氷川きよしはシンガーとして新たな地平へと向かうーー”自分らしく”踏み出した21年目のコンサートツアーレポ

氷川きよしはシンガーとして新たな地平へと向かうーー”自分らしく”踏み出した21年目のコンサートツアーレポ

 「とてつもなく、すごいものを観てしまった……」。これが初めて氷川きよしのフルステージを観終えた筆者の素直な感想だった。これまでも『NHK紅白歌合戦』のゲネプロなどでその姿は拝見していたものの、正直ここまで“歌のテーマパーク”感の強い、エンターテインメント性に特化しつつも軸にあるのは“歌”という素晴らしいステージを目にすることができるなんて。圧巻や感動なんて言葉が陳腐に思えてしまうほどの素晴らしさだったことを、まずは特筆しておきたい。

 2月1日と2日の2日間、中野サンプラザホールにて『氷川きよしコンサートツアー2020 〜それぞれの花のように〜』東京公演が開催された。1月28日に埼玉からスタートしたばかりのツアーだが、この2日間はそれぞれ昼と夜の2公演、計4公演に約8800人を動員。特に2月2日は氷川のデビュー20周年を記念する1日ということもあり、筆者が足を運んだ昼公演ではこの日ならではのサプライズも用意された。

 ライブは氷川自身の「私らしく、そしてあなたらしく」というナレーションを経て、昨年10月リリースのニューアルバム『新・演歌名曲コレクション10. −龍翔鳳舞−』収録曲にしてライブのサブタイトルにも用いられたオリジナル曲「それぞれの花のように」から華々しくスタート。ステージに降ろされた幕(バラの花をあしらい、中央のみ紗幕状になったもの)の向こうに姿を現した氷川は、豪華なセットを背に力強い歌声を響かせる。1コーラス歌い終えると幕が上がり、氷川は一歩、また一歩と階段を降りながら歌う。

 この日はブラスやバイオリンをフィーチャーした9人編成のバンド演奏を背に、演歌やポップス、ロックなどバラエティに富んだ選曲で、幅広い年齢層の観客にアピール。昨年発表したシングル「最上の船頭」やデビュー曲「箱根八里の半次郎」など、演歌に疎いリスナーでも一度は耳にしたことがあるはずの楽曲が次々に披露された。また、数曲歌い終えると衣装替えという視覚面でも楽しませてくれる要素が強く、和装や洋装などいろんなファッションで観る者の目を奪う氷川の存在感には終始感服させられた。

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 存在感という点でもうひとつ書き残しておきたいのが、氷川が歌う際の“無駄な動きのなさ”だ。ホールクラスの広いステージで、なおかつ豪華なセットが用意されていれば、フロントマンならばファンサービスも含めてステージ所狭しと動き回ることは特別なことではない。しかし、この日観た氷川は“動”よりも“静”をイメージさせる歌唱スタイルで、観るものを惹きつけるのだ。無駄に動かなくても、存在感だけで十分に間を持たせることができるというのもあるが、何よりも氷川の歌の存在感が会場中を支配し、その結果目が離せなくなる……というのが正しいのかもしれない。来場者へのおもてなしとしてのエンタメ要素は豊富だが、それも“歌”あってこそなのだという基本的なことに気づかされた、貴重な体験だった。

 また、この日は2月4日リリースのニューシングル『母』からの楽曲も披露された。タイトル曲は演歌というよりも歌謡曲寄りの楽曲で、デビュー21年目に突入した氷川の新たな一面が感じられるミディアムナンバー。MCでも「21年目はゼロからのスタート。“新生・氷川きよし”として、新しい氷川きよしの世界を広げていきたい」と語ったが、まさにその象徴とも言える1曲だった。

 この日がデビュー記念日ということもあり、新曲披露のあとにはサプライズで「満20年」のダジャレとしてまんじゅうが2個乗ったケーキを用意。観客からの「おめでとう!」というお祝いを前に、氷川は「皆さんのおかげでございます。やめないでよかった。命ある限り歌い続けたい」と気持ちも新たに宣言した。

 ライブ終盤には、昨年の『NHK紅白歌合戦』で着用した黒と紫の衣装を身にまとい、「限界突破×サバイバー」などロック寄りの楽曲を連発。このときばかりは、それまでの“静”のイメージから一変、ステージを右へ左へと動きながらパワフルなボーカルを轟かせた。

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