EXILE MAKIDAI 連載「EXILE MUSIC HISTORY」第2回:KENJI SANOと語り合う、“EXILEのキャプテン”として共に歩んだ軌跡

EXILE MAKIDAI 連載 第2回:KENJI SANO

 EXILE MAKIDAIによる「EXILE MUSIC HISTORY」は、EXILEが2021年9月にデビュー20周年を迎えることを受けて、その音楽的な進化の軌跡を振り返る新連載だ。

 最新のストリートカルチャーやダンスミュージックのエッセンスを、メロディアスで口ずさみやすいJ-POPに注入し、ダンスパフォーマンスによる視覚的な表現を掛け合わせることで、日本の音楽シーンに一時代を築いてきたEXILE。そのクリエイションには一体どんなイノベーションがあったのだろうか。日本の音楽シーンを代表するクリエイターたちの肉声に、MAKIDAIが迫る。

 第2回のゲストには、“キャプテン”ことKENJI SANOを迎える。海外での活動経験も豊富であり、90年代にはglobeや安室奈美恵などの音楽ディレクターも務めるなど、プレイヤーとしてもバンドマスターとしても数多くのアーティストを支えてきたSANOは、2004年からEXILEのライブツアーでミュージックディレクターを務めてきている。今回は、EXILEとキャプテンの出会いから、グループに与えた“音楽だけに止まらない”様々な影響まで、17年の歴史をたっぷりと振り返っていった。ここだけでしか知れないEXILEの歴史を、ぜひ体感してほしい。(編集部)

EXILEのライブには本物のエンタテインメントが感じられた

EXILE MAKIDAI(以下、MAKIDAI):8月にLDH kitchenのTHE TOKYO HANEDAでやった『AIRPORT DISCO』にキャプテンが来てくれて、結構遅くまで一緒に話しました。今日も出会った頃からのヒストリーを語っていきたいと思います。EXILEの歴史は、キャプテンなしには語れないくらい、一緒に歩んでいる気がします。

KENJI SANO(以下、SANO):3日間、話し続けられるくらいありますよ、この話は。

MAKIDAI:(笑)。そもそも初めてキャプテンにお会いしたのは、2004年の『EXILE LIVE TOUR 2004 "EXILE ENTERTAINMENT"』の大阪城ホール公演でした。「ロサンゼルスからすごい人が観に来た」みたいな感じで観覧していただいたことを覚えています。

SANO:もう出会ってから17年目に突入してますね。昨日何食ったかは覚えてないけど、それはすごく覚えてる。

KENJI SANO

MAKIDAI:キャプテンから、大阪城ホールのライブはどう映っていました?

SANO:ちょうど安室奈美恵さんのツアーが終わってロサンゼルスに帰る前でしたから、ぶっちゃけた話、あまり乗り気じゃありませんでした。ラブコールされて「じゃあ行きます」という感じで。でも、実際に見たら大阪城ホール満員の観客の95%が女性で、バーンって始まったら「カッケー! 何これ!」と驚きました。

MAKIDAI:「New Jack Swing」の演出ですね。

SANO:ステージが始まってからは、職業病で会場をうろうろして音をチェックしたり、前の方に行ってパフォーマンスを見たり。パフォーマンスでめちゃくちゃ暴れまくってるのが新鮮だったね。坊主の子の歌も上手いし。

MAKIDAI:ATSUSHI(笑)。

SANO:だからファースト・インプレッションは「何かすごいストリートでカッコいいことやってるな」でした。お世辞でも何でもなく。

MAKIDAI:あの時の自分たちは無我夢中でした。

SANO:それまでは「『Choo Choo(TRAIN)』をやる人たち」とか、ZOOの二番煎じだと思ってたからね(笑)。でもエンタテインメントには、その無我夢中さと楽しんでるイメージが必要だし、そうでなきゃ駄目じゃないですか。EXILEのライブには、そういう本物のエンタテインメントが感じられました。

EXILE MAKIDAI

全体を見てEXILEがやりたいことを音楽的にどう可能にするか

MAKIDAI:自分たちはJ SOUL BROTHERSからスタートして、EXILEをきっかけに本格的なステージに立ちましたが、キャプテンはその大先輩。しかも海外でも活躍している、身近で偉大な存在です。日本とアメリカのライブ制作の過程で違いなどはありますか?

SANO:日本はメンタル的に律儀でプリサイス(几帳面)だから、譜面をめちゃくちゃ必要とします。もちろん譜面はロードマップとして必要ですが、ジェイ・グレイドンやChicago、TOTOのメンバーたちとツアーした時は音源を渡されただけでした。もちろん、リハ初日には、ばっちりできる状態で行かなきゃダメなんです。でも、そこからみんなで実際にプレイしながら「そこはもう少し抑えて」とか「ここは繰り返しで」みたいに組み立てていく。「譜面上はこうだから、このコードチェンジはこうで……」というやり方ではないですね。

MAKIDAI:体感を大事にする、と。

SANO:グルーブが先にくる、みたいな感じかな。日本では決め事を作って、それをちゃんとやる感じ。だから、EXILEで演奏する時は両方のやり方をブレンドしようと思ってやっています。

MAKIDAI:EXILEはダンスがあるので、当初は曲の尺もある程度決まっていましたが、キャプテンが一緒にツアーするようになって変わりましたね。「ここは少し伸ばしたい」とか「盛り上がるから長く」とか調整をするようになって、キャプテンはそれに「じゃあこんな感じで」と対応してくれて、よりライブ感のあるパフォーマンスができるようになりました。

SANO:逆にこちらから「そこはもう少し長いほうがいい」と提案することもありましたね。僕のバンドのメンバーも、常にトップレベルの人たちとやってるから理解が早い。だから「こうこう、こうだから」で、すぐできるじゃないですか。できちゃうのが、むしろ問題なところもあるのですが(笑)。

MAKIDAI:どんどんハードルが上がっていきますからね(笑)。ゲネ(最終的な稽古)から初日の間で「こんなにギリギリのタイミングで変更入れるんだ」ということも多分にあります。

SANO:もうひっくり返るような気持ちだよ(笑)。色々な人が「楽しそうでいいですね」とか「絶対楽しいよね、そういう仕事」って言うけれど、それどころじゃないです(笑)。朝に現場入りして、リハやって、通しやって。そしてゲネやって、反省会3時間やって。また朝で次の本番。それを直して、また本番というハードな毎日。でも、チケットを買って観に来てくれたお客さんたちに向かって「ちょっと俺たちしんどかったんで、今日はごめんなさい。疲れてます」というわけにはいきませんから。

MAKIDAI:それは当然、できないですね。

SANO:だから常にアップした状態でないといけない。ちょっとだけ僕がエキサイトして「What's up? Let's go men!」と言ってみんなに士気が伝われば、それに越したことはないです。

MAKIDAI:そのマインドはどんな風に培われているんですか。メンバーやスタッフさんに聞いても、みんな口を揃えて「キャプテンに会うと元気が出る」と言います。

SANO:「EXILEのキャプテン」ですからね。ただバンマスをやるだけじゃなく、全体を見てEXILEがやりたいことを音楽的にどう可能にするか、もっと良くできるかを考えます。それを考えれば考えるほど、やる気が出ますね。俺の疲れなんてどうでもいい。「Come on! Let's go men!」で突っ走って、「疲れた」は終わってから言えばいい。それがEXILEイズムであり、キャプテンイズム。それに生きがいを感じているんだ。

MAKIDAI:キャプテンがそういうマインドでEXILEやEXILE TRIBEと一緒に歩んでくれて、僕らの歴史をずっと見てくれていたからこそ、今の僕たちがあるのだと実感しています。本当に素敵です。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる