木村昴は、いかにしてシーンにおける「ヒップホップの伝道師」に? ラップの輪を広げた声優活動を辿る

 アニメ・ゲームのCV(キャラクターボイス)や洋画・海外ドラマの吹き替え、ナレーションといった声の仕事に加え、近年はコンテンツに紐づくステージパフォーマンスやアーティスト活動を行う機会も増え、大きな注目を集めるようになった声優という職業。それだけに独自のタレント性を発揮している人物が増えてきた印象だが、その中でも「ヒップホップ好き」という個性を活かすことで、活動の幅を一気に広げているのが、ここで紹介する声優・木村昴という人だ。

『「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-」キャラクターソングCD1「Buster Bros!!! Generation」 イケブクロ・ディビジョン』

 現在女性を中心に絶大な人気を集めているキャラクターラッププロジェクト『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』において、イケブクロ・ディビジョンのBuster Bros!!!に所属する山田一郎役を担当。プロジェクトの始動当初、12人のラップを行うキャラクター(現在は18人に増加)のなかでも飛びぬけてタイトなマイク捌きを披露して、ヒップホップ好きのリスナーをも驚かせた木村。しかも彼は好良瓶太郎(こうらびんたろう)というペンネームを用い(名前の由来は木村の好物がコーラだから)、山田一郎のソロ曲「俺が一郎」「Break the wall」やBuster Bros!!!「IKEBUKURO WEST GAME PARK」などのリリック(作詞)も手がけている。ラップミュージックを軸にした『ヒプマイ』というプロジェクトにおいて、演者の立場からヒップホップ愛を注ぐ彼の情熱が、コンテンツにもたらした貢献度の大きさは計り知れないほどのもの。そんな彼が、どのような軌跡を辿って、声優シーンにおける「ヒップホップの伝道師」的な立ち位置に至ったのかを、改めて探りたい。

 そもそも彼が声優として世の中に認知されるようになったのは、声優デビュー作でもある『ドラえもん』のジャイアン役であることに、異論を挿む人はいないだろう。『ドラえもん』がTV放送開始から25周年を機にリニューアルを行うことになり、そのタイミングでキャストを総入れ替えしたのに伴い、前任のたてかべ和也から引き継ぐ形で木村がジャイアン役に抜擢されたのが2005年のこと。当時14歳の中学生だった彼は、当時声優経験もなく、記念のつもりでオーディションを受けたところ、合格してしまったというエピソードは、よく知られている。

 そのためもあってか、しばらくはジャイアン役を除いて声優としての活動を行っていなかった彼だが、奇才・幾原邦彦監督によるTVアニメ『輪るピングドラム』(2011年)で高倉冠葉役を務めたのを機に、他の役どころにもチャレンジするようになり、声優としての芸幅を広げていく。また、それと前後して2009年には、自身が座長となる劇団『「天才劇団バカバッカ』」を結成。現在に至るまで定期的に公演を行っているほか、同劇団のメンバーと共にニュージャップヒーローズというラップパフォーマンスユニットを結成するなど、学生時代からヒップホップ好きで、実際に友人とラップクルーを結成していたという自身の趣味を、声優・俳優としての活動にも結び付けてきた。

 その後も『CODE:BREAKER』(2012年)の平家将臣役、『ピンポン THE ANIMATION』(2014年)のアクマ役などでアニメのキャラクターを演じるなか、2015年にはTVアニメ『Dance with Devils』の南那城メィジ役として歌ったキャラクターソング「Hello!! CrazyWorld」「VANQUISH」でラップを披露。この頃にはすでに彼のラップ好きという趣味はある程度知られており、2016年にはフリスクのWEB用CM動画で、KEN THE 390、はあちゅう、Pennyと「BOOSTER」というラップソングで共演(リリックはKEN THE 390が担当)。ラップは素人のはあちゅうはともかく、ラッパーとしてシーンの最前線で活躍するKEN THE 390、『「第1回 社会人ラップ選手権』」の優勝者として知られるPennyを相手取りながらも、まったく見劣りしないラップをサイファースタイルで聴かせて、確かなスキルの持ち主であることを示した。

 また、2015年9月に、MCバトルにフォーカスを当てたTV番組『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日系)がスタートし、世間的にもラップミュージックへの注目が高まっていた影響も大きかったのだろう。2017年9月には『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』が始動し、アニメ周辺にもラップ/ヒップホップの要素を取り入れた演出が目立つようになるなかで、元々ラップ好きを公言していた木村のラップに絡んだ仕事も増えていく。例えば2018年1月に公開されたNetflixオリジナルアニメ『DEVILMAN crybaby』では、劇中で不良グループがフリースタイルを行うシーンがたびたび登場するのだが、そこでKEN THE 390、般若、YOUNG DAISといった本職のMCに混じってラップするのが、木村昴その人だったりする。

 さらに2018年秋クールに放送されて人気を集めたTVアニメ『ゾンビランドサガ』では、ラップをメインに据えた第2話「I♡HIPHOP SAGA」において、主人公の女の子たちに絡む3人組、サガ・アーケードラッパーズのラッパーA役として出演。ラッパーB役の武内駿輔、ラッパーC役の宮城一貴(趣味はフリースタイルラップ!)と共に佐賀弁混じりのラップ曲「サガ・アーケードラップ」を披露した。他にも、国内外の豪華アーティストが音楽で参加して話題を呼んだ渡辺信一郎総監督によるアニメ『キャロル&チューズデイ』(2019年)では、ラッパーのエゼキエル役を担当。本作の劇中歌は声優ではなくアーティストが歌う形式だったので、木村本人がラップしたわけではないが、エゼキエルの楽曲「Crash The Server」はUSの人気ラッパーであるデンゼル・カリーがラップを担当、楽曲はフライング・ロータスが制作して世界的に注目を集めた。

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