PEDRO、社会情勢の変化とともに巻き起こした“現象” 様々な仕掛けから紐解く思いの連鎖と覚悟
BiSHのアユニ・Dによるソロバンドプロジェクト、PEDROが“現象”を巻き起こしている。さまざまな動きが波紋のように広がり、新作EP『衝動人間倶楽部』の大きな反響につながっている。
4月29日にリリースされた同作は、Billboard JAPANが発表した発売から初動3日間のシングルセールス集計で1位を獲得(参照:billboard JAPAN)。それだけでなく、ツアー中止を受けてクラウドファンディングサイト・CAMPFIREにて行われた「突如消えた全国ツアーを最高の記憶として残し金銭的にも無問題にしたい」プロジェクトは、4月18日の募集開始から4月28日の終了までの10日間で目標金額の300万円を大幅に上回る、2000万円以上の資金を集めた。(参照:CAMPFIRE)
全国に緊急事態宣言が発令され、ライブはもちろん、CDショップも軒並み閉店していることもあり、CDショップに足を運ぶことも難しくなった4月の間、PEDROに一体何が起こっていたのか。改めて振り返りたい。
当サイトにはEP『衝動人間倶楽部』にまつわるアユニ・D、田渕ひさ子、松隈ケンタの鼎談(アユニ・D×田渕ひさ子×松隈ケンタが語る、PEDROに起こった変化ーー“音楽“がアユニの居場所になった理由)が掲載されている。その頃からPEDROとそのスタッフは社会情勢の変化に大きく巻き込まれていた。筆者がこのインタビュー取材を行ったのが3月5日だ。当時はちょうど新型コロナウイルスの集団感染がライブハウスから発生したことが明らかになった頃。多くのアーティストが予定されていたライブを延期または中止した。
アユニ・D、田渕ひさ子も、それぞれBiSHが出演した『WACK TOUR 2020 “WACK FUCKiN’PARTY”』(2月29日大阪・Zepp Osaka Bayside)、NUMBER GIRLによる『NUMBER GIRL TOUR 2019-2020 逆噴射バンド』(3月1日東京・Zepp Tokyo)が「無観客ライブ」の生配信として開催され、そのステージに立った体験を語っている。
PEDROとしても3月から5月にかけて全国10都市を回る『GO TO BED TOUR』の開催を予定していた。上記の記事の取材時点では、松隈ケンタは「今はとりあえずやる気でリハーサルを進めてます」と語っている。しかし、予定されていた公演はすべて中止となった。
こうしてライブ活動が中止になる一方で、『衝動人間倶楽部』の収録曲のMVはリリースに向けて続々と公開されていった。まず、リリースの告知とともに、2月22日に第1弾楽曲として公開されたのが、映像作家の山田健人が監督を手掛けている「感傷謳歌」。右脳と左脳を赤と青で表現したカラフルなビジュアルで構成されたコンセプチュアルなMVだ。
3月11日にはアユニ・D、田渕ひさ子、毛利匠太の3人の演奏風景を捉えた第2弾「WORLD IS PAIN」のMVが公開された。シンプルな演出ながら16mmフィルムのざらついた質感を活かした映像となっている。
4月1日にはアインシュタインの稲田直樹が電撃加入、新たなアーティスト写真と「自律神経出張中」のオマージュMVを公開。稲田が歌う「自律神経出張中 (2020 ver.)」も配信リリースされた。
翌日の4月2日には稲田の加入がエイプリルフールの企画だったことを明かし、「メンバーとの不仲」を理由に脱退を発表。あわせて『衝動人間倶楽部』からの第3弾楽曲として「無問題」のMVを公開した。こちらはアコーディオンを抱えたアユニ・Dの周囲で謎の着ぐるみが踊る模様をワンカットで収録したシュールで不穏な内容になっている。
そして4月17日には第4弾となる「生活革命」のMVを公開した。ラブソングのこの曲らしく、アユニ・Dの手書きの歌詞と共に生活感の伝わるナチュラルなテイストの映像で構成されている。公開された一連のMVの監督はすべて山田健人が務めており、彼のクリエイティビティが存分に発揮された内容となっている。