Liturgy、Trivium、THE冠、Vader……コロナ禍を吹き飛ばすメタル/エクストリームミュージック界必聴の7作

 前回の連載(※参照:Code Orange、オジー・オズボーン、5FDP、In This Moment……良作続きのメタル/ラウドシーンで注目すべき7作)を執筆した4月頭の時点では、新型コロナウイルスの影響は海外アーティストの来日や国内でのライブ開催に暗い影を落とすにとどまっていましたが(いや、「とどまる」どころか大打撃なのですが)、4月7日の緊急事態宣言発令以降はCDショップ休業などで思うようなプロモーションが行えないため、ハードロック/ヘヴィメタル(以下、HR/HM)やエクストリームミュージック界のビッグタイトルがリリース延期になることも少なくありません。この5月だけでも、Lamb Of God待望の新作『Lamb Of God』が当初の5月8日から6月19日に発売延期、Bon Joviの4年ぶりニューアルバム『Bon Jovi 2020』も5月15日リリース予定から発売日未定延期に。こういった悲報に肩を落とすリスナーも多いのではないでしょうか。

 もちろん、そんな状況にも屈せず予定どおり新作を届けてくれるアーティストもたくさん存在し、日常を悶々と過ごす我々に勇気を与え続けています。今回はこの4〜5月に発売された新作の中から、非常に聴きごたえのある「今聴いておくべき」バラエティ豊かな7作品を紹介したいと思います。

Liturgy『H.A.Q.Q.』

Liturgy『H.A.Q.Q.』

 Liturgyはアメリカ・ニューヨークのブルックリンを拠点に活動するハンター・ハント・ヘンドリックス(Vo/Gt/Electronics)率いるエクストリームメタルバンド。DeafheavenやAlcestとともに、2010年代の新世代ポストブラックメタル/ブラックゲイズの代表的バンドとして紹介されることも多く、これまでに本作『H.A.Q.Q.』を含め4枚のアルバムを発表しています。このアルバムはCDでのフィジカルリリースこそ今年5月中旬でしたが、実は昨年11月上旬に無告知でデジタルリリース済み。厳密には2019年のリリース作品になりますが、日本盤化を通じて再び話題になってほしいという願いを込めて、改めてここで紹介させていただきます。

 エレクトロニカ色を強めただけでなく、クリーンボイスを前面に打ち出した前作『The Ark Work』(2015年)はその実験的な作風で賛否を呼びましたが、今作ではそれ以前のブラックメタル的作風が復活。ドラムのブラストビートやギターのトレモロリフなど、象徴的なプレイが随所にフィーチャーされ、ボーカルもデスボイスでひたすら叫びまくるなど、そのアグレッシブさは初期作にも匹敵するものがあります。

 と同時に、本作ではクワイアなどのボーカルワーク、ピアノやハープ、ビブラフォン、グロッケンシュピール、ひちりき、竜笛といったアコースティック楽器を大体的に使用し、前作で見せた環境音楽/宗教音楽的な側面も残されているほか、カットイン/カットアウトなどのデジタルエフェクトも多用されており、バンドの進化を大いに感じさせる意欲的な内容に仕上がっています。エクストリームミュージック/エクストリームメタルを新たな次元へと導く注目作という点において、今作は前回の連載で紹介したCode Orange『Underneath』との共通点も見受けられる、2020年代のシーンを占う上で非常に重要な1枚になるのではと確信しています。

Liturgy – God of Love

Trivium『What The Dead Men Say』

Trivium『What The Dead Men Say』

 山口県岩国市生まれの日系アメリカ人、マシュー・キイチ・ヒーフィー(Vo/Gt)率いるTriviumは2000年代以降のUSメタルシーンを牽引してきたバンドのひとつ。初期はメタルコアをベースにした近代的なサウンドで人気を集めましたが、徐々に正統派ヘヴィメタル/スラッシュメタル色を強めていったほか、作品ごとにカラーの異なる味付けでリスナーを楽しませ続けています。

 そんな彼らが今年4月下旬に発表した通算9作目のオリジナルアルバム『What The Dead Men Say』は、前作『The Sin And The Sentence』(2017年)で展開した「オールドスクールメタルをモダンに味付けした」スタイルをブラッシュアップし、無駄を削ぎ落としたシンプルで濃厚な形に仕上げられています。「Catastrophist」「Amongst The Shadows & The Stones」など複雑な展開を持つ6分前後の長尺曲がありつつ、前々作『Silence In The Snow』(2015年)での経験が活かされたミディアムテンポの歌モノ「Bleeding Into Me」や、ツインリードが気持ち良い疾走チューン「The Defiant」など、過去にTriviumが見せてきたさまざまなスタイルを集約。しかし、単なる過去の焼き直しでは終わらず、新たな魅力も散りばめられている。本作は過去20年の集大成であると同時に、次の10年を見据えた“新たなスタンダード”でもあると言えるのではないでしょうか。

Trivium – What The Dead Men Say [OFFICIAL VIDEO]

Nightwish『Human. :II: Nature.』

Nightwish『Human. :II: Nature.』

 続いては、世界最大の“メタル大国”フィンランドを代表するシンフォニックメタルバンド、Nightwishによる通算9作目のオリジナルアルバム『Human. :II: Nature.』。近年は結成20周年という節目を迎え、ベストアルバムや記念ライブのCD/映像作品などが多数発表してきた彼らですが、オリジナルアルバムとしては前作『Endless Forms Most Beautiful』(2015年)から実に5年ぶりという過去最長のインターバルを置いて制作。男女3人のシンガーを擁する彼ららしい歌モノ楽曲で構成されたDISC1と、8部構成のインストゥルメンタルナンバーからなる31分にもおよぶ組曲を収めたDISC2による初の2枚組大作となっています。

 “ヒューマン(=人類)”と“ネイチャー(=自然)”という2大テーマが用意された本作は、DISC1ではフローア・ヤンセン(Vo)やマルコ・ヒエタラ(Ba/Vo)、トロイ・ドノックレイ(Uilleann Pipes/Low Whistle/etc.)という3人のシンガーの特性を見事に活かしたアンサンブルを楽しむことができ、王道のシンフォニックメタルナンバーに加えフォークメタルの要素が強調された楽曲など、従来のNightwishらしさが凝縮された内容となっています。一方で、DISC2のインスト大作「All The Works Of Nature Which Adorn The World」ではフルオーケストラを全面的にフィーチャー。地球規模の壮大さが表現されたこの組曲、メインコンポーザーであるツォーマス・ホロパイネン(Key)の奇才ぶりが遺憾なく発揮された、クラシックの交響曲にも匹敵するトゥーマッチな仕上がり。将来的に生オーケストラを携えた完全再現ライブも期待できそうです。

NIGHTWISH – Music (Official Lyric Video)

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