Awesome City Clubが語る、5年のドラマを経た自由度のある表現「音楽に対して誠実でありたい」

Awesome City Clubが語る、5年のドラマを経た自由度のある表現「音楽に対して誠実でありたい」

 Awesome City Club(以下、ACC)が約1年5カ月ぶりとなるニューアルバム『Grow apart』をリリースする。

 前作『Catch The One』(2018年12月)以降、ベーシストのマツザカタクミの脱退、さらにレーベル移籍を経験し、「バンドを1から構築し直さないといけなかった」(atagi)というACC。配信シングルとしてリリースされた「アンビバレンス」「ブルージー」「バイタルサイン」を含む本作には、プロデューサー/アレンジャーとして、いしわたり淳治、久保田真悟(Jazzin’park)、ESME MORI、トオミヨウ、田中隼人、永野亮(APOGEE)などが参加。ACCの優れたポップネスを大きく進化させた充実作に仕上がっている。atagi、PORINへのインタビューを通し、バンドのターニングポイントなるであろう『Grow apart』の制作プロセスとACCの現状を紐解いてみたい。(森朋之)

何のためにバンドをやっているか、どういう音楽をやりたいのか(atagi) 

ーーニューアルバム『Grow apart』が完成しました。メンバーの脱退、レーベル移籍を経ての新作ということもあり、前作とはかなり違った手ごたえがあるのでは?

atagi:そうですね。本来予定していたリリースの時期よりも、かなり遅れてしまったし、ようやく出来上がったという感じです。

PORIN:リリースできてなかった分、ファンのみんなに会える機会も減ってましたからね。去年1年間は、メンバーの脱退に向けての話し合いだったり、音楽をやる環境を整えなくちゃいけなかったので、道のりは長かったです。

atagi:まず、メンバーが減るということがものすごく大きい出来事で。バンドの価値観もそうだし、もう1回、1から構築し直さなくちゃいけなかったんですよね。このバンドを始めた当初から、音楽的な志向、活動のビジョン、最終的なゴールといったものも、共有できているようでいて、じつはじっくり話し合う機会が減ってきてたんですよ、おそらく。メンバーが抜ける、抜けないという時期に、改めて根本的な部分ーー何のためにバンドをやっているか、どういう音楽をやりたいのかーーをリビルドした結果、このアルバムができたんじゃないかなと。

PORIN:今思うと、抜けちゃった彼と4人(atagi、PORIN、モリシー、ユキエ)の間にギャップがあったんですよね。4人が目指している方向性は一緒だと確認できたことで、団結力みたいなものが強まって。

ーー“目指す方向”を具体的に言うと……?

atagi:言語化できるものではないというか、ひと言では表せないですね、少なくとも。あえて言葉にするなら、音楽に対して誠実でありたいということ。あとは、バンドはあくまでも乗り物であるということかな。運命共同体でもあるんだけど、独立したクルーでもあるというか……。だからこそ、“バンド”じゃなくて“クラブ”でよかったんだろうなというところに帰結したので。

PORIN:音楽性というよりも、スタンスの話なのかなと。メンバー一人一人が、ACCである意味、「このクラブで何ができるか?」をちゃんと見い出せているかが大事なので。今の4人は、それができているんだと思います。

ーー音楽的な志向もある程度は共有しているんでしょうか?

atagi:どうだろう? 音楽的なことで言うと、ミュージシャンはみんなそうだと思いますけど、どんどん志向が広くなるじゃないですか。どんなジャンルの音楽に対しても、良いところがわかってくるというか。自分たちもそういう状態になってきているし、音楽を軸にして強い結びつきができている状態とは違うかもしれないです。ただ、ACCとして音楽を作るうえでの価値観は共有できてるんじゃないかなと。

PORIN:メンバーそれぞれ好きな音楽は違うんだけど、5年目を迎えて、atagiさんが作る曲への信頼だったり、“ACCっぽさ”が好きということは共通していて。そういう部分はまったく心配してないですね。

atagi

ーーでは、アルバムの制作について聞かせてください。先行配信された「アンビバレンス」「ブルージー」はESME MORIさん、「バイタルサイン」にはトオミヨウさんがそれぞれアレンジャーとして参加。外部のクリエイターと組んだのはどういう理由だったんですか?

atagi:アルバムの制作に入ったタイミングで、自分たちだけじゃなくて、新しくて具体的な技術を持っている人と一緒にやりたいというのがあって。それは何故かというと、デビューからの5年のなかで、音楽の形や音像がすごい速度で変化した気がして。自分たちがやりたいことは明確だったんだけど、それを形にするためには、もう一つ技術が追い付かない部分があったんですよね。そのためにアレンジャーと一緒にやる必要があったということですね。

ーー“音像の変化”というのは、海外のEDMやオルタナ、R&B、ヒップホップなどの潮流ということですか?

atagi:もちろんそれもあるんですけど、海外のシーンは幅が広すぎるし、トレンドに逆行するカウンター的な動きも常にあるので、ぶっちゃけ“何でもあり”というイメージなんですよ。それよりも自分が意識しているのは、邦楽シーンかもしれないですね。海外のトレンドの質感、サウンドが本格的に入ってきたのはおそらく3年くらい前で、自分たちもそこにアンテナを張っていたし、感度を維持したくて。たとえばドラムでいうと、オン・ザ・グリッドというか、ガチガチにオン・テンポではなくて、あえてレイドバックしていたり、ハイハットだけがヨレていたり。そういう水準の高いものを求められているなかで、今の自分たちの技術で立ち向かうのは難しくて。今回は、そういう部分をとことんまで追求できるアレンジャーの方々と一緒にやったということですね。

PORIN:マツザカが抜けたことで、ACCはバンドから脱却したと思っていて。そのぶん、やりたいことが増えたし、配信シングルでそれを具現化できたことは大きかったですね。atagiもこれまでは、「バンドだから、みんなで楽器を演奏して、その範囲でやれることをやる」という制限があったと思うんですが、それが全部取り払われたというか。

atagi:うん。もっと言うと、バンド名義でやっているにも関わらず、僕自身がやりたいことを一貫できたのも良かったなと個人的には思ってます。アルバムの制作にはかなり時間がかかったし、スムーズに進まないこともあったけど、妥協することなく、やりたいことに忠実でいられたので。

PORIN:活動の環境づくりを終えた頃には、アルバム全体のテーマも生まれてましたからね。そこは順調だったのかなと。

atagi:うん。前作からの1年5カ月の間は、もしかしたらネガティブに聞こえるかもしれないけど、“すれ違い”というものがずっと頭にあって。それをいろんな角度で切り取った楽曲を作りたいと思ったし、それをアルバムのコンセプトにしようと。“すれ違い”には、自分のなかの二律背反だったり、単純に自分以外の人間とのズレだったり、いろんなことがあるんですけどね。楽曲で描いているシチュエーションもそれぞれだし、そのなかで心の機微みたいなものを感じ取ってもらえたらいいなと。

PORIN:リアルにすれ違ってましたから(笑)。一見ネガティブなテーマかもしれないけど、それをポップスに昇華するのは素敵なことだなって。

ーーなるほど。アルバムのリードトラック「最後の口づけの続きの口づけ」は、いしわたり淳治さんが作詞、田中隼人さんがアレンジに参加。いずれもJ-POPのヒットメイカーですね。

atagi:あ、そうですね。この曲も大きなテーマがあって。過去に「今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる」という曲があって、ACCの代表曲と言われることが多くて、それを自分たちの手で塗り替えたい、更新したいという思いがあったんです。なので、あえて(「今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる」と同じく)いしわたりさんと一緒にやれたらおもしろいかなと。J-POPのヒットメイカーと言われたら確かにそうなんですけど、こちらの意識としては、内省的な部分というか、「こういうものを作りたい」というところに起因しているんですよね。

Awesome City Club – 今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる (Music Video)

ーーバンドの表現欲求だったり、ストーリーに紐づいた楽曲であると。このアルバムにとっても、今後のACCにとっても意義のある楽曲になりそうですね。

PORIN:そうですね。男女のツインボーカルはACCの特徴の一つだと思うんですが、その代表曲がずっと「今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる」ということになっていて、それを塗り替えられないことにちょっと危機感もあって。年齢的にも温度感的にもちょっとギャップが生まれていたので、それを超えるような新しいデュエットソングを作りたかったし、それは完全にクリアできたと思います。

atagi:あと、「最後の口づけの〜」には、自分の中の社会的なメッセージも込めたつもりなんですよ。この曲の歌詞って、言っちゃえば不倫の歌じゃないですか。

ーー〈家で大事な彼女が待っているのに/なんだか苦しいや 微笑みかえした〉というフレーズもありますからね。

atagi:そうなんですよね。で、何が社会的なメッセージかというと……今って、いろんな人がすぐバッシングを受けてますよね。特に芸能人の不倫だったり。論理的にいいとか悪いとか、そういう部分に歪みがあるというのかな。誰かを弾劾することに疑問を持たない人に対しての問いかけになればいいなという気持ちもあるんですよね、この曲に関しては。自分にとってはチャレンジだったし、一歩踏み込んだ領域のことが書けたのは良かったなと。

ーーポップミュージックに社会的なメッセージを含ませることも、今のACCだったら可能だと。それはかなり大きな変化ですよね。

atagi:何て言うか、きれいごとでは済まない、灰色としか言いようがない状況もありますからね。そういうリアルなことを曲を通して伝えるのも、今は必要なのかなと。

PORIN:私はスキャンダルには興味がないんですけど(笑)、何が正しくて、何が真実かを伝え続ければいいだけの話かなと。

Awesome City Club / 最後の口づけの続きの口づけを

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