THE BACK HORN、20周年経た濃密な音楽 「心臓が止まるまでは」が予見させる次作の世界観
昨年、結成20周年を迎えたTHE BACK HORN。2008年以降のシングル曲、アルバムのリード曲、新曲「グローリア」などを収めた『BEST THE BACK HORN Ⅱ』、THE BACK HORNらしい切なさ、激しさ、狂おしさを凝縮したメジャー1stミニアルバム『情景泥棒』、作家・住野よるとのコラボレーションプロジェクトから生まれた配信シングル「ハナレバナレ」、インディーズ時代の楽曲を再レコーディングした『ALL INDIES THE BACK HORN』など、過去・現在・未来を行き来するような作品を次々と発表。さらに昨年8月から今年2月にかけて全国ツアー『THE BACK HORN 20th Anniversary「ALL TIME BESTワンマンツアー」〜KYO-MEI祭り〜』を開催。ファイナルの日本武道館公演では、“祭り”というタイトルにふさわしい祝祭感、そして、このバンドの根本のテーマである“KYO-MEI(共鳴…)”を強く具象化する楽曲によって、アニバーサリーの最後を見事に彩った。『ALL INDIES THE BACK HORN』のインタビュー時に山田将司(Vo)は、インディーズ時代の楽曲について「この頃の歌詞は、悶々とした感情を埋めるような感覚で書いてたと思う」「苛立ちとか寂しさとか、そういうものを自分で埋めようとしてたんじゃないかな」と語っていたが、メンバー自身の内なる感情に根差し、“自分たちにしか生み出せない楽曲を作りたい”という純度の高いモチベーションに貫かれた活動によって、彼らの音楽は多くのリスナーを惹きつけ、まさに“共鳴”し続けた。バンドとオーディエンスのきわめて強い結びつきを改めて証明した武道館公演は、THE BACK HORNの20年の集積であると同時に、この先の彼らの行方を示唆するものだったと思う。
そしてTHE BACK HORNは2019年6月、新たな物語を刻み始めた。その最初のアクションは、新曲「心臓が止まるまでは」の配信リリース。2019年10月23日にリリースが決定している12thオリジナルアルバムの先行配信曲として発表されたこの曲は、“これぞTHE BACK HORN”というこのバンドのベーシックな姿勢を示すと同時に、ニューアルバムの世界観を予見させる楽曲に仕上がっている。
「心臓が止まるまでは」は、〈ハローハロー/生きるための言葉を刻もう〉というフレーズから始まる。日常を生きることのキツさ、切なさ、悲しさを正面から受け止めながら、〈まず吐き出せ〉〈そして歩き出せ〉〈歌い舞い踊ってぶんどるんだ未来を〉と聴く者を鼓舞し、高ぶらせるこの曲の歌詞は、生きづらさを抱えているすべての人の心を強く揺らすことになりそうだ。作詞・作曲を担当した菅波栄純(Gt)はこの楽曲に対し、「「心臓が止まるまでは」は、“何があっても音楽やり続けてやる!” という気合を込めて書きました。自分とがっつり向き合って出てくる言葉を結晶化したら、生き抜く為の音楽になりました。 ドス黒いし、壊れてるし、ブッ飛んでるかもしれないけど、この曲で救われたような心地になる人は絶対にいると確信しています」というコメントを寄せている。音楽をやり続けることが生き続けることとほぼ同意であり、その真摯な姿勢が内包されているからこそ、リスナーはTHE BACK HORNの音楽を信頼し、強く共鳴する。そのことを再認識させられる楽曲だと思う。
サビのメロディをシンセで描き出し、重厚な響きをたたえた打ち込みのトラック、軽やかなピアノのフレーズなどを交えたサウンドメイクも斬新だ。軸になっているのはあくまでもドラム、ベース、ギターによるアンサンブルなのだが、昨今のヒップホップ、R&Bにも通じるようなアレンジを施すことで、最新型のTHE BACK HORNを鮮やかに提示している。「心臓が止まるまでは」のサウンドの方向性は、単にトレンドを取り入れたのではなく、“いまの自分たちをもっとも強烈に示すためには何が必要か?”という試行錯誤の末にたどり着いたものだろう。バンドと一緒に叫び、手を鳴らしたくなるような演出もあり、ライブでの高揚感も大いに期待できそうだ。
赤ん坊が黄金のベッドからこちらを見ている場面から始まるミュージックビデオも強烈。赤と青のバケモノが官能的に絡み合い、メンバー4人の生々しい演奏シーンが挿入されるこの映像を手がけたのは、「孤独を繋いで」「Running Away」などのMVも担当している田辺秀伸。激しくも狂おしい楽曲の世界をインパクトの強い映像で表したこの作品も大きな注目を集めることになるだろう。
8月にはファンの間で高い人気を得ている『マニアックヘブンVol.12』(選曲から演出までのすべてがマニアックに構成されるイベント)を開催。さらに10月にリリースされるニューアルバムを携えた全国ワンマンツアーも決定するなど、次々と新たな動きが発表されているTHE BACK HORN。新曲「心臓が止まるまでは」を聴けば、現在の彼らの充実ぶりをはっきりと実感してもらえるはず。そう、20周年を超えたTHE BACK HORNはさらに濃密な音楽を描こうとしているのだと思う。
■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。
■リリース情報
「心臓が止まるまでは」
2019年6月28日より、iTunes、レコチョク、mora他主要ダウンロードサイト、Apple Music、LINE MUSIC、Spotify他主要サブスクリプションサービスにて配信開始
配信サイトはこちら
12th Album
発売日:2019年10月23日(水)
※詳細後日発表
THE BACK HORN 12th Album特設サイト
■ツアー情報
『THE BACK HORN「KYO-MEIワンマンツアー」』
<2019年>
11月18日(月)渋谷WWW X
11月21日(木)浜松窓枠
11月23日(土)郡山HIPSHOT JAPAN
11月27日(水)HEAVEN'S ROCK 熊谷 VJ-1
11月30日(土)札幌PENNY LANE24
12月04日(水)京都磔磔
12月06日(金)金沢EIGHT HALL
12月07日(土)松本Sound Hall aC
12月12日(木)米子AZTiC laughs
12月13日(金)広島CLUB QUATTRO
12月15日(日)福岡DRUM LOGOS
12月21日(土)盛岡CLUB CHANGE WAVE
12月22日(日)仙台Rensa
<2020年>
1月10日(金)高松MONSTER
1月11日(土)高知X.pt
1月17日(金)心斎橋BIGCAT
1月23日(木)水戸LIGHT HOUSE
1月24日(金)HEAVEN'S ROCK 宇都宮 VJ-2
1月31日(金)名古屋DIAMOND HALL
2月02日(日)鹿児島CAPARVO HALL
2月11日(火・祝)Umeda TRAD
2月15日(土)新木場STUDIO COAST