PEDRO、“表現者”としてのアユニ・Dが開花した最新作『浪漫』 武道館へ向け広がり続ける“バンドのクリエイティブ”に迫る

PEDRO、“表現者”としてのアユニ・Dが開花した最新作『浪漫』 武道館へ向け広がり続ける“バンドのクリエイティブ”に迫る

「また、ライブで、ライブハウスで会いましょう」

 アユニ・Dはそう告げて、「浪漫」を歌った。

 9月24日、LINE CUBE SHIBUYA。アユニ・Dがベース&ボーカルを務めるソロバンドプロジェクト・PEDROの全国ツアー『LIFE IS HARD TOUR』の最終公演の一幕だ。その模様はライブ映像と共にYouTubeに公開されている。

PEDRO / 浪漫 [LIFE IS HARD TOUR FINAL] @ LINE CUBE SHIBUYA

 8月26日にリリースされた2ndフルアルバム『浪漫』をひっさげ、9月3日の名古屋公演から全国9都市を回った『LIFE IS HARD TOUR』。コロナ禍が続く中で当初の予定からは変更し、イベント開催制限ガイドラインに沿って、各会場は通常のキャパシティから抑えた動員での開催。3日の名古屋公演から22日の新潟公演までは、1日に2公演行うスケジュールだ。スタッフ含め、この状況下でライブを行うというのは決して簡単なことではなかったはずだ。リスクも伴う。

 それでもツアーを行うことに、大きな意味があったのだろう。それはPEDROが「BiSHのメンバーのソロプロジェクト」から、アユニ・Dとサポートメンバーである田渕ひさ子(Gt)と毛利匠太(Dr)による「3ピースのバンド」へと変貌を遂げ、ツアーを通して旺盛な成長を果たしているタイミングだったから。そして、その楽曲に「音楽と出会ったことで人生が変わった」アユニ・Dのリアルな心情が刻み込まれていたから。

 今年3月5日、新型コロナウイルスの感染拡大が始まりライブの延期や中止が相次ぐようになった頃に筆者が取材を担当したPEDROのインタビュー(参考:アユニ・D×田渕ひさ子×松隈ケンタが語る、PEDROに起こった変化ーー“音楽“がアユニの居場所になった理由)が掲載されている。

 アユニ・D、田渕ひさ子、松隈ケンタ、それぞれの視点から、ツアーを経てPEDROが変わったこと、そして音楽という居場所を見つけたことによってアユニ・D自身が大きく変わったということが語られていた。

 「浪漫」はそういうアユニ・Dの変化がまざまざと表れた楽曲だ。

 アルバム『浪漫』の表題曲となったこの曲。何より大きなポイントは、アユニ・D自身が作詞作曲を手掛けていることだろう。これまでPEDROの楽曲はBiSHのサウンドプロデュースも手掛ける松隈ケンタが作曲を担当してきたが、アルバム収録曲では、アユニ・Dがこの「浪漫」とラスト「へなちょこ」の2曲を書き下ろしている。

 さまざまな媒体で語っている本作のインタビューによると、アユニ・Dは今年に入ってから作曲をするようになったという。頭に思い浮かんだメロディとベースラインをもとにDTMでギターやドラムを加える形で曲を作り、歌詞を書き、松隈ケンタ率いるSCRAMBLESがアレンジを仕上げていく形で制作が進んだという。アユニ・D自身の創作欲求が大きく膨らんできていることが伺える。

 そしてもうひとつのポイントは、歌詞にも曲調にも、満たされた気持ちや、幸せの中で感じる言葉にならない浮遊感のようなものがありありと表れていること。

お風呂あがりアイス分けあう夜
些細な日常を語り
お気に入りの映画 見合う夜
数えきれない瞬間味わった

 こんな風に始まる「浪漫」は、基本的に縦ノリの前のめりな曲調が中心だったPEDROでは珍しい、横ノリの揺れるグルーブと歌のフロウがキーになった曲だ。恋愛をモチーフにした歌詞には、「自分が抱えている衝動を吐き出す」ことで始まったアユニ・Dの創作が、ある種のストーリーテラーのような新境地に立っていることも伺える。渋谷を舞台に新保拓人が監督をつとめたミュージックビデオのふわっとした映像世界もそれに寄り添っている。

PEDRO / 浪漫 [OFFICIAL VIDEO]

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