米津玄師、原曲のイメージを刷新する比類なきアレンジ力 「パプリカ」「まちがいさがし」セルフカバー解説

米津玄師『STRAY SHEEP』(通常盤)

  米津玄師が8月5日にリリースした5thアルバム『STRAY SHEEP』が出荷日にミリオンヒットを記録するなど話題だ。「Lemon」「馬と鹿」などのヒットシングルを収録する本作中、彼が他アーティストに提供した「パプリカ」「まちがいさがし」のセルフカバーも存在感を示している。本稿では、オリジナルver.とは異なる魅力を放つ2曲を紐解いていきたい。

 原曲の「パプリカ」は2018年にリリースされた楽曲であり、「〈NHK〉2020応援ソングプロジェクト」の一環で制作された。米津自身がプロデュースする小・中学生ユニットFoorinが歌唱する原曲は2018、2019年に『NHK紅白歌合戦』(NHK総合)でも披露され、2019年には第61回日本レコード大賞を受賞するなど、この2年間で幅広い世代に定着した1曲である。

<NHK>2020応援ソング「パプリカ」ダンス ミュージックビデオ

 Foorinが歌う「パプリカ」は跳ねるリズムが心地良く、無邪気な歌声を支える陽気な音色が特徴的だ。唱歌のような節回しを強調する和楽器の音色もカラッとし、晴天と青空が似合う夏の歌である。メンバーの話し声が散りばめられたトラック、拍手喝采で終わっていく展開など、大勢で集まり和気藹々と子供たちがはしゃぐ姿が目に浮かぶ。

米津玄師 MV「パプリカ」Kenshi Yonezu / Paprika

 米津自らが歌唱する「パプリカ」は、これらの印象を丸ごと反転させたような対照的なアレンジだ。イントロで鳴るひょろひょろとしたシンセ音、歌メロとは別次元から耳に飛び込んでくるリズムの打ち方など、HIP HOPの基盤を用いてチルアウトへと誘うトラック。どこか寂しげな和楽器の音や歌声のみが残る終わり方など、原曲の賑やかさが泡沫の夢に思えてくる。過ぎし日を1人ぽつんと回想していると考えれば〈会いに行くよ〉には強烈な感傷が募り、最後のサビ前から現れる子供たちの声のサンプリングは曖昧な記憶の中にいるかのよう。この新アレンジは戻れない日々に思いを馳せる様を表現すると同時に、「パプリカ」の色褪せないメロディを強く印象づける。広く親しまれた旋律から新たな時間軸を呼び起こし、何年先でも聴き返したくなる楽曲に仕上げたのだ。

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる