はなわの音楽はなぜ度々注目される? 時代を読むプロデュース力、憎めないイジり方などを分析

 『パタリロ』の作者として知られる魔夜峰央の原作を実写映画化して、異例のヒットとなっている映画『翔んで埼玉』。それに伴い、はなわが歌う主題歌「埼玉県のうた」もまた話題を集めている。ラウドなハードロックサウンドに乗せて、埼玉県や同県民の特徴をオーバーかつコミカルに歌った同曲は、埼玉をイジり倒した歌詞もさることながら、〈ダンダンダンダダンダンダン〉と歌うコーラスが耳に印象深く、思わず口ずさんでしまうほどキャッチーだ。単純に面白く、でもそれだけでは終わらない同曲の魅力とは? 「佐賀県」のヒットから16年、再び“県民あるあるソング”で注目を集めるはなわのプロデュース能力に迫る。

愛のある憎めないイジり方

はなわ『埼玉県のうた』

 何かのモチーフをユーモアたっぷりにイジる……はなわの楽曲スタイルは、2003年の「佐賀県」から始まった。はなわの出身地である佐賀県の“あるあるネタ”を落とし込んだ歌詞と、エレキベースの弾き語りという斬新なスタイルで歌った同曲は、一斉を風靡して同年末の『NHK紅白歌合戦』(NHK総合)に出演を果たしたほど。翌年の2004年にも「佐賀県」のスタイルを踏襲して、ガッツ石松にまつわるエピソードをネタにした「伝説の男 〜ビバ・ガッツ〜」で話題を集めた。また近年は、2017年に発表した「お義父さん」が話題になった。これは、はなわの妻の失踪した父親に対して歌った楽曲で、妻の天然ぶりと家族のエピソードをネタにした感動のナンバー。YouTubeにアップしたところ20日間で100万回以上の再生を記録するという経緯を経てCDリリースとなった。さらに昨年は、13年ぶりのアルバム『カラアゲ』をリリースしている。

 何かをイジるのはお笑いの常道だが、はなわの音楽ネタがお笑いの枠を越えて人気を集めるのは、ひとつにはイジり方に絶妙な角度があるからだろう。「佐賀県」には、〈一面田んぼだらけ まるで弥生時代〉や〈バス停の名前が「山下さん家前」〉など。イジられている当事者が「そういうところは、確かにあるよね」と100パーセント否定しきれない。つまり「痛いところを突かれた」と思うところを絶妙に突っ込んでいる。またシングル『佐賀県』には、地元=佐賀県への愛情を全面に押し出し家族への感謝と共に歌った「故郷」を収録していて、フォローすることも決して忘れていなかった。

 「埼玉県のうた」も同様で、〈名所もない さらに郷土愛もない だけどアジア一でかい 団地がある〉や〈ドンキが大好き 漫喫大好き おやつはゼリーフライ〉など。埼玉県をディスりながらも名物をしっかり織り込みつつ、最後に〈僕の故郷は佐賀県だけど 実は生まれた場所は 春日部〉と、はなわ自身が当事者であることも伝え、〈だから大好き埼玉〉と愛情たっぷりだ。

はなわ – 埼玉県のうた(TEASER MOVIE)

 近年は音楽シーンからのアプローチも増えており、たとえばMVの“あるあるネタ”を歌った岡崎体育の「MUSIC VIDEO」や、人気漫画の実写映画化にもの申したキュウソネコカミの「NO MORE劣化実写化」。ヤバイTシャツ屋さんの「喜志駅周辺なんもない」は、こやまたくやの出身大学である大阪芸術大学の最寄り駅をネタにした。はなわの楽曲も含め、これらの楽曲の奥底にはモチーフに対する愛情が溢れている。単なる個人攻撃に陥ることなく当事者も笑って済ませられるさじ加減と、どこか“憎めない”と思わせるイジり方に絶妙さがあると言えるだろう。

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