ACE COLLECTION、Novelbright……新たなシーンを作る“2020年代的”バンド その活動における2つの共通点

ACE COLLECTION、Novelbright……新たなシーンを作る“2020年代的”バンド その活動における2つの共通点

 ACE COLLECTIONが来たる4月8日、ミニアルバム『L.O.V.E.』をリリース。同作を以ってユニバーサルミュージックよりメジャーデビューする。

 彼らの歩みは急速的なものだった。結成は2017年12月9日。同日よりYouTubeの公式アカウントを設立し、動画の配信を開始。一般リスナーによるTwitterの投稿により、そのうちのひとつ「【マッシュアップ】超ヒット曲をShape of Youにのせて演奏してみた」が爆発的に拡散されると、それをきっかけに認知を広げた。ちなみにこのマッシュアップは、彼らが最初にアップした動画。そしてこれ以降、オリジナル曲の制作期間を設けることを発表した2018年3月16日まで、毎日動画投稿を行っていたというのだから驚きだ。

 過去のインタビュー記事(参照)によると、YouTubeでの配信を始めようと思い立ったのは、知人の助言によるところが大きいようだが、運用自体はメンバー自ら行っており、マッシュアップをやることも、天井からメンバー全員を捉える独特なカメラアングルも、彼ら自身のアイデアだそうだ。メンバー4人のうち、たつや◎(Vo/Gt)とRIKU(Dr)はACE COLLECTION結成前から演奏動画を自身のSNSアカウントにアップしており、その時の経験も役に立っているとのこと。

 若手バンドの活動といえば、これまでは“ライブハウスで地道に活動、会場に集まった観客に手売りCDを販売”というやり方が主だった。先ほど挙げたインタビュー記事では、元々はACE COLLECTIONもそういう活動をする予定だったこと、だからこその葛藤があったことが語られている。

「YouTubeをやることは憧れてきたミュージシャンと活動方法が違うので、色々葛藤はありながらもずっと話し合いを重ねて。最終的に、俺たちがマインド的な部分でブレなければYouTubeをやろうがライブハウスでライブをやろうが一緒なんじゃないかなって。失敗してもまたライブハウスからやり直せるとも思っていたので、やってみることにしました」

 そもそもACE COLLECTIONには結成当初から掲げていた目標があった。それは、1000人規模のライブハウスで初ライブを行い、チケットをソールドアウトさせることだ。その目標を達成することを第一に考え、そのためにバンドが採るべき行動を選ぶことができたこと。その際“あのバンドがこうやっていたから”といった考え方に安住せず、今の時代に適した方法を模索していったこと。それがこのバンドの優れたところだ。その結果、彼らは2019年4月29日にはマイナビBLITZ赤坂で初ライブを開催。チケットをソールドアウトさせ、見事目標を達成してみせた。いまでは、AbemaTVオリジナルドラマ『僕だけが17歳の世界で』の主題歌「70億にただ1つの奇跡」を書下ろし、10代女性から“泣ける”と共感を呼び、さらに話題となっている。

 SNSでの口コミをきっかけに人気を拡大させたバンドといえば、大阪出身の5人組ロックバンド・Novelbrightも当てはまる。メンバーの竹中雄大(Vo)がTikTokにアップした路上ライブの動画を引用した一般リスナーの投稿がTwitterで拡散され、話題になったのは2019年9月10日のことだった。動画内で演奏しているのは「Walking with you」というバンドのオリジナル曲。その直後、9月16~18日集計のBillboard JAPANの週間ストリーミングソングチャートでは100位圏外から25位へと、ランクを急上昇させている。そのことから、TikTok、Twitterで生まれたバズがストリーミングにまで波及していったことが分かる(参照)。

 どうしてこれほどまでに広まったのか。その秘密のひとつは「Walking with you」という曲の構成自体にある。TikTokの場合、ユーザーがスワイプすると次の動画にすぐ移行してしまうため、滞在時間を引き延ばすためには瞬発的な訴求力が必要になってくる。件の動画で切り取られているサビの部分は、ボーカルが地声とファルセットを細かにスイッチさせながら歌う箇所であり、竹中は高音域でのロングトーンも披露している。このように、バンドの持ち味のひとつであるボーカルの歌唱力の高さを、簡略的にアピールできるような作りになっているのがポイントだ。さらにこの曲はサビ始まりであるため、ストリーミングに移動したユーザーは“TikTok/Twitterで聴いたあの部分”を再生したその瞬間に聴くことができる。

 そして、興味深いのが以下、過去のインタビューでのメンバーの発言(参照)。

「始まりはふとしたことで、3月にやった路上ライブ初日に、ベースの圭吾が僕が歌っているところを撮ってTwitterにあげたんです。それが『いい声すぎん?』みたいな通りがかりの第三者が言っている風のものだったんですけど、そのツイートが結構伸びたことがきっかけで。そこから数ヶ月間、戦略的に同じようにやってみたらまた増えていって……。TikTokはフォロワーが少なくても、いい動画は伸びると知っていたし、夏は“強化月間”として路上ライブを地道にやりました」

 圭吾(Ba)のアカウントを見てみると、確かに“歌の上手い人を偶然見つけた人”という設定を想起させるような投稿がいくつか見られるし、実際どの投稿もかなり拡散されている。おそらく、企業によるPRよりも、消費者のリアルな声が跳ねる傾向にあるTwitterの特性を踏まえたうえで、このような投稿をするようになったのだろう。

 ACE COLLECTIONやNovelbrightのような認知の広げ方はしばしば“2020年代的”と言われ、彼らは“セルフプロデュース能力が高い”と称されることが多い。この“セルフプロデュース”という単語、若手邦楽バンド界隈で頻繁に聞くようになったのはいつ頃からだったろうか? と思い返してみたところ、ポルカドットスティングレイに思い当たった。結成は2015年。事務所にもレコード会社にも所属せずに活動するなか、2016年3月に公開された「テレキャスターストライプ」のMVが1年足らずで260万回再生を突破。Google AndroidのCM出演も当時話題になった。バンドの人気はそれ以降も留まることを知らず、今年3月には、初の幕張メッセワンマンを行う予定だった(残念ながら中止になってしまったが)。

 ゲームプランナーとしての経歴を持つ雫(Vo/Gt)は、企業が市場をリサーチしながら顧客の満足する商品を作り続けるのと同じように、リスナーの求める曲をリサーチし、それを制作に反映させていることを度々公言している(参照)。2019年2月にリリースされた楽曲「ラブコール」(2ndフルアルバム『有頂天』に収録)は、「雫さん自身のことを歌詞に書いた曲が聴きたい」というファンからの声を受けて生まれた曲だ(参照)。

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