森朋之の「本日、フラゲ日!」vol.197
THE ORAL CIGARETTES、PEDRO……独自の感性、サウンドメイクを奔放に表現したロックバンド 新譜5作をピックアップ
“第2章”の始まりを告げるTHE ORAL CIGARETTESのニューアルバム、BiSHのアユニ・DによるソロプロジェクトPEDROの新作など5作品をピックアップ。独自の感性、サウンドメイクを奔放に表現したロックバンドの最新作を(ご自宅で!)体感してほしい。
アルバム『Kisses and Kills』、アリーナツアー、昨年8月に『Before It’s Too Late』によって第1章を締めくくったTHE ORAL CIGARETTES。TVアニメ『revisions リヴィジョンズ』OPテーマ「ワガママで誤魔化さないで」、初のフィーチャリング楽曲「Don’t you think(feat.ロザリーナ)」を含む2年ぶりのフルアルバム『SUCK MY WORLD』は、彼らの第2章のスタートを告げる記念碑な作品だ。ネオソウル、ファンクに大胆に接近した「Fantasy」、ゴスペル調のコーラス、オルタナR&B系のテイストを取り入れた「Hallelujah」、エキゾチックなエレクトロサウンドを押し出した「Naked」など、バンドサウンドの枠を完全に超え、世界標準のポップミュージックを体現している。メンバーの卓越したプレイ、攻撃性、憂い、官能を持ち合わせた山中拓也のボーカルなど、バンドとしてのアイデンティティを強く刻んでいることも本作の強さだ。
BiSHのアユニ・Dによるソロプロジェクトの1st EP『衝動人間倶楽部』は、そのタイトルが示唆する通り、痛み、怒り、感傷、切なさ、寂しさなど、きわめて人間的な感情を衝動的に叩きつけた作品となった。〈良いことは生きていないと起こらない/やってやろうじゃないか〉(「感傷謳歌」)というフレーズもそうだが、アユニ・D自身の手による歌詞には一切の装飾がなく、生々しい思いをそのままぶつけているような響きがある。それが陳腐にならず、圧倒的なリアリティと説得力を持っていることが彼女の才能だろう。レコーディングにはギタリストの田渕ひさ子(NUMBER GIRL、toddle)が参加。オルタナティブな匂いが強く漂うロックサウンドと、アユニ・Dの鋭利にしてキッチュな歌声を際立たせている。
前作「Catch The One」のリリース後、メンバー脱退、レーベルの移籍などを乗り越え、活動体制を再構築してきたAwesome City Club。その変化は音楽性にも作用し、ニューアルバム『Grow apart』における“Awesome City Clubの新しいポップス観”へとつながった。先行配信された「アンビバレンス」「バイタルサイン」「ブルージー」でも提示されていたように、本作の最大の特徴は、バンドというスタイルに捉われないサウンドメイクとアレンジ。00年代以降の世界的な潮流(特にヒップホップ、R&B)をバランスよく取り入れながら、20年代における日本語のポップスの最適解を示しているのだ。男女ツインボーカルの魅力を活かした「最後の口づけの続きの口づけを」、5周年を迎えたバンドの現状と未来をストレートに綴った「Okey dokey」など、新たな代表曲となり得るナンバーもあり、今後のさらなる飛躍が期待できそうだ。