SKY-HIがライブで証明したエンタメとカルチャーの両立 『Round A Ground 2019』2日間を徹底レポート
「エンタメ性もカルチャー性も追求したい」と口で言うのは簡単だが、実現していくのは難しい。しかし、現代の音楽シーンを切り開いて、実現してくれそうなアーティストがいる。その名はSKY-HIだ。
12月11日、12日に豊洲PITで開催された『Round A Ground 2019』は、2020年以降の彼の勢いを大いに予期させるライブだった。1日目は人気投票で選ばれた20曲をカウントダウン形式で振り返る『~Count Down SKY-HI~』、2日目は盟友たちを迎えてラップで魅せる『~YO! SKY RAPS~』が行われた。
SKY-HIのワンマンライブは、総合エンターテイメントだ。音楽・パフォーマンス・映像を駆使し、楽曲の世界観や会場の空気を作りこんでいく。これまでのライブで培ってきたエンタメ性が強く反映されたショーこそ、今回の『~Count Down SKY-HI~』なのである。
照明が落ちると、ラジオ風のSEに乗っかりバックバンドのSUPER FLYERSとスーツ姿のSKY-HIが登場。オープニングを飾ったのは、「Ms. Liberty」だ。ホーン隊の鳴らすパンチある音に煽られ、会場中がハンズアップ。〈Ms. Liberty!〉という合いの手も1曲目とは思えぬ音量で響き渡り、SKY-HIのカラーのひとつである早口でまくりたてるようなファストラップも切れ味が抜群だ。ベース、サックス、ドラムのセッションがえげつない「Double Down」、バンドメンバーと絡むように歌う「トリックスター」と初っ端からハイテンションな曲が続く。いずれも音がしっかりと呼吸しており、生バンドだからこそ生み出せるグルーヴや間が存在していた。
勢いのままライブが続いていくのかと思われたが、ここで一気にクールダウン。SKY-HIの弾くピアノにより「クロノグラフ」が導かれる。
歌とダンスのイメージが強い彼だが、ピアノの演奏を難なくこなすことはもちろん、ドラムやギターなど様々な表現方法により、オーディエンスへアプローチをかけられるのも彼の強さだ。しっとりしたピアノ伴奏と優しい声が会場全体を包みこみ、流れるように「創始創愛」へ。〈僕が愛した君が愛した 僕を愛してみるよ〉という真っすぐな歌詞が、たくさんの〈君〉の心を打ち抜く。音の波を生んでいたアコースティックギターがアウトロを引きずり「Limo」に繋がれると、THE SUPER FLYERSのメンバーで構成された4人組ダンスグループ・BLUE FLAP QUARTET(BFQ)が登場した。ライブ定番のナンバーということもあり、息の合ったダンスが展開される。「23:59」では緩急で魅せる振り付けと艶っぽい表情に歓声があがり、「Snatchaway」ではチーム感溢れるパワフルなパフォーマンスが繰り広げられた。
スクリーンに映るリリックと語り掛けるようなフロウで、言葉を丁寧に届けたのは「New Verse」だ。天井へ胸を張って伸び伸び歌う様は、この曲が彼の殻をひとつ破ったキーソングだということを物語る。その視線の先は、小さなライブハウスからコツコツ駆け上がってきた日々を描いているようだった。
しんみりした空気に包まれたのもつかの間、クラップを煽り「Seaside Bound」へ誘い、会場の熱を急上昇させる。かと思えば、「記念すべき10位にふさわしいんじゃないの?」といたずらにニコリ。ひとりひとりと約束するように、「ナナイロホリデー」を色濃く歌い上げる。〈“俺は!” 必ず戻ってくるから It’s Alright〉と歌う姿は勇ましく、「SKY-HIの言葉なら信じよう」と思わせる強力な求心力を放っていた。
SKY-HIがコール&レスポンスでSUPER FLYERSやオーディエンスと遊ぶのも、ライブの醍醐味のひとつ。この日は、「Get Ready for the No.9」の掛け声で駆け引き合戦が行われた。彼にセクション名を呼ばれたら1拍後には反応しなければいけないという、なかなかタイトの鬼なコール&レスポンスなのだが、これがとても盛り上がる。ライブならではのアレンジを仕込んで、会場にいる人全員で遊んでしまうのも彼のライブの魅力のひとつだろう。全力で遊んだあとは、もちろん全力でショータイム。BFQと共にキレのあるダンスを「TOKYO SPOTLIGHT」「Blue Monday」と続けて披露した。「ここに、この時代の曲が来るとはな!」と煽りスタートしたのは、2012年にリリースした「Tumbler」だ。7年も前の曲にも関わらず、予習完璧なファンのタオルが軽やかに宙を舞う。久しぶりに目にしたその光景に、SKY-HIも自然と笑みがこぼれた。
その後、惜しくもTOP20入りしなかった21~29位の曲を連続して披露する「涙が止まらナイン」のコーナーへ。〈甘い夢に興味なんてない〉と蹴散らす「Bitter Dream」を筆頭に、「Chit-Chit-Chat」や「Walking on Water」など全9曲が肩を並べる。様々な曲調を難なく繋いで、ひとつの作品として魅せてしまうのは、彼のチームだからこそできる技のひとつだろう。
怒涛の勢いでメドレーをやりきると、「Marble」から再びカウントダウンに戻った。ある時は教壇からの教えのように、ある時はフラットに紡がれる語りのように、時を重ねるごとに意味合いが深まっていくこの曲は、ライブによって違う力強さを感じさせる。この日は、音楽で世界を繋ぐ祈りのように響いた。
「朝が来るまで」ではミュージカルのようなダンスで魅了し、「キミサキ」「アイリスライト」では再びピアノを弾き語る。穏やかな楽曲のなかには熱いものがうごめき、確実に終幕へ向けて歩みを進めていく。〈Ah-ah〉のコール&レスポンスでしんみりした空気を一気に持ち上げ、「Blanket」によりラストスパート。合いの手で入る声も、どんどん大きくなっていった。人気投票1位を獲得したのは「カミツレベルベット」だ。イントロが流れるとすでに歓声が沸き、会場中をシンガロングで満たす。ステージとフロアで思いを交換するような、大団円のパフォーマンスとなった。