ヒプマイ Fling Posseはディープな絆と色を携えて新たなフェーズへ 最新作で明かされたシブヤ・ディビジョンの真実の物語
シブヤ・ディビジョン「Fling Posse」3名によるソロ曲3曲とドラマトラックが収録されたCD『Fling Posse -Before The 2nd D.R.B-』が、2020年2月26日にリリースとなった。
『ヒプノシスマイク』は、魅力的なキャラクターとその相互関係、各区画の領土を巡るラップバトルの行方や張り巡らされた伏線が魅力的な物語、そして声優と本格的なヒップホップの融合で、音楽ファンからも注目される人気プロジェクトだ。
Fling Posseは、飴村乱数(CV:白井悠介)、夢野幻太郎(CV:斉藤壮馬)、有栖川帝統(CV:野津山幸宏)の3名からなる、シブヤ・ディビジョン代表チーム。渋谷の街を象徴するような、色鮮やかなポップさや捻りの効いた音楽性を持ったチームである。
今回リリースされた『Fling Posse -Before The 2nd D.R.B-』は、これまでの個性を前面に出したソロ曲とは打って変わって、切実な感情が滲む楽曲が揃っている(これはドラマパートを聴けば納得するところだ)。キャラクター性を飛び越え、よりパーソナルでエモーショナルな部分がフィーチャーされたことで、3人がそれぞれ音楽的な幅を広げた重要な1枚となった。
まず1曲目から衝撃的だった。作詞曲をAmy Ray、作編曲をILLCAMPが手掛けた「ピンク色の愛」は、飴村乱数のダークサイド全開の一曲。ビジュアル通りのポップでキュートなイメージは一掃され、前作「drops」で〈All I need is in my hands〉と歌われた万能感もない。それどころか〈ボクには 足りていないものは なーい はずなのに〉〈息が続かない〉〈道が 途絶えていく〉と、自身の破滅を予感させるようなリリックが切々と紡がれていく。曲の終盤に語られる仲間への信頼と〈I’m at peace〉は、彼の未来を示す希望なのか絶望なのか——前者であって欲しいと願わずにはいられない。
続いて、夢野幻太郎の「蕚」。こちらはbashoが作詞、「Stella」を手掛けたESME MORIが作詞曲を担当したメロウな一曲だ。これまでストーリーテラーとしての姿勢を崩さずに〈それも嘘なんですけど〉と付け足してきた彼が、〈綴る嘘で誤魔化してく〉と自らの心情をポエトリーリーディングのように訥々と語り、メランコリックなメロディを歌い上げる。このスタイルは、作家らしい夢野幻太郎の純文学的表現がよりリアルな手触りをもってリスナーに届く。これまでの彼を見てきた者は、強く心揺さぶられることだろう。
DALLJUB STEP CLUBが手掛けたのは、有栖川帝統の「SCRAMBLE GAMBLE」。有栖川の撃ち抜くようなラップスタイルに、ダブステップを取り入れたトリッキーなリズムが相まって、複雑な魅力に溢れた楽曲となっている。“ギャンブルに身を投じる人生”ではなく、“人生というギャンブルに身を投じる覚悟”があらわれたまっすぐな歌詞は「シナリオライアー」「3$SEVEN」の作詞を手掛けた森心言(Alaska Jam/DALLJUB STEP CLUB)によるもの。曲中繰り返される〈Here comes Fling Posse〉には、このチームに賭ける気持ちの大きさが感じられ、その宣言に何故か涙腺が緩む。