の作品に入ってくれた時点で、僕の中ではある程度の勝算がありました。

——Eveさんはloundrawさんの作品はどんな風に見ていましたか?

Eve:初めて知ったのはTwitterで自主制作の作品を見たのがきっかけで、それにすごく衝撃を受けたのを覚えています。だから、この『ジョゼと虎と魚たち』のお話をいただいた時に、loundrawさんが参加されていると知って勝手に親近感を覚えていたんです。あとはloundrawさんがやっているCHRONICLEというプロジェクトも、映像があって、音楽があって、そこに物語が付随している。それは僕の音楽にも共通してる部分で、そういうところにも勝手に親近感を覚えていました。だから作品でご一緒できてすごく嬉しかったです。

——loundrawさんとしてはどうでしょう?

loundraw:本当に光栄です。Eveさんの楽曲やミュージックビデオを拝見していても、曲のバックボーンになる物語のイメージが、Eveさんの中にとても強くあるように感じるので。そういった形で僕の活動を見てくださってることも、また親近感を覚えてくださることも、僕からしたらすごく光栄で。実は今回お話しできるのも楽しみにしていました。

Eve: 嬉しいです。ありがとうございます。

——お互いがお話しするのが初めてだというのが意外なくらい共通点のあるお二人だと思うんですが、そういうloundrawさんとEveさんを結びつけるという狙いがタムラ監督にあったということでしょうか。

タムラ:まさにそうですね。このお二人に参加してもらえたのは本当に良かったです。僕自身も音楽と映像の親和性をすごく重視して作っているので、そういう意味ではloundrawくんもイラストレーターではあるけども音楽に対してすごくこだわりがあるし、Eveくんもミュージシャンでありながら映像に対する造詣も深いので、こちらが音楽と映像で奏でたい方向性みたいなものに共感してもらえるのが早かったと思います。

——『ジョゼと虎と魚たち』には実写映画の作品もありますが、loundrawさんは映画全体の印象を作る上で、実写版との違いやアニメーションならではの表現は意識しましたか?

loundraw:僕が一番意識したのは、アニメでやることに意味があるものにしないといけないというところでした。当然、実写版がすでにありますし、『ジョゼと虎と魚たち』というお話自体も、ある意味、現実ベースの地に足のついた作品なので。その中で映画を観た人が緩急を感じて、感情移入できるものを作らなきゃいけない。そのために、意図的に画面の色の変化を大きく作ったりしています。実写の場合は過剰演出になってしまうラインがありますが、そこを今回は上手く行き来して、現実の話だけれどアニメとしてビジュアル映えするものを作っていく。そういうところでアニメとして意味があるものにしたいと思いました。

——Eveさんは、どんなところをとっかかりに楽曲を作っていったんでしょうか。

Eve:脚本を全て読ませていただいて、コンテとイメージボードを見せていただいて。まずその絵がすごく繊細だったんですよね。映像が飛び込んでくるかのような体験をさせてもらえた。そこで音楽を作る上でのイメージが湧いたのを覚えています。それから、監督も丁寧に楽曲と向き合ってくださったんですけど、その中で「時代を超えても色褪せないものは何か」を大事に考えました。先ほども監督がおっしゃってましたけど、自分が今までやってこなかったような音楽になったというか、『ジョゼ』っていう作品に新しい面を引き出してもらった2曲になったと個人的には思っています。

——曲に取り掛かったタイミングはいつ頃でした?

Eve:2019年の夏から秋くらいです。先に「心海」ができて、ほどなくして「蒼のワルツ」ができました。その2曲を監督に聴いていただいて、「蒼のワルツ」を主題歌で、「心海」を挿入歌で使っていただくことになりました。

タムラ:アニメの制作スタジオにいた時に曲を受け取ったんですけど、最初に聴いて、プロデューサーと「これはいけるんじゃないかな」と話をした記憶があります。すごく良かったですね。まだラフの段階だったんですけれど、その時点である程度完成されていて。こちらのオーダーにも答えていただきつつ、なおかつEveくんの新しい引き出しが開いた感じもあった。それでいて、いろんな世代の方にも共感してもらえる曲になりそうな感じもあったんですよね。あと僕的に嬉しいポイントとしては、カラオケに行きたくなる曲、歌いたくなる曲だということ。メロディが複雑すぎる曲だと聴くだけで満足しちゃうんですけれど、映画館を出た後に歌いたくなる曲になった。そこはものすごく大きかったと思います。あとは、歌詞もすごく良かったです。印象的な台詞も引用してもらったり、本編を読み込んで『ジョゼ』のために作ってくれた感じがして、それも良かったですね。

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