<[NOiD]>永井優馬氏が語る、SUPER BEAVERとの出会いやレーベル運営の意義「人生背負ってるつもりで一緒に歩んでいきたい」

[NOiD]永井氏が語るレーベルの意義

 バンドシーンを引っ張り、ライブハウスの“今”を担う気鋭のレーベルを取材する連載「次世代レーベルマップ」。第4回は、<murffin discs>内にて2013年に立ち上がり、SUPER BEAVER、sumika、Amelie、なきごとの4バンドを輩出した<[NOiD]>より、レーベル代表の永井優馬氏を迎えた。SUPER BEAVERやsumikaとの出会いから現在に至る経緯や、レーベル運営における核となる想いまで。永井氏の原体験や音楽的ルーツにも迫ることで、我が道を信じ、アーティストの意向を最大限尊重しながらロックシーンの中で花を咲かせる<[NOiD]>の在り方が浮き彫りになるインタビューとなった。SUPER BEAVERのメジャー再契約という歓喜のニュースが飛び交う今こそ、一人でも多くの人に読んで欲しい。なお、次回は、<murffin discs>内のレーベル<TALTO>代表・江森弘和氏を迎える予定だ。(編集部)

「知ってくれる人が増えれば絶対勝てるって信じてた」

ーー永井さんはどういう経緯で<[NOiD]>立ち上げに至ったんでしょうか。

永井優馬(以下、永井):僕はもともとshibuya eggmanで、ライブハウスでステージ周りの手伝いとかドリンクとか受付をやってたんですね。主にメロディックパンクを聴いて育ったんですけど、昔eggmanでlocofrankのライブを観に行ったことがあって、「あのライブハウスよかったな」みたいなイメージでeggmanに履歴書を送ったところが始まりでした。あとはフェスをやってみたいというのも根本にあって。そしたら今の社長に「イベントを大きくしていくポジションをやった方がいいよ」って言われて、eggmanのブッキングのポジションにつくことになって。それから『[NOiD]』っていうイベントができて、第1回にThe Mirrazとthe band apartの対バンをやったら即完したんです。結果的にそれが今のレーベル名になったんですけど、SUPER BEAVERとは本当に道端で友達に紹介してもらったぐらいの出会い方をするんですよ。

ーーというのは?

永井:僕と柳沢(亮太)と藤原(“32才”広明)が同い年で、友達から柳沢を紹介してもらってから、同い年飲み会みたいな場でよく会うようになっていて。その時、SUPER BEAVERがソニーから自主レーベルに戻ってたんですけど、たまたまeggmanの社内でビーバーのCDプレスを担当していたのが僕だったんです。で、リリース日にお世話になった人を集めて飲み会するっていうのが絶対にあって(笑)。そこにプレス担当として僕も呼んでもらってたんですよね。そのこぢんまりしたパーティーで飲んでたとき、藤原に「eggman内でレーベル作って一緒にやろうぜ!」って僕が言ったんです。自分たちのお金だけだと何もできないのは本人たちも知ってたから、すごく真剣に考えてくれて。そこからイベント名の<[NOiD]>を名前に冠して、SUPER BEAVERが所属するレーベルとして立ち上がりました。

ーーメロディックパンク好きだった永井さんから見て、出会った時のSUPER BEAVERはどんな印象だったんですか。

永井:こんなにカッコいいのに、なんでまだこのレベルに留まっているんだろうって思いましたね。レーベル立ち上げることになってからは、ビーバーの4人と同じ方向を向こうって思ったし、バンドをもっと広げるためにどうしたらいいんだろうって内側から見る感覚になったというか。メンバーと同じ気持ちでいるつもりだし、それはこの後一緒にやるようになったsumikaも同じですね。

SUPER BEAVER「ありがとう」MV(バンドver.)
SUPER BEAVER「青い春」MV (Full)

ーー<[NOiD]>はSUPER BEAVERと歩むためのレーベルだったとのことですが、sumika所属に至ったのはどういう経緯だったんでしょうか。

永井:彼らはもともと別のバンドをやってたんですけど、メンバーが抜けてからは自主レーベルになっていて、ビーバーと似た境遇だったんですよね。ギターの隼ちゃん(黒田隼之介)なんてその前のバンドから知ってるし、僕はSUPER BEAVERよりsumikaの方が付き合い自体は長いんですよ。だから<[NOiD]>でSUPER BEAVERと一緒にやるって言った時、sumikaはどんな気持ちだったのかなって思います(笑)。その後、sumikaがどこかに所属する/しないを模索してた時に、ビーバーの柳沢が倒れて2カ月バンドを離れたんですよね。そのタイミングでサポートギターを迎えてツアーを回ったんですけど、半分近くはsumikaの隼ちゃんに助けてもらって。新潟とか一緒に行ったし、sumikaのメンバーと一緒に話す機会も増えましたね。前任スタッフが追いかけていた経緯もあって、(片岡)健太くんとも会って話して、「じゃあ<[NOiD]>で一緒にやろう」って決まった感じだったと思います。もともとイベントの『[NOiD]』でSUPER BEABERと対バンしてたし、点と点が繋がった感覚は僕の中にもあって。今となっては、ビーバーもsumikaも武道館・アリーナクラスになれたけど、昔からそこに行き着けるような音楽をやっているのに、自主でやるには限界があったというか、僕らレーベルが着火剤になって、後押しできることが絶対あるだろうなと思ったんですよね。

sumika / Lovers【Music Video】
sumika / ふっかつのじゅもん【Music Video】

ーーその2バンドが揃ったことで、<[NOiD]>のレーベルの色合いも見えてきますね。

永井:提示の仕方は違うんですけど、sumikaとビーバーは歌ってる根本の部分がすごく似ているバンドだと思っていて。柳沢には「<[NOiD]>の意味の部分で“No Identification For Our Sounds.”という言葉を掲げていて、それを後付けでジャンルもへったくれもねえ」って言われたんですけど(笑)、メロディックパンクが好きな僕が、ビーバーもsumikaもAmelieもなきごとも大好きになれたから、世間の人たちも絶対に同じような人はいるだろうって思ったんですよ。「SUPER BEAVERって聴いたことなかったけど、いいバンドじゃん!」ってメロディックパンク界隈の人に言われると嬉しくて。それが結果的に『京都大作戦』あたりにも繋がったんですよね。京都MUSEにSUPER BEAVERのツアーで行った時に、10-FEETのNAOKIさんとROTTENGRAFFTYのNOBUYAさんの2人が「優馬がやっとるバンド、見に来たで」ってふらっと見にきてくれたことがあって。ビーバーのメンバーとは初めましてだったんですけど、2人とも楽屋挨拶から打ち上げまで出てくれて、それがきっかけかはわからないですけど、その年の『ロットンの日』と『京都大作戦』にビーバーの出演が決まったんですよ。今となってはビーバーもその畑の中のひとつみたいになってますけど、先輩たちが気に入ってくださったから繋がったし、壁が全部ぶっ壊れた感じはしましたね。

ーーロットンや10-FEETの体現してきたパンクとは世代的に後ですけど、SUPER BEAVERが体現しているのもやはりパンクですよね。J-POPもギターロックも経由してきた上で、とてもまっすぐな言葉で歌われているパンクだなって。

永井:そうそう。sumikaもビーバーも青パン(青春パンク)世代なので、根っこにはしっかりあると思います。

ーーAmelieとなきごとへの印象も伺いたいです。

永井:Amelieは、mickが完全にYUKIさん教なんで、JUDY AND MARYを聴いて育ってきたという背景がまずあって。世代や流れ的にSHAKALABBITSも通ると思うんですけど、シャカラビが解散する前のEX THEATER ROPPONGIのイベントで、Amelieが1発目として呼んでもらえて。そこで初共演をしてmickは終始緊張してたし、大号泣してたんですよ。僕もやっぱりそこだと思ってやってきてますね。

Amelie 「メグリメグル」 【MUSIC VIDEO】
Amelie 「雨よ降れ」MUSIC VIDEO

永井:なきごとはオーディションで出会ったんですけど、「メトロポリタン」を聴いて「なんだこれ!」って衝撃を受けた覚えがあります。応募してきた時点ではまだ初ライブもしてないような状態だったし、スタッフ投票的にはosageがグランプリを獲ったんですけど、その会議が終わった後に「そういえばあんなに推してたけど、なきごとも一緒にやらなくていいの?」って志賀に言われて。急きょ準グランプリを新設したんですよね。

ーーなきごとのための準グランプリだったんですね。

永井:そうそう。あの子たち、SAKANAMONとかが好きなんで、<TALTO>の方が入りたかったと思うんですけど(笑)。推してたのは僕だったんで、「僕と一緒にやるってことは<[NOiD]>だよ」っていうのはもちろん説明しました。でも、ギターの岡田(安未)がSUPER BEAVERのコピーバンドをやってたって言ってたので、すごく嬉しかったですね。10個ぐらい年下なんで、最初は戸惑いましたけど......。10個下の女の子としゃべることって普段の生活ではあまりないじゃないですか(笑)。

ーーはい(笑)。

永井:でも2人とも独自の芯を持ってる子なんで面白いですね。例えばMV撮影で「ここで目線合わせるといいよ」とか、経験で教えてあげなきゃいけないことがあると思うんですけど、彼女たちは自然にできてるので、「え、前にどこかで女優やってた!?」とか思っちゃいます(笑)。

なきごと / 『メトロポリタン』【Music Video】
なきごと / 『癖』【Music Video】

ーー<[NOiD]>の歩みはそのまま2010年代ロックシーンの歩みとも重なると思うんですけど、シーンの流行に交わることなく、しっかりと独自の強みを活かして躍進してきている印象があって。特にSUPER BEAVERは劇的なメジャー復帰を果たしましたけど、彼らがこれだけのストーリーを歩んでこれたのは、どうしてだと感じますか。

永井:ここはメンバーの言葉を借りますけど、彼らはエレベーターもエスカレーターも使ってないからだと思います。本当は使えるなら使いたいのかもしれないですけど、結果的に階段を一段ずつ上がっているし、ストーリー性を作りたくて作ってるわけじゃないんですよね。本当はメジャー再契約を、4月に代々木のフリーライブで大々的に発表する予定だったんですよ。1週間前に告知したら何人集められるだろうって思いながら、しかもそれをSUPER BEAVERのTwitter、インスタライブ、YouTubeだけじゃなく色々な配信サイトで同時に生配信することも考えていて。そこで「もう1回ソニーに戻る」って言ったらすごいと思ったし、やっぱり直接伝えたい意志をメンバーがしっかり持ってたのが大きかったんですけど、新型コロナウイルスでバタバタと企画が全部倒れちゃって。あの時ってやっぱり手探りで毎日状況が変わっていったし、主題歌になった映画も延期になったりして、そういう意味で言うと、運悪いなとは思いますよね(笑)。でも、僕がマネージャーについた時からSUPER BEAVERが言ってることは変わっていないし、「あなたに向けて歌ってるんだ」っていう想いは何もブレてない。真っ直ぐにやってきて、「こんなにカッコいいバンドなんです!」って宣伝活動してきた中で、知ってくれる人が増えれば絶対勝てるって信じてたので。

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