Newspeakが投じた「Pyramid Shakes」の意味 バンドの変遷から4カ月連続リリースの背景までを探る
新型コロナウイルスの感染拡大により、以前のように観客を入れてライブを開催することが難しくなったことを受けて、Newspeakが4カ月連続でシングルをリリースすることを発表。その第1弾となる「Pyramid Shakes」の配信がスタートした。そこで本稿では、あらためてNewspeakとはどんなバンドなのか振り返るところから、彼らの魅力や今回のリリースにあたっての想いに迫る。
Newspeakは2017年の初めから本格的に始動した。筆者が初めて彼らのライブを観たのは、続く6月に会場限定EP『What We Wanted』をリリースした頃。そのオリジナリティとポップな強度に、例えばOasisやKasabian、Coldplay、The KillersやArctic Monkeys、The 1975といった、インディペンデントな姿勢をスタジアムに響かせ、大衆的なレベルでロックの概念を一歩前に推し進めたバンドの姿が重なった。
そして彼らは同じ年の『SUMMER SONIC』や『マグロック』といった大型フェスティバルに早くも出演。11月には私がそのパフォーマンスの先に見たスタジアムへの予感が確信に変わるシングル『July』をリリースする。夢も希望も切なさも儚さも、あらゆる感情を凝縮し爆発させたようなメロディと壮大なサウンドスケープは、“圧倒的な牽引力とカタルシス”という彼らのイメージを決定付けたと言っていいだろう。
では、なぜNewspeakはこれほどまでにビッグなエネルギーを持っているのか。それはメンバーそれぞれのバックグラウンドに由来しているように思う。
リヴァプールに在住していた経験があり、ワールドスタンダードなロックやエレクトロニックミュージックと生活の距離が近い環境で育ったRei(Vo/Key)。60年代のブルースロックやサイケデリックロックといったクラシックなギターミュージックに触発され、オンタイムで流れていたインディーロックの洗礼を受け、go!go!vanillasの初代ギタリストとしても腕を磨いたRyoya(Gt)。インディーロックだけでなくニュー・メタルやファンクなどにも没頭していた時期があり、ライブハウスでPAとしても働き音を作るスキルを学んだYohey(Ba)。ポップパンクやメロディックパンクをルーツとしたストロングスタイルのドラミングを得意としながら、音楽プロデューサーとしても活躍する視野の広さや音に対する繊細な一面も持つSteven(Dr)。そんな4人の個性が“ポップを塗り替える”という同じ方向を向いたことによる化学反応と、作曲からマスタリングまで、曲を世に出すまでのすべてを自分たちだけで完結させられるからこその鮮度(衝動)と純度(独自性)を武器に、2018年10月にはミニアルバム『Out Of The Shrinking Habitat』をリリースした。
続いて2019年にリリースしたアルバム『No Man’s Empire』では、収録曲中「Wide Bright Eyes」のミックスをBeckやBelle And Sebastianを手掛けたTony Hofferに、「Stay Young」はDIIVやArto Lindsayらを手掛けたDaniel J Schlettに依頼し、客観的な視点を加えることで持ち前の魅力はさらに大きくアップデート。
そのことについて本人たちに質問すると、「Wide Bright Eyes」について、「“みんなに踊ってほしい”ってリクエストしたんだけど、びっくりした。自分だったらあそこまでスネアの音は大きくしない。勉強になった」(Steven)、「クラブのチルスペースでまったりしていたら“踊りやがれ”ってフロアに放り投げられたみたいな」(Rei)と話してくれた。確かに、過去の曲と聴き比べてみるとその進化はよりはっきりとわかる。