ヒプノシスマイク シンジュク・ディビジョン「麻天狼」ソロ曲考察 “病める街”の闇は晴れたか

 音楽原作キャラクターラッププロジェクト「ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-」のCD『麻天狼 -Before The 2nd D.R.B-』が3月25日にリリースされた。

ヒプノシスマイク『麻天狼 -Before The 2nd D.R.B-』

 今回CDをリリースしたのは、シンジュク・ディビジョン「麻天狼」。ill-DOCこと神宮寺寂雷(CV:速水奨)、GIGOLOこと伊弉冉一二三(CV:木島隆一)、DOPPOこと観音坂独歩(CV:伊東健人)、この3人によるソロ曲と、彼らの物語を描いたドラマトラックが収録されている。

 「麻天狼」のメンバーを強引に一言で説明するなら、過去を背負う医者、女性恐怖症のホスト、限界社畜サラリーマン……といったところだろう。職業も個性もバラバラだが、”病める街”シンジュクの住民である彼らは、共通して心に闇を抱えている。

 彼らの最初のソロ曲は2017年12月にリリースされ、それから実に2年以上の時が流れた。作中世界の物語も進行し、「麻天狼」はイケブクロ、ヨコハマ、シンジュク、シブヤの4ディビジョンによるバトルを勝ち抜き、見事優勝を果たした。

 すでにリリースされた他ディビジョンのCD楽曲では、各メンバーが敗北を糧に結束を強めていくような様子もあった。では、一度頂点に立った「麻天狼」は、今どんな想いを歌い上げるのだろうか? 彼らの闇はどうなったのか? 一曲ずつ分析していこう。(※僅かではあるが、ドラマトラックの内容が含まるため、未視聴の方は注意していただきたい)

神宮寺寂雷「君あり故に我あり」…迷宮から見上げた空

 まず1曲目は、神宮寺寂雷の「君あり故に我あり」。ゴスペル調のバックコーラスに、春の陽気のような柔らかく爽やかなメロディ。そして〈私の闇は私がケリを付ける…〉と、吹っ切れたような歌い出し。彼の最初のソロ曲「迷宮壁」を聞いたことがあるなら、そのギャップに衝撃を受けたはずだ。

 寂雷は医者だが、かつて殺し屋だった過去を持ち、とある事情から飴村乱数という旧友と袂を分かっている。彼は「迷宮壁」で、緊迫感が支配するメロディにのせて、生と死の憂いを語っていた〈抜け出すためにはまだまだ時間はかかりそうだ〉と。しかし、今回の「君あり故に我あり」で、寂雷はこう歌う。

〈見上げればいつも同じ空 覗いてるビルの隙間〉〈迷いを見透かした 光が優しく包むのさ〉

 彼は今も自問自答を繰り返している。高層ビルに取り囲まれたような”迷宮”の出口は、まだ見つかっていない。しかし、ビルの隙間から空を見上げ、優しく降り注ぐ光に気が付いた。

ヒプノシスマイク-D.R.B-(麻天狼)「君あり故に我あり」

 そして、この楽曲はドラマトラックを踏まえると一層深みを増していく。ドラマトラックでは、釣りを楽しむ「麻天狼」の3人が描かれるのだが(ちなみに過去の楽曲「パピヨン」でも、3人の釣りの様子が伺える)、そこで、寂雷は自分の抱えた過去に向き合おうとする。彼を慕う一二三と独歩が傍に寄り添い、彼の問題を一緒に考えていく。(そしてトラウマを持つ一二三もまた、過去と向き合う決心を固める。)そんな出来事を想起するかのように、サビではこう繰り返される。

〈迷いを見透かした 仲間が優しく笑うのさ〉

 寂雷のソロ曲がこんなに穏やかなものになったのは、一二三と独歩のおかげなのだろう。各々が闇を抱えた「麻天狼」は、支え合い助け合うことで、前に進もうとしている。その道のりは、まだまだ始まったばかりだ。

伊弉冉一二三「パーティーを止めないで」…僕の過去、本当の姿

 次に、伊弉冉一二三の「パーティーを止めないで」。ゴールデンボンバーの鬼龍院翔が提供した、キャッチーでハイテンションな一曲。カラオケで歌えば盛り上がる事間違いなしだ。まさにNo.1ホスト・一二三のイメージ通りの曲のようでもある。

ヒプノシスマイク-D.R.B-(麻天狼)「パーティーを止めないで」

 しかしながら、この曲にも変化が潜んでいる。最初のソロ曲「シャンパンゴールド」で”まだまだ終わらない”パーティーに興じていた一二三が、この楽曲では”パーティーを止めないで”と何度も叫んでいる。一二三はスーツを着て「女好きのジゴロ」の性格になることで、No.1ホストとして華々しく活動しているが、素顔の彼は極度の女性恐怖症である。〈僕の過去を知っても 変わらずにいてくれるの?〉、〈本当の姿が見えますか〉といった歌詞に、以前の楽曲で見せなかった本来の姿が滲んでいる。

〈すべてを包み込んであげる そしていつかは僕も包まれたい〉

 これこそ、女性恐怖症である彼の切実な望みかもしれない。しかし、こう囁かれては、心動かされる人も多そうだ。ジゴロではない人格で本音を歌っても尚、聞き手を惹き付ける……。底知れぬ魅力を持つ男である。

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