SKY-HIがライブで証明したエンタメとカルチャーの両立 『Round A Ground 2019』2日間を徹底レポート
2日目の『~YO! SKY RAPS~ 』は、一言で表すなら“ラップと向き合ってきた2019年の総集編”だろうか。この夏はフェスに出演する際もDJを中心としたミニマムなチームで出演することが多く、“ラップでどれだけ魅せれるか”ということに挑戦した1年だった。また、仲間のイベントに顔を出すことも多く、RAU DEFのリリースイベントやReddyのライブなどへ積極的に出演。そんなSKY-HIの動きが色濃く表れたのが本公演なのだ。
1日目とは打って変わって、90’sヒップホップなファッションで登場。バックドロップだけが掲げられたステージは、ライブハウスの生っぽさを感じさせた。オープニングを飾ったのは、「運命論」だ。〈常に俺の後ろに神が立ってる〉というリリックは力強く、これから歴史的な時間が作られることを物語る。そのままなだれ込むように「Run Ya」へ。冒頭2曲で盟友SALUとの作品を並べるのも、仲間思いのSKY-HIらしい。「Persona」ではラップと共にキレのいいダンスを披露。前日よりも言葉が鋭く、本人が誰よりもこの日にわくわくしていることが伝わってきた。
Novel Core、RAU DEFとのステージでは、面倒見のいい兄貴っぽい表情をのぞかせる。Rude-αやさなりなどの後輩ラッパーとも交友があり、頼られているさまは舞台の空気からも十分に伝わってきた。「What are you talking about?」をしっとりした雰囲気で聴かせると、Novel CoreとRAU DEFの曲である「Precious Life」には「Limo」のリリックでフロウを打ち込む。ピアノの音が印象的な「WHIPLASH」は、SKY-HIとしての活動を勢いづかせたコラボレーションプロジェクト『FLOATIN' LAB』からの1曲だ。〈WHIPLASH!〉のコールでは掲げられた手がフロアを満たす様は、進んできた軌跡を感じさせて感慨深かったことだろう。
この日は、国内だけでなく、DaBoyWayやSTAMPといったタイからのアーティストもライブに参加。DaBoyWayの「GANGSHIT」を「Name Tag」の歌詞でビートジャックすると、新曲の「Good For U」をパフォーマンス。STAMPとは「Jail house」と「Don’t Worry Baby Be Happy」をメロディックに歌い上げる。国境を超えて様々な音楽性と向き合っていけるという事実を、ステージで誇示してみせた。
一段とSKY-HIが無邪気な表情を魅せたのは、TARO SOULとKEN THE 390とのステージだ。「PONR」は先日リリースされた曲にも関わらず、抜群のチームワーク。三者三様のカラーを混ざりあわせ、クラシックヒップホップメドレーへとなだれ込んだ。A Tribe Called Questの「Check the Rhime」やNaughty By Natureの「Hip Hop Hooray」にオリジナルのリリックでフロウをかます様は、ヒップホップカルチャーを語り継ぐ存在がいることを印象づける。一発触発の雰囲気で「Critical Point」をやりきり、貫禄を豊洲PITに刻み込んだ。
コラボレーションは、ラッパー仲間だけに収まらない。ドラマー望月とギタリストTAKを迎えると、DJ・HIRORONと共にSUPER FLYERS SQUADショーを展開。エモーショナルなギターフレーズでグッと観客を引き込み、“ラップで魅せる力”を余すことなく発揮する。「Tyrant Island」を皮切りに「F-3」「Doppelganger」と、空気感の違うラップチューンを休む間もなく繰り出せるバイタリティーは圧巻の一言。
「Walking on Water」や「Double Down」は、彼のフロウがしっくりハマっていることはもちろん、盛り上げどころで各々がプレイヤーとしての強さを魅せつける。また、「Seaside Bound」や「フリージア」は1日目にも披露された楽曲だが、編成の違いによって前日とは異なる空気を発していた。様々なチームを持っているからこそ、場面や楽曲に1番あったアプローチを取れるのも彼の特徴のひとつだろう。穏やかな声質で「アイリスライト」を届けた。
後半戦では、eillを迎えて「So What??」を披露。Kensuke a.k.a. KEN THE 研究丸も登場し会場を賑わせた。追ってKEN THE 390も現れ、ステージがお祭り状態に。柔らかな雰囲気に、SKY-HI自身が誰よりもあの場を楽しんでいることが伝わってきた。「New Verse -Remix- feat. eill」をeillとエモーショナルに歌い上げると、時代を切り開いてきた戦友であるKEITAとのコラボへ。「Slide ‘n’ Step」と「We Don’t Need to Talk Anymore Remix feat. SKY-HI」を、意気揚々とパフォーマンスする姿は〈こちら正真正銘ホンモノ〉というリリックがよく似合う。6年間、音楽と向き合い進んできたからこその説得力が存在していた。
トリを飾るゲストは親友である、韓国のラッパーReddyだ。彼が「SS」のリリックでジャックし「VROOM」を封切ると、恋人への末永い愛を歌った「Stand by you」へと結ばれた。Reddyが初めて日本語に挑戦した作品ということもあり、そこに内包された思いも一入。オーディエンスも吸い込まれるように聴きこんでいた。「I Think, I sing, I Say」では、サビで特大のシンガロングが生まれる。音楽が全てを繋ぎ、世界平和を成し遂げてしまいそうな幸福感が満ち足りた。その空気を引き継いだまま導かれたのは、違いを許し受け入れることを歌った「Marble」だ。言葉をひとりひとりに手渡す姿は堂々として、真っすぐさを感じさせる。誠心誠意の言葉を伝えきり、満身創痍のステージを作り上げた。
『~Count Down SKY-HI~』ではライブハウスでできる最高のエンターテインメントを展開し、『~YO! SKY RAPS~ 』では、ヒップホップカルチャーや仲間たちへの愛を音楽で最大限に表現。『Round A Ground 2019』の2日間を通し、エンタメもカルチャーも両立することができるのだとSKY-HIは提示して見せた。
来春には『Round A Ground 2020』を行い、ベストアルバムの発売も控えているSKY-HI。逆転のファンファーレを鳴らす準備は万端といったところだろう。2020年代における彼の活躍を楽しみにしない理由はないはずだ。
■坂井彩花
ライター/キュレーター。1991年生まれ。ライブハウス、楽器屋販売員を経験の後、2017年にフリーランスとして独立。Rolling Stone Japan Web、EMTGマガジン、ferrerなどで執筆。Twitter
<2019年12月11日『~Count Down SKY-HI~』セットリスト>
※カッコ内はファン投票数順位
1, Ms. Liberty(20位)
2, Double Down(19位)
3, トリックスター(18位)
4, クロノグラフ(17位)
5, 創始創愛(16位)
6, Limo(15位)
7, 23:59(14位)
8, Snatchaway(13位)
9, New Verse(12位)
10, Seaside Bound(11位)
11, ナナイロホリデー(10位)
12, TOKYO SPOTLIGHT(9位)
13, Blue Monday(8位)
14, Tumbler(7位)
15, Bitter Dream(21位)
16, Chit-Chit-Chat(23位)
17, Tylant Island(27位)
18, Walking on Water(22位)
19, Serial(28位)
20, フリージア(25位)
21, Persona(29位)
22, How Much??(26位)
23, Count Down(24位)
24, Marble(6位)
25, 朝が来るまで(5位)
26, キミサキ(4位)
27, アイリスライト(3位)
28, Blanket(2位)
29, カミツレベルベット(1位)
SET LIST PLAYLIST
<2019年12月12日『~YO! SKY RAPS~』セットリスト>
※参加アーティスト
DaBoyWay(from Thailand)、eill、KEITA、KEN THE 390、KEN THE 研究丸、Novel Core、RAU DEF、Reddy(from Korea)、STAMP(from Thailand)、TARO SOUL (A→Z)and THE SUPER FLYERS SQUAD(ギターTak田中, ドラム望月敬史, DJ HIRORON)
01, 運命論
02, Run Ya
03, Persona
04, What are you talking about? with Novel Core
05, DOZE OFF with Novel Core
06, Precious Life with Novel Core, RAU DEF
07, Neo Radio with RAU DEF
08, WHIPLASH with RAU DEF
09, GANGSH!T with DaBoyWay
10, Good For U with DaBoyWay
11, ทั้งจำทั้งปรับ (Jail house) with STAMP
12, Don’t Worry Baby Be Happy with STAMP
13, PONR with KEN THE 390, TARO SOUL
14, YO! SKY RAPS CLASSIC HIP HOP Medley with KEN THE 390, TARO SOUL
15, Critical Point with KEN THE 390, TARO SOUL
16, Tylant Island with THE SUPER FLYERS SQUAD
17, F-3 with THE SUPER FLYERS SQUAD
18, Doppelgänger with THE SUPER FLYERS SQUAD
19, フリージア with THE SUPER FLYERS SQUAD
20, 何様 with THE SUPER FLYERS SQUAD
21, Walking on Water with THE SUPER FLYERS SQUAD
22, Double Down with THE SUPER FLYERS SQUAD
23, Seaside Bound with THE SUPER FLYERS SQUAD
24, アイリスライト with THE SUPER FLYERS SQUAD
25, So What?? with eill, KEN THE 390, KEN THE 研究丸
26, New Verse -Remix- with eill
27, Slide ‘n’ Step with KEITA
28, We Don’t Need To Talk Anymore Remix feat. SKY-HI with KEITA
29, VROOM with Reddy
30, Stand by you with Reddy
31, I Think, I Sing, I Say with Reddy
32, Marble
SET LIST PLAYLIST
■ツアー情報
『SKY-HI Round A Ground 2020』
国内公演
2020年3月1日(日)茨城県 水戸LIGHT HOUSE 開場17:00/開演17:30
2020年3月7日(土)栃木県 HEAVEN’S ROCK宇都宮 開場17:30/開演18:00
2020年3月11日(水)新潟県 新潟LOTS 開場18:00/開演19:00
2020年3月13日(金)山梨県 甲府CONVICTION 開場18:30/開演19:00
2020年3月14日(土)静岡県 LIVE ROXY SHIZUOKA 開場17:00/開演18:00
2020年3月15日(日)三重県 四日市CLUB ROOTS 開場17:00/開演17:30
2020年3月20日(金・祝) 石川県 金沢Eight Hall 開場17:00/開演17:30
2020年3月21日(土)長野県 Sound Hall a.C 開場17:00/開演17:30
2020年3月22日(日)埼玉県 HEAVEN‘S ROCK さいたま新都心 開場17:00/開演17:30
2020年3月28日(土)鳥取県 米子AZTiC laughs 開場17:30/開演18:00
2020年3月30日(月)山口県 RISING HALL SHUNAN 開場18:30/開演19:00
2020年3月31日(火)広島県 HIROSHIMA CLUB QUATTRO 開場18:00/開演19:00
2020年4月1日(水)徳島県 徳島club GRINDHOUSE 開場18:30/開演19:00
2020年4月3日(金)岡山県 岡山YEBISU YA PRO 開場18:30/開演19:00
2020年4月4日(土)兵庫県 神戸Harbor Studio 開場17:15/開演18:00
2020年4月5日(日)奈良県 EVANS CASTLE HALL 開場17:15/開演18:00
2020年4月10日(金)北海道 函館club COCOA開場18:30/開演19:00
2020年4月12日(日)青森県 青森Quarter 開場17:00/開演17:30
2020年4月13日(月)岩手県 盛岡club CHANGE WAVE 開場18:30/開演19:00
2020年4月17日(金)宮崎県 宮崎SR BOX 開場18:30/開演19:00
2020年4月18日(土)鹿児島県 鹿児島CAPARVO HALL 開場17:30/開演18:00
2020年4月19日(日)熊本県 熊本B.9 V1 開場16:30/開演17:30
2020年4月22日(水)沖縄県 桜坂セントラル 開場18:30/開演19:00
2020年4月26日(日)千葉県 Live House The 3rd Stage 開場17:00/開演17:30
海外公演
2020年5月 ※詳細は後日発表
インドネシア/ジャカルタ
タイ/バンコク
台湾/台北
韓国/ソウル
チケット料金:オールスタンディング:¥6,600-(税込)
注意事項:
※整理番号入場
※入場時ドリンク代別途必要
※未就学児入場不可
※会場・開演時間は変更になる可能性あり。
■関連リンク
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