鈴木愛奈、小林愛香、諏訪ななか……新たな進路へと舵を切ったAqoursメンバーのソロデビュー作に注目
今年1月18日に開催された『LoveLive! Series 9th Anniversary ラブライブ!フェス』で、先輩後輩ユニットを交えた輝かしい一夜の立役者となったAqours。(参照:『ラブライブ!』がファンと紡ぐ“みんなで叶える物語” μ’sからAqours、ニジガクらへ受け継がれるスクールアイドルの輝き)その語り草はまだまだ尽きないばかりだが、そんな彼女たちが今度はグループ外でも新たな動きを見せている。メンバー個人でのアーティスト活動だ。
Aqoursからは、逢田梨香子(桜内梨子役)と斉藤朱夏(渡辺曜役)の2名が、2019年より音楽活動をスタートしており、それに続く形で、鈴木愛奈(小原鞠莉役)、小林愛香(津島善子役)、諏訪ななか(松浦果南役)の3名が声優アーティストとしてソロデビューを果たす。すでに公開済みの試聴音源などで、彼女たちの個性や趣味趣向がそれぞれの楽曲にもいち早く取り入れられていることを知っている読者も多いことだろう。本稿ではそこからさらに発展して、彼女たちの所属レーベルや制作作家陣の繋がりも踏まえながら、各作品を取り上げていきたい。
はじめに、1月22日にランティスより、フルアルバム『ring A ring』を発売した鈴木愛奈。鈴木は学生時代から、アニソンシンガーになることを夢見てきただけに、今回はそのシンデレラストーリーがようやく叶うこととなった。そんな彼女のデビュー作となる本作は、ZAQ×伊藤翼という強力タッグのリードトラック「ヒカリイロの歌」をはじめ、アニソンの殿堂として数々の名曲を生み出してきたランティス謹製といえる、物語の“主人公”感がある堂々としたサウンドの楽曲揃いに。しかし、同作で最も驚かされたのは、アルバム序盤と終盤に収録された、オーケストラ仕立ての全3楽章からなる大作「Eternal Place」の3曲だ。
いわゆるアニメ劇伴といえば、ストリングスによる演奏のものが多く、鈴木の出演作であり、かつランティス作品の『ラブライブ!サンシャイン!!』でも、時に作品のワンシーンを象徴づけるほど重要な役割に据えられる音楽だ。同アニメやランティス制作陣が考えているだろう、歌詞なき音楽で物語の担い手の想いを代弁しうるという音楽への厚い“信頼”は、ひょっとすると本アルバム収録楽曲やその曲順とも共鳴し、鈴木の作品クオリティを引き上げた要因のひとつになったのかもしれない。
また、幼少期より民謡に慣れ親しんできたエピソードから、力強い“こぶし”が特徴とされがちな鈴木の歌声だが、彼女の艶のある声色や粒の細かなビブラートは、管楽器の奥深い音色とも親和性が高く、ボーカルとしてハッキリと耳に残るものだ。これまでAqoursとしての活動などで培った人脈や経験が大いに活きた今作について、「この1枚にすべてを出し切れた」と語っている鈴木(参考:animate Times)。次作以降では、そんな持ち味を今度は逆にさりげなく楽曲に忍ばせてくるのではないかと、早くから期待感が高まる。
続けて、来週2月26日にトイズファクトリーより、シングル『NO LIFE CODE』を発売する小林愛香。2011年に別レーベルよりシングル発表をしている小林は、今回が2度目のアーティストデビューとなる。そんな小林の音楽活動でプロデュースを務めるのは、レーベルメイトの小松未可子らとも親交の深いQ-MHz・田代智一。小林のアルバム表題曲「NO LIFE CODE」も、Q-MHzの4名全員で制作されたもので、彼らの作風であるアッパーながらも緻密なバンドアンサンブルを楽しむことができる。
同曲を聴く上で、あわせて押さえてほしいのがMV映像だ。というのも、同MVはカラフルでキャッチーなテイストながらも、小林の元来の格好よさを前面に押し出してくるという、まさに彼女の一癖も二癖もある人柄を抜群に捉えたものなのだ。彼女の愛嬌ある笑顔を見ながら、少しハスキーがかった歌声を聴くと、そのギャップにも気が付くに違いない。
あわせて田代はもちろん、同じくQ-MHzの田淵智也といえば、変則的な楽曲展開を操る作家として広く知られる人物だ。彼らの手掛ける楽曲は、それまでとは全く違った構成に移る2番からこそ本領発揮するものが多く、すでに公開中の試聴MVも、その後の展開への期待をいい意味で裏切ってくれるかもしれない。小林が今後に色を重ねるアーティストカラーを含めて、次の一手が早々に楽しみにさせられる。