新浜レオンが振り返る、馬飼野康二や長戸大幸との制作秘話 レジェンド作家に学んだ“自分らしい歌の届け方”

新浜レオン、馬飼野康二から学んだこと

佐原は、千葉の子どもの遠足の定番

ーーセリザワさんの歌詞は、とても情熱的ですね。

新浜:前作「離さない 離さない」は〈あなたが欲しいよ〉と歌っていて。振り返るとカバーも含めて〈君〉という言葉で歌ったことはあまりなかったのですが、〈君〉のほうが、より僕の等身大に近いと感じて、それだけに気持ちをストレートに込めることができました。

 歌詞の内容は確かに情熱的ですけど、歌の表現ではその情熱を胸の内に秘めていて、秘めているんだけど抑えきれずに溢れ出てしまうというところに、この曲の魅力があると思っています。Aメロは普通に抑えていて、Bメロでもう喉元まできているという感じになり、サビでウワ~っと溢れ出るような感じです。

ーーオケにはブラスも入っていて、サウンドも情熱的です。

新浜:今は頭から歌で始まるも曲が多いですけど、昔からある歌謡曲の魅力のひとつに、イントロから世界観を作り上げていくというところもあると思っています。馬飼野先生が編曲を手がけた曲で、「傷だらけのローラ」などジワジワと盛り上がるパターンも好きですけど、今回はイントロのドラムも激しく、「さぁ行くぞ~!」と最初から盛り上げていく感じで、頭からパーンと華やかさが全開になりますね。

 ちなみにオケに参加してくださったミュージシャンは、馬飼野先生が集めてくださった超一流のみなさんばかりで、歌をすごく支えてくださいました。また、僕の事務所の先輩であるDIMENSIONのギタリスト=増崎孝司さんが参加してくださっているので、オケにも注目して聴いていただけたら嬉しいです。

ーーMVでは振り付けがあって、新たな魅力を発揮していますね。

新浜:ありがとうございます。幅広い世代に歌謡曲を聴いてもらうため、今回は振り付けを付けていただきました。〈君を〉や〈君に〉のところで、聴く人を指差すところがポイントです。

ーービリヤードやダーツをやっているシーンもありますね。

新浜:ビリヤードのキューを握ったのは、実はMVが人生で3度目だったんです。本当はすごく下手で、MVには奇跡の瞬間が収められています。メイキングに残っているんですけど、何度やってもヘニョッっていう感じで上手く当たらなくて。だからよく見ると、キューを意味なく担いでいたりするシーンが多くて(笑)。他にもウィンクをしているシーンと、回し蹴りをしているところは見どころですね。大学時代にキックボクシングを3カ月だけやったことがあって、その経験が活かされたと思って。僕のなかでは、ここだけ西城秀樹さんの気分です!

ーーカップリングに収録の「佐原の町並み」は、B'zやZARDなどを世に送り出した、音楽プロデューサー・長戸大幸さんの作詞作曲。

新浜:まさかと思って驚きましたし、すごく嬉しいです。最初はタイトルも歌詞もない状態で曲を聴いたので、夏や海がテーマの曲になるのかなと思っていたんです。そうしたらタイトルが「佐原の町並み」で、歌詞も佐原の町のことが書かれていて。佐原は、「北総の小江戸」と呼ばれる千葉の観光地なんですけど。

ーー新浜さんが千葉出身だから、千葉の町がテーマになっているんですね。

新浜:それにしても、まさか佐原がピックアップされるとは思わなくてすごく驚きました。佐原と言うと、千葉の子どもは小学校の遠足などで行くことが定番で、一度は行ったことがあるという人が多い場所なんです。デビューしてからも、チバテレビのロケで佐原に行ったことがあって、小江戸と呼ばれる風景の美しさももちろんですけど、そのときは地元のみなさんの温かさに触れ、町のことを全国に広めたいという思いがひしひしと伝わってきて。千葉県内を数多くロケしたなかでも印象的で、ことあるたびに「佐原はすごく良いところ」とスタッフの方にも話していました。

ーー楽曲は、グループサウンズとムード歌謡が融合したようなサウンド感で、最初に聴いたときはどんな風に感じましたか?

新浜:表題曲のときも思ったんですけど……きっと当時を知る方々には懐かしさや親しみやすさを感じていただけると思いますが、24歳の僕にとっては新しくて新鮮でした。僕は幅広い世代に歌謡曲の魅力を伝えていきたいと思っているので、両者のちょうど中間の良いバランスのところを突くことができたと思います。

ーー歌詞では、かつて愛した人との思い出の場所として、佐原の風景を巡っていきます。歌詞に〈あなたといた1年〉とあり、新浜さん自身もデビューしてちょうど1年なので、新浜さんの1年を振り返るような部分もあるなと思いました。

新浜:ああ、確かにそうかもしれないです。実際にこの曲を歌っていると、とても切ない気持ちになります。それはもちろん歌詞に感情移入しているのもありますけど、自分の1年が思い起こされて「走ってきたな~」という感慨が沸いてくるからです。だから佐原のことを歌っている曲ですけど、この曲を通じて、聴いてくださった方それぞれの景色を思い浮かべてもらっても良いなと思います。

ーーまた、〈素顔の僕だった〉というところが急に早口になっていて。レコーディングで大変だったところはありますか?

新浜:この曲のレコーディングでは、新たな引き出しを本当にたくさん引き出してもらって。〈素顔の僕だった〉のところは、まさにいちばん苦戦したところです。演歌/歌謡曲というのは言葉がより伝わることを意識するのですが、この曲は言葉がギュッと詰まっているところが多くて。特に〈素顔の僕だった〉のところは、僕自身はちょっと違和感があるかなと思っていたのですが……どうですか?

ーーその違和感が、良い意味でフックになっていると思いました。若い世代でも入りやすいポイントになっているかもしれない、と。

新浜:なるほど。そう言っていただけて安心しました(笑)。

ーー長戸さんからは、何かアドバイスはありましたか?

新浜:馬飼野先生と同じく、僕の声の良いところに合うものを探してくれて。曲も3パターンくらい歌って、そこから良いところを組み合わせる形で作ってくださったんです。サビの最後の部分は、声がギリギリ裏返るかどうかのところで歌っていて、そういうギリギリのところにも、自分の魅力があると気づかせていただきました。

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