結成30周年のRHYMESTER、盟友も続々登場した興奮と感動のリキッドルーム公演を振り返る

結成30周年のRHYMESTER、盟友も続々登場した興奮と感動のリキッドルーム公演を振り返る

 1989年の結成から30年にわたり日本のヒップホップシーンのトップに君臨し続けているRHYMESTER。結成30周年を記念して今年3月から47都道府県をまわる全国ツアー『KING OF STAGE VOL.14 47都道府県TOUR 2019』を開催している彼らだが、39公演目にしてついにホームグラウンドともいうべき東京に戻ってきた。11月24日の会場となった恵比寿リキッドルームには東京のみならず全国からファンが駆け付けていたようで、大勢の観客でさながらすし詰め状態。開演前から熱気が充満しており、弥が上にも期待が高まる。

 最初に登場したDJ JINの煽り(「JIN-TRO」)を受けて宇多丸とMummy-Dが登場。まさに黄金のトライアングルともいうべき3人の姿を観ただけで早くもグッとくるものがあるが、そこに追い打ちをかけるように開始早々にして彼らの代表曲「耳ヲ貸スベキ」「B-BOYイズム」を立て続けに披露する。当然大盛り上がりだが、ライブ終盤やアンコールに演奏してもおかしくないクラシック中のクラシックを早々に持ってきたのには実は理由があり、今回のツアーは彼らの30年を総括すべく、年代順(リリース順)に進む「順行セット」と、年代(作品)を遡る「逆行セット」の2種類のセットリストがあるそうだ(さらにその中で会場ごとに曲を変えているそう。「何一つとして同じセットリストはない」とは宇多丸の弁)。この日は「順行リスト」のライブセットだったのでキャリア初期の名曲を早々にやってのけたわけである。また、今回のライブは1999年に当時新宿にあったリキッドルームで行った『KING OF STAGE Vol.3』から20周年ということも裏テーマとしてあり、20年経って(場所こそ違えど)同じリキッドルームに立っていることは彼らにとっても非常に意義深かったようだ。筆者も当時その場にいたが、大混雑で揉みくちゃにされたことをよく覚えているし、その人気は今も一向に衰えていない、どころか、上がる一方だというのが本当に凄い。こんなヒップホップグループ、他にいるのかという話だ。

左:Mummy-D、右:KOHEI JAPAN

 クラシック2曲に続いてKOHEI JAPANが登場しての「ブラザーズ」を披露したが、3曲目にして早くも1999年の3rdアルバム『リスペクト』からの曲を披露したということからも、結成からの10年間がいかに彼らにとって苦難の道だったかがよくわかる。だが20代だった彼らにとっては恐らく苦労とは捉えていなかっただろうし、後のMCでも触れていたが、この頃はアメリカのヒップホップへの憧れや情熱、そして「なんで認められないんだ!」という世の中への鬱憤だけで突き進んでいたそうだ。その熱いエネルギーの塊ともいうべき初期の楽曲は、今聴いてもこちらを鼓舞するものがあるし、その魅力は何十年経っても色褪せることはないのである。

 そんな時代を経て、2001年についにメジャーデビューを果たしたRHYMESTER。そのメジャーデビュー曲「ウワサの真相 featuring F.O.H」、ライブでの大定番曲「ライムスターイズインザハウス」、大合唱っぷりが半端じゃなかった「肉体関係part2 逆featuring クレイジーケンバンド」を続けて披露する。各々の楽曲についてや当時の背景などをMCで詳しく話してくれて、その様子はさながら“ライムスターミュージアム”のキュレーターといったところ。こんなに丁寧な解説付きのライブもそうそうないのでは、と思った次第である。

 そして彼らは、ヒップホップへの憧れだけで突き進んでいた時代から、自身が考える新たなヒップホップ像を模索する時代へと突入する。その回答でもある楽曲群――キャリア中期の代表曲となった「ザ・グレート・アマチュアリズム」、RUN DMC「Walk This Way」のトラックに乗せてヒップホップへの愛憎を歌った「We Love Hip Hop」、観客全員で拳を突き上げる様が圧巻の「オイ!」――を披露したが、その後2年の活動休止期間あったことからも、この時代は彼らにとって色々苦悶していた時代だったというのは間違いないところだ。しかし活動休止を経てリリースした「ONCE AGAIN」で、人間つまずいても何度でも立ち上がることが出来ることを歌い上げ、リリックの通り大復活を果たしたことはご承知の通りである。この日もこの流れで「ONCE AGAIN」を歌い、力強いリリックに心揺さぶられていたのだが……大ハプニングが勃発。なんと宇多丸がゲストのZeebraを呼び込むのを忘れてしまったのだ! Zeebra登場の場面でいつものルーティン通りにコール&レスポンスをする宇多丸をよそに、後ろで慌てるMummy-DとDJ JINの姿がなんとも対照的だったが、途中で宇多丸も気づいて曲はフェードアウト。Mummy-Dの「俺はこの5分間のことは何も覚えていない」という機転の利いた(?)言葉によって、再び最初からやり直し(まさに「ONCE AGAIN」の「ONCE AGAIN」!)、今度は無事にZeebraが登場したのであった。もちろん会場は色んな意味で大盛り上がり、とりわけZeebraが鬼の首を取ったようにこのハプニングを喜んでいたが、観客としては2度も「ONCE AGAIN」が聴けたのはお得だったし、なにより滅多にないハプニングを目の前で体感出来て、ある意味歴史の証人になれたわけだ。まさに「人間何度でも立ち上がれる」を地で行ったステージであった……。

左から:Mummy-D、Zeebra、宇多丸

 閑話休題、ゆったりとしたナンバー「POP LIFE」でリラックスした後、Illicit Tsuboiが登場しての「ダーティーサイエンス」、キエるマキュウからCQが登場しての「ドサンピンブルース」と、立て続けに破壊力のあるナンバーを披露。相変わらずのトリッキープレイで観客を惹きつけたIllicit Tsuboi、独特のバイブスで会場をジャックしたCQ、そしてこの日も会場のどこかで見守っていただろうMAKI THE MAGICと、ライムスターの旧友、戦友ともいうべきアーティスト達とのコラボはやはり見応えがあるし、恐らく東京だけの特別なステージに魅了されっぱなしであった。

Illicit Tsuboi
CQ

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