霜降り明星 粗品、パーパー ほしのディスコ、三四郎 相田周二……本格的な音楽の才能開花させた芸人たち
2020年、ステイホーム期間の影響から、芸人のYouTube進出が活発化する中、本格的な音楽の才能を開花させる芸人が注目を集めている。
それが第7世代の筆頭株、霜降り明星の粗品だ。霜降り明星でさえも、週6で休みだったという自粛期間中の4月。粗品は苦戦しながらもパソコンにボーカロイドソフト・初音ミクをインストールしたことを『霜降り明星のオールナイトニッポン0(ZERO)』(ニッポン放送)の中で明かしている。その翌月、粗品がYouTubeとニコニコ動画に個人チャンネルを開設し、アップしたのがオリジナルソング第1弾となる「ビームが撃てたらいいのに」。ボーカルは初音ミク、絵はイラストレーターのpopman3580、作曲・作詞・動画は粗品自身が担当。チップチューンを主体とした懐かしいサウンドに、どこかシュールで素朴ながらインパクトのある歌詞は、耳に残るボカロ曲特有の中毒性を持ち合わせている。5月末に緊急事態宣言が解除となり、最近では再び忙しない毎日が戻ってきている霜降り明星の2人。それでも粗品は5月に2曲、6月に2曲、7月に1曲、9月に2曲と現在までに7曲ものボカロ曲を投稿。最新曲の「童貞が作ったラブソング」は6時間半に及ぶ生配信の末に作られた、切ない渾身のラブソングだ。ちなみに、イラストの女の子は「ビームが撃てたらいいのに」から「童貞が作ったラブソング」までで、「S」「O」「S」「H」「I」「N」「A」の7文字を手(腕)で形作っているという、なんとも粗品らしいこだわりようだ。
もともと絶対音感の持ち主として、『人志松本のすべらない話』(フジテレビ系)のトークやYouTubeチャンネル『しもふりチューブ』でもその才能を垣間見せていた粗品。初投稿から5カ月にして、その優れた能力はプロからも注目され始めている。5曲目の「サンパチスター」はバーチャルシンガー・花譜が別バージョンとして歌唱。さらに、まらしぃのオリジナルアルバム『シノノメ』に収録の「とある霖雨」では粗品が作詞を手がける事態となっている。eスポーツイベントで共演していたまらしぃが、ファンだった粗品にラブコールを送った結果だろう。
作曲と作詞で手腕を発揮する粗品に対して、歌唱力で話題となっているのがパーパー・ほしのディスコ。その芸名がPerfumeの「チョコレイト・ディスコ」に由来することは有名であるが、『キングオブコント2017』(TBS系)の決勝ステージで着ていたのがクリープハイプのライブTシャツ。アーティストによる一発録りのYouTubeコンテンツ『THE FIRST TAKE』風の動画で最初に選曲したのが、リスペクトするクリープハイプの「栞」だった。動画のバズをさらに加速させたのが、DISH//「猫」を歌った『千鳥のクセがスゴいネタGP』(フジテレビ系)への出演。サビに突入するパートでジャングルポケットの斉藤慎二が横入りするという千鳥も興ざめする演出だったためか、「栞」の動画には番組から流れてきたと思われる視聴者からのコメントが多く散見される。
その特徴は、クリープハイプ尾崎世界観にも通ずるハイトーンボイス。リクエストが多かったという04 Limited Sazabys「swim」、自身が好きな楽曲クリープハイプ「憂、燦々」でもその高い声が存分に活きた歌唱となっている。また、「猫」にも言えることだが、あいみょん「マリーゴールド」といったキーの低い楽曲でも、安定した音程に原曲に忠実な歌い方が彼の聴かせるポイントである。千鳥の大悟は「猫」を聴いて「ほんまにこいつの声?」と聞き耳を立てていたが、今後そんな驚きの姿が至るところで見られそうだ。
先述した『千鳥のクセがスゴいネタGP』は芸人が普段披露していないネタを見せる場として、狩野英孝の「大きな古時計」カバーやロバート・秋山竜次のオリジナルソング「そばかす」など、新たな音ネタブームを生み出している。そこで驚異の音楽センスを見せたのが、アイロンヘッドの辻井亮平。抜群の歌唱力とリズム感が必要とされる「求人広告カー ジャングル」、パーカッションとボイスパーカッション、さらにギターでジャンルとリズムを横断する「先生にいうたろ~」は、簡単にはマネできない本気のリズムネタである。現在、3000万回再生を突破しているチョコレートプラネットの「香水」カバーでギターを軽やかに弾いているのも、アイロンヘッドの辻井。ある種、彼もYouTubeでガチな音楽の才能を発揮した一人と言える。