トイズファクトリー新設レーベル<VIA>の狙いとビジョンを解説 “ストリーミング時代のレコード会社のあり方”への挑戦

リリース第1弾は りりあ。VIAの狙いとビジョン解説

 りりあ。が、「蛙化現象に悩んでる女の子の話。」をデジタル配信リリースした。

 同曲は、トイズファクトリーが新たに設立したレーベル<VIA>の第1弾リリースとなる。この記事では、<VIA>発起人 トイズファクトリー クリエイティブ1チーフ・プロデューサー松崎崇氏のコメントを元に、「新世代のストリーミング特化型アーティストにフォーカスし、SNSなどのデジタルコンテンツを最大限に駆使しながら、アーティストごとに最適化された方法でリスナーの元へ届けていく」というレーベル<VIA>の狙いとビジョンを解説したい。

りりあ。
りりあ。

 りりあ。は、TikTokやYouTubeに投稿した弾き語りのカバー動画が話題を呼び、人気を拡大したシンガーソングライターだ。今年5月に配信リリースされた初のオリジナルソング「浮気されたけどまだ好きって曲。」は、事務所もレコード会社にも所属していないインディペンデントなアーティストながら、LINE MUSICでウイークリーランキング1位を獲得。その後もテレビの情報番組や配信フェスへの出演など活躍の場を広げ、2020年11月現在でTikTokフォロワーは110万人以上。一躍注目の存在となっていった。松崎氏は、りりあ。との出会いをこう語る。

「TikTokの中で一際強烈な個性を放ってる子がいるなと思って偶然発見したのがきっかけでした。すごく繊細な感情をオリジナリティのある歌詞と歌で表現していたので、かなり気難しいキャラクターを想像していたのですが、インスタライブを覗いてみたら、元気いっぱいにギャハギャハ笑っていて、その天真爛漫なキャラと楽曲とのギャップにとても魅力を感じて、即お声掛けさせてもらいました」

 今年9月に筆者が行ったインタビューでは、りりあ。は「もともと趣味で音楽をやっていたし、今も私はまだ趣味だと思っているので」「CDをリリースしたいとも特に思わないし、今までと同じようにSNSで活動していければいいかなと思っています」とマイペースなスタンスを明かしている。

 「蛙化現象に悩んでる女の子の話。」も、もともとリリースを目指して制作された曲ではなく、SNSで「どんな曲を聴きたいか」を募り、その声をもとに作ってYouTubeで発表されたものだ。あくまでも、りりあ。の活動方針に寄り添い、バックアップする体制が整えられている。

「りりあ。は今までもこれからもSNSで活動していけばいいと思っています。本人のスタンスはずっと変わってませんし、我々もそういう本人のマイペースなところに魅力を感じています。あくまでも本人主導で、我々はその音楽活動の後押し、お手伝いをしていきたいと思っています。それがベースにありつつ、自分的に面白いアイデアや企画は積極的に本人に提案して一緒に成長していきたいと考えています」(松崎氏)

蛙化現象に悩んでる女の子の話。【オリジナル】

 レーベル<VIA>設立の背景には、ストリーミングサービスが普及したことで音楽の届け方が大きく変わってきたことがある。CD中心のかつての音楽産業の構造においては、大きなポイントになっていたのは“流通”だった。ミュージシャンがレコードショップを通して全国にパッケージを届けるにはレコード会社から“デビュー”する必要があった。

 しかし今はTuneCore Japanなど個人アーティスト向けの音楽デジタルディストリビューションサービスも根付いている。事務所やレコード会社と契約せず、自らレーベルを立ち上げDIYな体制で世界中に音源を配信するインディペンデントアーティストも本格的に台頭してきている。そして、りりあ。のように“SNSネイティブ”な世代のアーティストも頭角を現しつつある。

 こうした潮流の中で、“ストリーミング時代のレコード会社のあり方”を模索する新たな挑戦として<VIA>がスタートした、ということのようだ。

「ストリーミングが音楽ファンだけではなく、一般層にも浸透してきたことで、プレイリストで垂れ流しで聞いたり、アーティストは知らなくても曲単位で聞いていたり、曲を知るきっかけ、そして出会う可能性が10年前と比べて多岐にわたっていると日々感じています。トイズファクトリーにはBUMP OF CHICKEN、ゆず等、国民的なアーティスト、自分が担当させてもらっているEve、マカロニえんぴつといったこれから大きくなるアーティストまで様々なアーティストがいますが、全てに共通している部分は楽曲とクリエイティブだけで勝負しているという点。社長の稲葉(貢一)がよく我々はインディペンデントメジャーレーベルだと話をしてくれるのですが、本当にそうありたいと思っています。アーティストとの向き合いはインディーズ精神で、何でもやる、役割分担を敢えて曖昧にする。しかしメジャーとしてしっかり作品にタイアップをつけたり、大きな展開を獲得するためにベストを尽くすというのがトイズファクトリーの方針だと思っています。そのトイズファクトリーのクリエイティブファーストな部分をストリーミングにも強く反映させたレーベルがあるととても良いのでは? と思ったのが最初の設立のきっかけでした」(松崎氏)

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