KIRINJI、バンド編成ラストライブで響かせた渾身のアンサンブル 手練れの音楽家たちによる“挑戦と進化”の集大成

KIRINJI、バンド編成ラストライブで響かせた渾身のアンサンブル 手練れの音楽家たちによる“挑戦と進化”の集大成

 2020年12月9日、10日の2日間、KIRINJIの公演『KIRINJI LIVE 2020』がNHKホールにて行われた。11月に発売されたベスト盤『KIRINJI 20132020』のリリースを記念したライブだが、同時に、2013年以降7年半に渡って続いたバンド編成としては最後の演奏でもあった。2021年以降、KIRINJIは実質的に堀込高樹のソロプロジェクト化することが発表されている(「堀込高樹を中心とする変動的で緩やかな繋がりの音楽集団」として活動とのこと)。現体制でのライブはこの2日間で見納めということもあり、数多くの観客が会場に足を運び、別れを惜しんだ。今回の記事では、12月10日の公演についてレポートする。

 1998年のメジャーデビューから現在までの活動において、第2期にあたるバンド期は聴き手にとってどのようなものだったか。兄弟デュオとしてデビューしたキリンジが、堀込泰行の脱退後、メンバーを6人と増員しKIRINJIとして活動すると発表したとき、ファンがその変化をどう受け止めたかは気になるところである。ライブ当日、会場に来ていた方々に意見を聞いてみたが、その多くが「当初は困惑した」と答えていたのは意外だった(以下の表記、「キリンジ」は兄弟編成、「KIRINJI」はバンド編成を指す)。

 「キリンジが作り上げてきた世界観が壊れてしまいそうに思った」(Aさん)、「キリンジと違う方向に行ってしまうのでは」(Uさん)、「どんなバンドになるか、イメージが湧かなかった」(RCさん)、「(堀込高樹は)プロデュースの立場になり、前面には出ないと思っていた」(Kさん)、「バンドを組むのが予想外だった」(Nさん)。このように、キリンジからKIRINJIへの変化に戸惑いの気持ちを抱いていた聴き手は多かったようだ。

 こうした不安は、キリンジとしての活動が充実していたことの影響が大きいように思う。キリンジの世界観は、兄弟2人が作り上げた歌詞や、楽曲のイメージに支えられていた。「クラスの隅っこであれこれ文句を言っている、ちょっと地味な男子生徒」(Cさん)の視点に惹かれていたファンにとって、女性2人を含む6人の大所帯バンドとしての再出発はサプライズだっただろう。

 しかしKIRINJIがひとたび始動すれば、アルバム、ライブ演奏、いずれもファンを感動させるクオリティだったと全員が目を輝かせて話していた。「バンドの楽しさを教えてくれた」(Uさん)、「期待を大幅に上回った」(Nさん)と皆が声を揃える。KIRINJIの7年半にわたった活動は、彼らであれば「絶対にいいものができる」(RCさん)という信頼関係を育む時間でもあった。それだけに、バンド編成での活動が終了するという知らせは名残惜しい。「バンドをやめるのはもったいない」(Nさん)、「熟成していく様子を見たかった」(Uさん)という意見も多かった。

 『KIRINJI LIVE 2020』の演奏は、バンドメンバーの堀込高樹(Vo/Gt/Key)、楠均(Dr/Vo)、千ヶ崎学(Ba/Vo)、弓木英梨乃(Gt/Vo)に加え、矢野博康(Per/Manip)、sugarbeans(Key)、MELRAW(Sax/Flu)のサポートミュージシャンで構成された計7名。演奏曲は、KIRINJIとしての活動歴を振り返る選曲が中心となっており、アルバム『11』(2014年)、『ネオ』(2016年)、『愛をあるだけ、すべて』(2018年)、『cherish』(2019年)からの楽曲が多くセレクトされていた。

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 ライブは、2018年のツアーでも1曲目に演奏された「明日こそは/It’s not over yet」からスタート。華やかなイントロと勢いのあるメロディは、記念すべきライブの幕開けにふさわしい。高揚感のある楽曲に、観客も大きな拍手で応える。弓木が歌う「Mr. BOOGIEMAN」、ゲストボーカルにYonYonを迎えた「killer tune kills me」と、歌い手が入れ替わる多彩な構成も楽しい。

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